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レオパレスと旧村上系ファンドの交渉が決裂した本当の理由

プレジデントオンライン / 2020年2月21日 18時15分

レオパレス21の宮尾文也社長 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

賃貸アパート大手レオパレス21の臨時株主総会が2月27日に迫った。旧村上ファンド系投資会社のレノ(東京・渋谷)は取締役1名の受け入れと、主力である賃貸事業の譲渡を突きつけている。アパートの施工不良や賃料改定で2万8000人のオーナーとの関係がぎくしゃくしている経営側はどう応じるのか。宮尾文也社長に聞いた――。(取材・構成=チーム「ストイカ」山口義正、阿部重夫)

■臨時株主総会開催のボタンに手をかけて意見があった

——昨年12月まで続いていたレノ側との話し合いが決裂したのは、どこが相違点だったのか。

「昨年2~3月から株式取得を始めて、3月末の保有比率は3%くらいだった。3月末から当社のIRに接触があり、4月始めに面会した。その後、5月と7月に会ってビジネスモデルなどについて説明し、それに対してレノから意見があった。その頃から主力の賃貸事業の譲渡について言及があった。

11月に中間決算を発表したが、2020年6月の株主総会で『大株主の推薦による社外取締役が過半数を占める取締役会の構成にすべし、そしてそれを公表すべし』と言われた。その後も臨時株主総会開催のボタンに手をかけて意見があった。12月に私も面会し、以前から社外取締役の構成についてはわれわれも考えるところがあり、彼らの意図とは相違があったが、定時株主総会では社外取締役を過半数にするという決議をして、それを公表した」

■要求後の帰り際に、なぜかテレビ東京の取材陣がいた

「そのうえでレノともう一度交渉し、抜本的改革案の検討を開始している旨を公表すべきではないかということで議論することになった。その検討の着手について考え方をまとめたが、その際に自分たちも参画すべしとの意見を頂戴したのが12月25日だった。参加するのはレノの大村将裕氏と会計士とのことだった。

その旨も公表せよとの要求だったが、当社としての考えでは特定の一株主と事業計画や事業戦略の見直しに参画してももらうのは他のステークホルダーやほかの株主との共同の利益の点で意見が異なるため、翌日には断った。レノのHPには断った理由は書かれていないが、われわれの思いとしてはそういうことだ。

これを受けてレノは“そういうことなら臨時株主総会の開催を要求します”と。27日の午後3時過ぎに要求を持ってきて、帰り際に大村氏がテレビ東京の取材を受けていたという経緯だ」

■「カネになる資産を叩き売って配当をよこせ」という手法

——レノ側の最終的な狙いは何だと考えるか。

東京都中野区にあるレオパレス21の本社
東京都中野区にあるレオパレス21の本社(撮影=プレジデントオンライン編集部)

「臨時株主総会は手段に過ぎず、レノの目的は株主還元を含めたところだと考えている。当社は正式にレオパレスの事業についての考え方として打ち出しており、主力の賃貸事業については評価してもらっているようだが、その実現はあくまでも事業売却によって可能だというのがレノ側の主張だ。事業売却によって得られた資金は株主還元として配分することで株主の利益に通じると。それ以外の事業も譲渡や、レノ自身との何らかのシナジーを考えているようだった」

——カネになる資産を叩き売って配当をよこせと言うのが彼らの一貫した手法。レノの要求を拒否するには、そのための理屈が必要になってくる。

「主力の賃貸事業は土地・物件を所有するオーナーの資産、つまり物件を借り上げて受託し運用している。そのなかには短期で売買するのではなく、相続などで得た土地などを次世代に承継することを主眼としているオーナーもいる。一世代あたり30年の付き合いになり、ローンも25年から30年と長く、“オーナーあってのレオパレス”だ」

■「われわれの事業はある意味で社会インフラ」

「共同経営している立場からすると、賃貸事業を手じまいしてしまえばレオパレスの存在意義がなくなってしまう。それが管理を任せてくれているオーナーの方々にとって本意であるのかどうか。資産を承継したいというオーナーの思いが頓挫する可能性もある。アパート建設に融資している金融機関もあり、物件を社宅として借りている企業の利用もある。

われわれの事業はある意味で社会インフラだと考えており、われわれとしてはこれをしっかり立て直して企業価値を高め、その一環として株主還元をするというのが一般的な考え方だろう」

——レオパレスの利益の蓄積を、トラブルになっているオーナーと株主の双方が取り合う構図になっており、会社を含めた三者が三つ巴になってしまっている。これをどう考えているか。

「株主の利益とオーナーの利益がもつれ合っているとは思っている。株主になっているオーナーもいて、どちらの利益を追求するのか、一見自己矛盾的なところもあるかもしれない。そもそも論で行けば、企業価値の源泉はオーナーとの長期的な賃貸事業にある。

オーナーの物件を借り上げて、賃貸需要に向き合い収益を上げていくことが企業価値になっている。企業価値によって定量的に得られる利益の配分が株主の配分につながってくる。オーナーの利益を全く無視して、株主の利益だけ優先するのでは、利益の源泉と言う意味で株主の利益だけを考えるということではないと思う」

■「全棟検査」は昨年10月いっぱいでほぼ一巡した

——2月に入ってレノ側が保有比率を引き上げて15%を超え、レノはレオパレスに対して解散請求権を持つことになった。解散請求権をテコに事業譲渡に向けて揺さぶりをかけてくるのでは。

「われわれはオーナーとの契約期間や関係を長期的なものと考えており、レノ側はそうした時間軸は考えておられないのは明明白白。今回は臨時株主総会だが、定時株主総会に向けて何らかの提案があることも想定している」

——第3四半期決算の数字を見ると、補修工事関連の特別損失は計上額が少ない印象がある。

「各決算において特損の引当金については監査法人と協議し、数字を出している。これから大きな規模の損失が出てくるかと言えば、目の前に大きなものが見えているわけではない。全棟検査は昨年10月いっぱいでほぼ一巡しており、われわれが管理していない物件の中に若干遅れがあるが、わずかな数になっている」

■借り入れのあるオーナーの間には不安が広がっている

——レノに食いつかれたことで入居率に影響は出ているか。

「今の段階ではさほど影響は出ていない。界壁の問題で一昨年に入居率に大きな影響が出始め、特に昨年の2月に充填剤や界壁の問題でかなりお騒がせし、入居率が伸び悩んだ。しかし当社はニッチな事業領域で、その中で差別化ができていると自負している。特に全国企業では社宅の契約を個々の家主と交わすと、書類は増え、不動産屋への手数料も支払わなければならず、振込先もバラバラで大変な手間がかかる。当社であれば至る所に物件があり、事務面も含めて一括的に請け負っている。

レオパレス21の宮尾文也社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
レオパレス21の宮尾文也社長 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

これがもし村上氏側が経営権を握るようなことになると非常に憂慮せざるを得ない。私自身、顧客に会うとこの話になって“どうなの?”と聞かれるが、経営権を握られればそれだけでは済まない。資産を外部にどんどん売却するようになればオーナーの間にも動揺が広がるだろう。

顔の見えない会社にならないように各地で“オーナー会”という説明会を開いている。レオパレスでアパートを建てて15年、20年とやってきている中で家賃の問題もあったが、一定の信頼感や積み上げてきたものがある。これが来年、再来年も同じようにできるか。家賃の決め方も地域ごとの数字をお見せしながら話し合っているが、間には(レオパレスの)人間が入っている。

しかし事業売却などをしてしまえば、オーナーにとってはその人間がいるかどうかわからないし、やり方もどうなるかわからなくなってしまう。オーナーの間にはそうした不安感がある。オーナーはアパート建築のために借り入れもしているし、返済がきちんとできるかどうか、不安が拭いきれないところだと思う」

■批判材料のひとつは三重県津市の「レオパレス銀座」

——今回の臨時株主総会は一種のプロキシー・ファイトだったが、レノ側は当初の全取締役解任提案を取り下げた。しかしこれで危機が去ったわけではない。いずれ対決の場が来ると思うが、株主は今後、レオパレスとレノのどちらを支持するとみているか。

「レノ側の株主提案は取締役一名の選任。ではその議案に出てくる一名の取締役を受け入れることが賃貸事業の譲渡とイコール関係になるのかは難しいところだ。(レノ以外の)株主からは取締役会に株主の視点を持っている人が入ってほしいといわれるが、ではそれが特定の株主がいいんですかと問うと“いや、そうではない”となる。ではどうなればみんなが満足できる構成になるのか教えてもらいたいと株主に問いかけているところだ。レノ以外の株主も悩んでいる部分ではないか」

——営業活動を優先し、レオパレスのアパートが集中して立ち並んでいるケースもある。1キロ四方に40棟のアパートが建つ三重県津市のケースは「レオパレス銀座」と報じられた。こうした営業活動がレノ側の批判材料に使われている。

「4~5月に事業戦略の発表を予定しているが、新規のお客様に電話営業をし、夜討ち朝駆けをするような右肩上がりの考えはまったくない。すでに2万8000人のオーナー、4万棟のアパートがあるので、これをどうするのかが一番の使命だ。

すでに築後20~30年のアパートもあり、耐用年数で言えば木造は22年、ローンは30年ほど。次はどうしようかと考え始めているオーナーもいる。それをどうするかを伺いながら何が最適なのか一つひとつ打ち合わせをしていくのがわれわれの役目。約57万室が回っていけばいいとも考えている。また必ずしも新しいアパートに建て替えなければならないとも思っていない」

■一昨年の4月から「空手形ばかり」になったのが遠因

——臨時株主総会を前に訴えておきたいことは?

レオパレス21の宮尾文也社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
レオパレス21の宮尾文也社長 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

「レノに付け込まれる要因になったのは、われわれが施工不備の対応に時間がかかったことだ。一昨年の4月から“いつまでにこれをします”などと言ってきたが、それができずに空手形を切ってばかりになってしまった。

経営陣が一新され、“まず(昨年)10月いっぱいまでの全棟調査の完了だけはやろう”ということになった。調査と並行して改修を進める手もあったが、経営資源を調査に集中させた。これによって昨夏に募集を再開して入居率を上げるという算段が狂った面もあるが、虻蜂取らずになることは避けられたと思う。

11月からは部屋を空ける作業に取り掛かり、9月からは4万室について募集を再開している。この入居が進めば入室率は7%くらい改善するので、(黒字浮上に向けて)その取り組みを進めているところだ」

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チーム「ストイカ」 オピニオン誌「ストイカ」を準備中の阿部重夫氏(前FACTA発行人)が、臨機応変に記者と組んで取材するチーム。仮開設中のオンライン版は「http://stoica.jp」。

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(チーム「ストイカ」)

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