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「肩甲骨」が日本の卓球やバドミントンを躍進させた

プレジデントオンライン / 2020年3月21日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/South_agency

卓球やバドミントンで日本勢の躍進が著しい。もちろんそこには技術的な裏づけもあるが、理に適った効率的な動きができるようになったのも大きな要因だという。『一流選手の動きはなぜ美しいのか』など多数の著書で知られる関西大学人間健康学部の小田伸午教授が解説する。

■肩が前に出て胸が閉じると猫背になり、肩がこる

「卓球の伊藤美誠選手のコンパクトな動きなどは見事なものです。強くて正確な動作を繰り返せる。ポイントは、肩甲骨を安定位置に保ち上腕を回旋させることです。腕を上げても上腕が外旋していれば、肩甲骨はリラックスした状態で安定位置に留まる。卓球やバドミントンの選手たちは、こうしたコンパクトな動作を習得しました」

柔道の復活も「柔よく剛を制す」極意を再認識したからだと指摘する。

「どうしても目に見えたり数値化されたりする筋力やパワーにこだわりすぎて、もっと楽な体の使い方があるのを忘れかけていた。しかし世界のパワー柔道も、よく見て分析をすれば、体の使い方が巧みで利に適っている。最重量級で世界を牽引するテディ・リネール(フランス)にしても、決してパワーだけではない。日本男子代表の井上康生監督は、そこに気づき軌道修正をしました」

■女子ソフトボール日本代表に動作講習会を行った

小田はかつて2008年北京五輪へ向け、女子ソフトボール日本代表に動作講習会を行った。エースの上野由岐子(当時26)選手の最速球は時速119キロだったが、125キロに上げたいと相談された。

「実際に投球を見たら凄く力んでいました。そこで私は119キロ、いや110キロでいいから、125キロに見せる投げ方を覚えたらどうですか、と提案しました。結局時速何キロという数字が打ち取るわけじゃない。肝心なのは、打者が何キロに感じるか、なんです。もし90キロが2球来た後に105キロが来たら、120キロに感じるかもしれない。フォームの力感や球の回転数などで惑わすこともできる。上野さんも、もう力むことは忘れたでしょう。東京五輪ではベテランらしく巧い味のあるピッチングを見せてくれるはずです」

肩がこらない理想的なPCへの向き合い方

さて力まず自然体を保つのは、スポーツ界のみならず一般人の健康維持でも肝になる。小田は自らPCの前に座り見本を示した。

「肩を安定位置に保ち、楽に脇、肘を締め、机上に上向きに置いた前腕を返す。ほら、指が楽に動くでしょう。これが“絞る”ということ。野球のバットやゴルフのクラブを握る、あるいは剣道などでも理想の姿勢になります」

サラリーマンはスーツの脇に皺があるかどうかで、姿勢の良悪がわかる。

「肩が前に出ている人は猫背なので皺が入っています。肩凝りを予防するには、姿勢を矯正する必要がある。実はそのためにラジオ体操が効果的なんですが、あまり行われなくなりました」

また歩き方にも注意が要る。

「人間は踵を踏んで前に出てつま先荷重で下がる。ところが最近の靴は踵が高くつま先が低くなっているので、現代人の歩行は過剰なつま先荷重になり、ふくらはぎの筋肉に負担がかかる。足から腰に歪みが出る原因になります」

つま先は本来前進へのブレーキをかけるツールだ。歩き方にブレーキがかかれば人生にも……、そんな仮説まで飛び出した。

「姿勢は感情、心の使い方ですね。だから落ち込むような一日を過ごしたら、寝る前と朝起きたときに胸を張るストレッチをお勧めします。胸を張って落ち込んでいる人はいませんから」

スポーツマンもサラリーマンも、感情に流されたストレッチはしないのが鉄則だそうである。

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小田 伸午 関西大学人間健康学部教授
元ラグビー日本代表トレーニングコーチ。北京五輪ソフトボール日本代表チームのトレーニングに関わったほか、北京五輪のケイリン銅メダリスト永井清史らにも影響を与えた。

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(関西大学人間健康学部教授 小田 伸午 文=加部 究 撮影=プレジデント編集部)

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