1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

話者に残り時間を示すTED式「カウントダウン集中法」の秘密

プレジデントオンライン / 2020年3月7日 11時15分

世界的に有名な時計台「エリザベスタワー」、通称ビッグベン。時計台は単に時刻を伝達するだけでなく、街のシンボルとして機能している。 - DPA/共同通信イメージズ=写真

■TED式「カウントダウン集中法」

仕事の移動でよく東京駅を使うけれども、最近楽しみにしているのが丸の内北口の近くにある巨大な「カウントダウンクロック」である。

東京オリンピックの開会式まで、あと何日、何時間、何分、何秒かが表示され、まさに「時時刻刻」と変化している。裏面は、東京パラリンピックの開会式までの時間。いよいよビッグイベントが近づいてきていると実感する。

大会の公式時計を担うメーカーによって設置されたもので、高さは4メートルもあるという。前を通過するたびに、「あと何日かな」と見るのが習慣になっている。強い印象を与えるようで、たいてい何人かの方がその前で記念撮影をしている。

六本木ヒルズにも同じようなカウントダウンクロックがある。ほかにも、東京だけでなく日本のさまざまな場所に設置されているのだろう。

時間は人間の脳にとって大切なものであるが、目に見ることができない。だから、私たちはさまざまな方法でそれを視覚化しようとする。

カウントダウンクロックはその1つの象徴だろう。その存在はまた、単なる計時を超えた1つの「精神性」さえ示しているようにも感じられる。

■残り時間を示すカウントダウンクロック

科学や技術、その他幅広い話題についての磨き上げられたトークで有名な講演会、TEDが日本に紹介されたとき、多くの人の関心を惹きつけたのは舞台上の話者に残り時間を示すカウントダウンクロックだった。

一分一秒たりとも無駄がなくいきなり本題に入ってトップギアで話す。そのようなTEDの文化を表すうえで残り時間を示すあの時計は効果的だった。

開催日時の決まったイベントへの準備プロセスや、TEDのように単位時間あたりの「付加価値」が高い現場感覚など、さまざまな局面で時間の可視化の技術が有効である。

時間という本来直接は知覚できない存在を可視化することで、前頭葉をはじめとする脳の回路に「周知徹底」することができる。さらには、その認識をみんなで共有することで祝祭感を高めたり、ゴール到達に向けての連帯を濃くすることもできる。

もともと、残り時間を提示することは学習や仕事の能率を上げて、集中力を高めるために効果的な方法である。受験生ならば問題を解くときに残り時間を表示することで集中度を高めることができる。時間的制約を認識することで、前頭葉を中心とする課題遂行回路の働きは強まるのだ。

TEDに象徴されるように、カウントダウンクロックの文化やその需要は日本よりも欧米のほうが進んでいる。ネット通販で買おうとすると海外のサイトのほうが充実しているし、日本で売られているものも並行輸入品が多い。

日本でも、カウントダウンクロックを用いて仕事やイベントにメリハリをつける習慣をもっと増やしたらどうだろう。

例えば、会社で始業時に作動させて、退出時までの時間を表示する。納期や締め切りが決まっている仕事ならば、残りの日数と時間を共有して士気を高める。話が長くなりそうな上司のスピーチは、本人や周りに見えるように計時すればみんなが楽しんで効率を上げることができる。

時間を大切にすることから、成功への物語は始まる。オリンピックイヤーだからこそ、東京駅前のカウントダウンクロックからインスピレーションを得たい。

----------

茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『幸せとは、気づくことである』(プレジデント社)など著書多数。

----------

(脳科学者 茂木 健一郎)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください