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「背脂系ラーメン」が大好きな医師がまったく太らない理由

プレジデントオンライン / 2020年3月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KPS

焼肉、ステーキ、背脂系ラーメン。こうした食べ物は、健康に悪いのだろうか。自身も「背脂系ラーメン」が大好きだという順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「食後の正しいリカバリーの方法を知っていれば大丈夫」という——。

※本稿は、小林弘幸『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

■自律神経の乱れが健康を害する

突然ですが、皆さんは「自律神経」について、どれほどの知識をお持ちでしょうか。ビジネスパーソンの方にとっては、まだまだ馴染(なじ)みが薄い言葉かもしれません。私の著書を何冊か読んだことがある人にはクドい話かもしれませんが、とても大切な知識なので、復習のためにも改めて簡単に説明しておきます。

人はなぜ、眠っている間も、もっと言えば、意識がなくても「呼吸」が続いているのでしょうか。これが自律神経の働きによるものです。

ひと言で言えば、内臓器官のすべて──とりわけ血管をコントロールしている神経です。つまり、自律神経は人間にとって最も大事なものである、と言うことができます。

さらにここ数年、自律神経の研究が急速に進み、その働きが、私たちの健康に大きな影響を及ぼしていることもわかってきました。朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。どちらが健康にいいか、という問いも、全部、自律神経の観点から正解が導き出せるのです。

また、不健康な人を診察・検査すると、皆一様に、自律神経のバランスが崩れていることもわかってきました。つまり、自律神経を整えることが健康で過ごすための大きな鍵と言えます。

自律神経の1日の動き
画像=『不摂生でも病気にならない人の習慣』

■2つの神経のバランスが大切

もう少しだけ、詳しい説明をさせてください。自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2種類からなっています。交感神経とは、自動車にたとえるならアクセル。血圧は上昇し、気分も高揚。この働きが上がると、心身ともにアクティブになります。ただし、緊張度も高まります。

一方、副交感神経とは、ブレーキのようなもの。副交感神経の働きがアップすると、血管は適度な状態で緩み、血圧は低下、気分が落ち着いていきます。肉体はリラックス=弛緩の状態へと向かいます。

自動車がそうであるように、アクセル一辺倒でもブレーキだけでも立ちゆきません。どちらかに偏ると、途端に問題が生じます。交感神経と副交感神経がバランスの良い状態にあることが、自律神経にとって大切なのです。

交感神経と副交感神経のバランスは、1日中、たえず変動しています。大まかに言えば、朝から日中にかけては交感神経が優位に働き、夕方から夜にかけては副交感神経が優位に働きます(「自律神経の1日の動き」参照)。ただし、一方が高ければ、一方が低い、という単純な関係にはなく、バランスが崩れると、心身に支障をきたします。

■パフォーマンスや免疫力の高さは科学的に説明できる

また、自律神経を計測すると、大きく次の4つのパターンに分かれます。

①交感神経も副交感神経も両方高い
②交感神経が高く、副交感神経が極端に低い
③交感神経が低く、副交感神経が極端に高い
④交感神経も副交感神経も両方低い
自律神経のマトリクス
画像=『不摂生でも病気にならない人の習慣』

ちょっと調子が悪いな、という時は、たいてい②か③のバランスの崩れた状態に陥っています。一方で、最も良いパフォーマンスを出せるのが①、疲れやすく体力もない状態が④です(「自律神経のマトリクス」参照)。

ただし、交感神経と副交感神経の差が、少しだったら何ら問題はありません。

例えば、「高パフォーマンス」「仕事ができる」と言われるビジネスパーソンの多くは、交感神経が優位な状態にあります。スポーツ選手も同じです。

一方で、周囲がインフルエンザでバタバタ倒れているというのに、ひとりだけ罹(かか)らずにピンピンしている人がいますよね? こういう免疫力が高い人はたいてい、副交感神経が優位に働いています。

■“アクセル”と“ブレーキ”を使い分ける

交感神経と副交感神経の割合が1対1で、両方とも高い場合が理想のケースであることに変わりありませんが、1対1.5の範囲に収まっているならば、何の問題もありません。交感神経、副交感神経のそれぞれの良さが出ると考えてください。

健康な人は、このバランスが微妙に変化しながら、1日を過ごします。

朝起きると、交感神経が優位に働き始め、そのことで日中は、心身が活発な活動をするのに適した体内環境となります。夕方以降は、副交感神経が若干優位な状態になりますので、心身が静かに休むのに適した体内環境をかたちづくります。

交感神経をアクセル、副交感神経をブレーキにたとえているのは、そうした理由からです。自動車もそうですが、どちらが大切ということはありません。ブレーキが効くからアクセルを踏めるわけですし、いくらブレーキが優れていても、アクセルがおかしければ前進しません。大切なのは、「高さ=機能の活性度」と「バランス」なのです。

■「超こってりラーメン」だって食べていい

自律神経の専門家だからといって、私自身が健康管理を徹底できているかと聞かれれば、答えは「いいえ」です。人間ですから、過ちも犯します。

「これ、健康に良くないよなあ……」

と思いながら、背脂たっぷりの「超こってりラーメン」が無性に食べたくなり、有名店に並んで食べることもあります。

先日も、焼き肉店で7人前の肉を平らげてしまいましたし、昼からステーキ500グラムを一気に食べる、なんていう日もあります。

なるべく無駄な飲み会には参加しないように心がけていますが、つい深酒してしまう日もあります。

野菜も苦手で、最近まで食べられませんでした。

怒ると自律神経のバランスが崩れてしまうことがわかっていても、ちょっと前までは、スタッフに怒鳴ってばかりいました。

人生は反省の連続です。肉体や精神に悪いことに囲まれて生きている現代人は、反省するために生きているようなものかもしれませんね。

■鍵は“過ち”を犯した後の対処法

でも、私は健康です。なぜか。

それは背脂たっぷり系のラーメンを食べた後の正しいリカバリーの方法を知っているからです。深酒をした翌朝の正しい過ごし方を理解しているからです。「怒った後の対処法」や「怒らないための処方箋」を学んだからです。

だから健康を害してしまう前に、立ち直ることができます。これがヘルス・リテラシーの力なのです。

■過度な健康管理は“逆効果”

ダイエットもそうですが、健康に気を遣う生活が長続きしないのはなぜでしょうか。

『不摂生でも病気にならない人の習慣』
小林弘幸『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館新書)

巷(ちまた)に溢れている健康情報を眺めてみると、「○○をしなさい」「××をしてはいけない」というものが、非常に多いように思います。

一見、こうしたアプローチは正しいように見えますが、度が過ぎると、実はマイナスです。例えば、「背脂たっぷり系のラーメンが食べたい!」と心身から欲しているのに、「健康に悪いから我慢しろ」とやってしまうと、多大なストレスがかかってしまうのです。

ストレスは心身に悪影響を与えます。特に自律神経のバランスを乱す大きな要因で、結果的に、食べた時よりも、我慢して食べなかった時のほうが体調を崩してしまう、という事態になりかねないのです。

自分を律するばかりが健康な生活ではありません。「ダメな自分」を受け入れ、それを補う知恵を学んでおくことが重要なのです。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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