サステナブルの先駆者が語る「いま地球と社会のためにすべきたった1つのこと」
プレジデントオンライン / 2020年2月20日 11時15分
■環境問題への取り組み当初は、周囲から罵倒され……
——エシカルファッションの先駆者といわれているキャサリン・ハムネットさん。サステナビリティの取り組みを始めてからは30年、そしてデザイナーとしては昨年40周年を迎えた。そんなキャサリンさん自身が地球環境やサステナブルに意識を高く持ったのはいつ頃からで、何がきっかけだったのだろうか?
【キャサリンさん(以下:K)】祖母は1908年に生物科学の学位と博士号を取得した最初の女性でしたし、私の生い立ちにおいて自然と社会に目を向けてはきましたが、子どもを持ったことは大きかったわ。衣類、繊維、フットウエア産業の社会的および環境的影響を調べ、悪夢のような状況が明らかとなった1989年のリサーチが契機となったんです。
——ファッション業界で成功しても、産業とサステナブル精神の狭間でどこか違うと感じ、心から喜べなかったというキャサリンさん。アパレルや繊維業界が環境にどれだけの影響があるかを調べた当時、ファッションという巨大産業が地球上のすべての生命を脅かすような未来が来ると確信したのだという。
では、サステナビリティの意識をファッションブランドに反映した当初は、周りの反応はどのようなものだったのか?
【K】完全に扉は閉ざされていた、というより鼻先でピシャリと閉め出されたと表現したほうが正しいわね。それは、まったくの無関心どころでは済まされなかったから。
「あなたのためだけに、わざわざオーガニックコットンなんてつくる必要があると思っているのか?」とか、イタリア最大手のとある製造会社からは「こんな馬鹿げた理念やら、環境問題の戯言(たわごと)を繰り返すなら、さっさとコレクションをたたんで消えてくれ」とまで言われたの。
■人々の意識が変わり始め、行動に反映されるようになった
——今や一大トレンド、そしてビジネスにもなっているサステナビリティだが、キャサリンさんが声を上げ始めた当時はほとんどの人が興味を示さなかったという。では、人々の意識が変わったと思った瞬間は?
【K】2006年に変化が生まれました。消費者の意識が高まり、購入行動に反映されるようになったのです。
——サステナブルは、今ひとつのキーワードになって世界中を席巻している。それをもっとも強調しているのがファッション業界だ。30年間この世界を牽引してきたキャサリンさんは、自身が身を置く業界が抱えている課題のひとつを具体的にこう話す。
【K】すべての素材やプロセス、特に従来の綿農業の社会的・環境的な影響や、エネルギーから輸送に至るまでの二酸化炭素排出が大きな課題だと考えています。
——ファッション業界を内側から変えようとしたキャサリンさんの長きにわたる活動が、今こうして一大ムーブメントとなっているのはすでに私たちが知るところだ。それどころか、サステナビリティへの取り組み自体がひとつの企業ステイタスにまでなっているということは、もはや無視できない現状なのだ。
■苦労したのは女性としてではなく、パイオニアとして
——サステナビリティの草分け、そしてファッションデザイナーとして第一線で活躍してきたキャサリンさんに、今度は女性リーダーとしてのあり方を聞いてみた。彼女から見て、プレジデント ウーマン読者のような、責任のある立場の女性たちが環境問題についてすべきこととは?
【K】自身と家族のために、可能な限りサステナブルなものを買うこと。原料や工程の良しあしを確認し、それに応じて買い物をすること。
——すべての人が当たり前にサステナビリティに貢献するために、日頃から気をつけること、そして自身が長い間、ファッション業界そしてサステナビリティ両方の世界において第一線で活躍できる、そのパワーの源とは?
【K】私たちの消費のあり方がこの星の未来を決めるということを自覚することだわ。
私は、とても心配なのです。私はこの世界と生き物すべてを愛しています。そしてそれらが破壊されるのを見たくはありません。
——女性リーダーとして大変だったこと、苦労したことはあったのだろうか?
【K】女性として、というとノーですが、サステナビリティのパイオニアとしてはイエスです。実際に唾を吐きかけられたことすらあります。
——世界的に有名なファッションデザイナー。そんな華々しい活躍の裏でも、多くの人をリードする立場の人には人知れず苦悩と、そして想像すらできないほどの挫折が隠されている。それでも揺るぎない信念を通して、自分と周りの大切な人のために正しい道と良質なものを選ぶ。そんなシンプルな行動が、結果的にリーダーとしてより多くの人に影響をおよぼすともいえるのだ。
■女性リーダーは、公益とエレガントのために戦うべき
——最近よく耳にする「ノブレス・オブリージュの精神」について聞いてみたい。日本ではまだあまり浸透していない考え方だが、この精神についてキャサリンさんが思うこととは? また、日本の女性リーダーはどうあるべきだと考えるのか?
【K】私たちが特権的な階級にいて十分な教育を受けてきたならば、そうでない人を支え、教える義務があります。
ファビュラスで強く、やさしく、毅然として、勇敢に、公益とエレガントのために戦うべきです。そして最高の服を着て、仕事で活躍するのです。
——自身が受けた恵みを広くシェアし、社会的地位を世の中のために役立てるのも、また立派な社会貢献であり、サステナブルな世界を構築するためのひとつの義務なのだ。
最後に、プレジデントウーマン読者にメッセージをお願いした。
【K】私たち女性は家計の多くを握っています。それを賢明に使って。
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1979年に「Katharine Hamnett London」を設立。「CHOOSE LIFE」や「SAVE THE OCEAN」など、ブランドの代名詞となるスローガンTシャツは、ファッションを通じて強いメッセージを発信したことで話題となった。また、ファッションデザイナーのみならず環境活動家としての活動を続けており、2006年には大英国勲章を受章。サステナブルやエシカルを提唱し始めて30年となる。
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(ファッションデザイナー キャサリン・ハムネット 構成=乙部 アン)
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