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新型コロナ封じ込めに失敗したのに、なぜ安倍首相は謝罪しないのか

プレジデントオンライン / 2020年2月26日 11時15分

新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相(中央)=2020年2月23日、首相官邸 - 写真=時事通信フォト

■「ブロークン・ジャパン」はさらに加速している

「ブロークン・ジャパン(壊れた日本)」

2015年頃、イギリスのBBC放送がこの言葉を使っていたと、在英の保育士でノンフィクション・ライターのブレイディみかこが『THIS IS JAPAN』(新潮文庫)の中で書いている。

主旨は、「アベノミクスが明らかに機能してない日本はまだ『終わっている』わけではないが、少子高齢化で人口が減少している国が成長するのは困難だ」というもので、解決法の一つは女性の力を活用することだといっていたそうである。

だが、それから4年以上が過ぎた今、さらに事態は悪化しているといわざるを得ないだろう。

壊したのは安倍政権である。安倍首相の「国家の私物化」が呆れ果てるところまで進み、この国のモラルを決壊させてしまっているのだ。

2月19日、森友学園前理事長・籠池泰典被告(67)と妻諄子(じゅんこ)被告(63)が、国などの補助金をだまし取った罪に問われた裁判の判決が大阪地裁であった。

籠池泰典に懲役5年、諄子に懲役3年執行猶予5年。森友事件の核心は、国有地がなぜ8億円余りも値引きされ、籠池に売却されたのかにある。それに安倍夫人の昭恵が“介在“していたことは間違いないと思われるが、それについて判決文は全く触れていない。

籠池夫妻は、判決が出る前にマスコミ各社の取材を受けていた。週刊文春(2/27号)によれば、こういっていたという。

「(自身の)刑事事件については裁きを受け容れるつもりだ。(中略)森友事件の真相解明についても、微力ながら尽くしていきたい。そのためにも、もう一度、ボクを国会の証人喚問に呼んでいただけないだろうか。佐川元理財局長も一緒の証言台に立てばいい。もちろん昭恵夫人にも来てもらいたい」

獣医学部新設に絡む加計学園疑惑も、まだうやむやのままである。

■政治介入が許されない検察庁人事に異例の事態

安倍首相の私物化の例を挙げればきりがない。憲法9条を骨抜きにするため内閣法制局長官の首を挿(す)げ替えた。アベノミクスのため意のままに動く人物を日銀総裁に据えた。NHK会長に安倍の傀儡(かいらい)をごり押しなど、枚挙にいとまがない。

安倍にべったりだった元TBSワシントン支局長・山口敬之の「伊藤詩織準強姦事件」をストップさせた中村格刑事部長(当時)は、とんとん拍子に出世し、次期警察庁長官有力だといわれている。

安倍は“聖域”とされてきた検察庁にまで手を突っ込んだ。1月31日、政府は2月7日に63歳の定年を迎える黒川弘務東京高検検事長を、8月7日まで勤務延長とする閣議決定を行ったのである。

検察庁法では、トップの検事総長の定年を65歳、ナンバー2の東京高検検事長以下の定年を63歳とはっきり定めている。

検察庁というのは、政官界の不正にメスを入れるために、政治介入を許さないとされてきた。だが、それを無視して政府は人事権を行使したのである。こんなことが許されていいはずがない。権力の暴走である。

この裏には、検察が現職議員を収賄容疑で逮捕したIR疑獄事件があるといわれている。この捜査が進むと、安倍官邸が推し進めてきたカジノ構想が破綻する恐れがあるから、それを潰そうというのである。

■「桜を見る会」前夜祭の“接待”は、間違いなく脱法行為だ

安倍が任命した閣僚たちが次々に辞任した政治資金規正法違反などの捜査も続いているが、それにも圧力をかけようとしているのではないかともいわれている。

疑惑が囁(ささや)かれている河井案里参院議員の選挙中に、安倍の指示で、自民党から1億5000万円もの多額な選挙資金が案里側に提供されていたことも明らかになった。

昨年秋から噴出した安倍自身の「桜を見る会」疑惑は、「一国の政治指導者の言葉の信が問われる、深刻な事態」(朝日新聞2月23日付「社説」)に立ち至った。

税金を使っての地元有権者“接待”など許されるはずはないが、国会で野党から追及された安倍は、口から出まかせといってもいいほど、ウソをつき続けたのである。

前夜祭の支払いは、参加者個人個人がホテルニューオータニ側に支払ったという、あり得ない答弁は、長年、安倍のパーティーを受けてきたANAインターコンチネンタルホテルが、「代金は主催者からまとめて受け取る」と野党議員に答えたため破綻してしまった。

毎日新聞「桜を見る会」取材班による『汚れた桜「桜を見る会」疑惑に迫った49日』(毎日新聞出版)はこう書いている。

「まるで『脱法内閣』じゃないか。(中略)安倍晋三首相は政府の公的行事である桜を見る会を私物化し、多くの後援会関係者を接待していた。同じことを首相がポケットマネーでやれば、公職選挙法に抵触する可能性が高い。しかし、内閣府や内閣官房を通し、私たちの税金で接待した場合はどうなるのか。今のところ捜査当局が動く気配はない。公選法も、まさか時の首相が税金を使って数百人にのぼる自身の後援会関係者をもてなす、などということは想定していなかったのだろう。これは『脱法行為』にちかいのではないか」

近いのではなく、間違いなく脱法行為であり、国家の私物化である。

■「幅広く募ったが、募集ではない」とは……

縷々(るる)書いてきたことは、安倍政権のやってきた私物化のごく一部である。だが、これだけ並べただけでも、この政権が日本をぶっ壊し続けてきたかがわかるだろう。

安倍の出身校である成蹊大学の教授は、「安倍は2つのムチで表現できる」といっていた。「無知と無恥」。国家を私して恥じない事例をいくつか紹介した。では、「安倍語」といわれる無知のほうを見てみよう。

ネットには「安倍語録」というサイトが山ほどある。

読み間違いは「改善(改ざん)」「云々(でんでん)」。これはご愛敬だろう。

「私は立法府の長」「税金は国民から吸い上げたもの」「私が国家だ」は単なるいい間違いではなく、ホンネがポロッと出たのだろう。

対談集で語っていた「現憲法の前文は何回読んでも、敗戦国としての連合国に対する詫び証文でしかない」というのは、戦後の総決算と同様、戦前回帰志向からの発想だろう。

「共謀罪」を巡って野党から質問されたとき、安倍首相は「『そもそも』って『基本的』って意味でしょ。念のため辞書で調べました」と答弁したが、辞書にそんな意味はないと新聞で報じられると、呆(あき)れたことに、安倍は辞書で調べたなんていっていないとキレて、政府は「そもそも」に「基本的に」という意味があるとする答弁書を閣議決定までしたのである。

「桜を見る会」疑惑で、安倍の地元事務所名で観光ツアーへの参加を募る文書が後援者に送られていたと質問されると、「幅広く募っているという認識だった。募集しているという認識ではなかった」と説明したのである。

募ったが募集ではない。何か悪いものでも食べたのではないかと疑いたくなる、国会史に残る迷言である。

■首相秘書が「咥えタバコで立ション」し警察官に連行

評論家の武田砂鉄は安倍政権のやり方を「議題を提示する→メディアの反対を受ける→クリアする→忘れてもらう」の反復だと規定しているが、私は、「問題が起こる→野党やメディアから追及される→ウソをつく→バレそうになると海外へ逃亡するか解散する」のが安倍方程式だと考えている。

現在、中国で発生した新型コロナウイルスは、政府のはなはだしい対応のまずさもあって、日本でも感染者は増え続けている。

このウイルスと同程度かそれ以上の感染力を持っているのが、「アベノウイルス」である。魚は頭から腐るといわれるが、安倍の周囲にはこれの感染者が多発している。このウイルスに罹(かか)った時の症状は、平気でウソをつく、事実を捻(ね)じ曲げる、証拠は隠滅してしまう、質問には答えないという特徴を持つ。

一昨年には、財務省事務次官が女性記者へのセクハラで辞任したが、最近はそれどころではない。

週刊文春(2/20号)が、毎日新聞出身で、安倍の秘書をしている西山猛が、官邸近くの路上で立ションベンをして、麹町署員に連行されたと報じた。路上喫煙を禁じられているのに、咥(くわ)えタバコだったという。

私もオシッコが近いので、ノコギリヤシと頻尿のクスリを欠かさず飲んでいるが、いくら我慢できなくても、首相官邸近くで立ションはしない。立派な軽犯罪法違反で、1日以上30日未満の拘留か1000円以上1万円未満の罰金が課せられる。

■補佐官と厚労省官僚の「出張不倫」も処分していない

その前には、やはり週刊文春が、安倍の信任が厚い和泉洋人補佐官(66)が、大坪寛子厚労省大臣官房審議官(52)と「老いらく不倫」していると報じた。

京大のiPS細胞研究所の山中伸弥所長を2人で訪ねた後、貴船神社(京都市)などで仲良く手をつないでデートしていたというものだった。

続けて文春は、18年9月16日から18日にかけて和泉がインドへ出張した際の疑惑を報じた。大坪を同行させ、しかも和泉は行く前に、ホテルの大坪の部屋を、自分の部屋と自由に行き来できるコネクティングルームにしてくれと、現地の大使館に頼んでいたというのである。

首相でもないのに、主治医を同行させるなど言語道断だし、大坪は「主治医」などではない。文春が過去4年間の大坪の海外出張記録を見ると、18年に4回あるが、そのいずれにも和泉が同行していたのである。もはや公私混同などというレベルではない。税金の不正使用である。

だが、この原稿を書いている時点では、身内に甘い安倍官邸は、2人の処分を発表していない。

これほど悪性のウイルスをばらまく安倍政権が、なぜ、歴代最長の首相在任記録を塗り替えることが出来たのか? 答えは、メディアをアメとムチで飼い慣らしたからである。

■権力監視を忘れてしまったテレビ朝日の番組たち

自分にすり寄るメディアは可愛(かわい)がり、酒食を共にするが、敵愾(てきがい)するメディアは「フェイクだ」と決めつけ、それに同調するネトウヨが図に乗って、当該のメディアを攻撃する。

いい例がテレビ朝日である。かつては、見せかけだけだったとしても報道のテレ朝として勇名を馳せた。だが、「ザ・スクープ」を終了させた早河洋がトップになると、次々、報道番組を潰し、「報道ステーション」をニュースバラエティに変えてしまった。

早河会長は、出版界、芸能界の安倍ベッタリ人間の伝手で安倍に食い込み、ジャーナリズムの重要な役割である、権力監視など忘れたかのようである。

早河会長の意を汲(く)んでいるのが、朝の「モーニングショー」だと、私は思っている。

韓国の文在寅大統領が曺国(チョ・グク)を法相に就任させた時は、毎日のように、文政権と曺国バッシングを飽きもせず続けた。結果、国内の嫌韓派を増大させることに“寄与”したのである。

そして今回は、中国発の新型コロナウイルスの感染について、毎日、長時間放送している。私は朝飯を食いながら、画面は見ないで聞いているのだが、徒(いたずら)に恐怖を煽(あお)っているとしか思えない。

たしかに感染力は強いが、死亡者の多くは高齢者で、死亡率も2%程度だというのに、この番組だけを見ている視聴者は、何やらペストでも蔓延しているかのような錯覚に落ち入るのではあるまいか。産経系列のフジ『とくダネ!』は論外。

■国内初の死者が出た日も「右派連中」と会食へ

マスクというのは、本来、風邪をひいた人間が、ツバなどをまき散らさないようにするためのものであるはずだ。私のように、高齢で、マスクをしない人間が満員電車で咳でもしようものなら、周囲の人間から「死神」のような目で見られる。

メディアはこういう時、視聴者に正確な情報を伝えて、正しく恐がらせるのが役割であるはずだ。徒に、恐怖心を煽りたて、視聴率を稼ごうとするのは下品である。当初の頃は、曺国バッシングのときと同じように、中国叩きが目についた。

だが、安倍政権の対応は、さらにひどかった。中でも、横浜港に停泊中のダイヤモンド・プリンセス号の乗客や乗組員を、ウイルスの蔓延する船の中に閉じ込め、ほとんど手を打たず、長期間放置して多くの人間を感染させてしまったのは、人道上も大きな問題である。

アメリカ国立衛生研究所はこのクルーズの船内を「(感染)ホットスポット」といっていたのに、安倍首相は、早急に手を打つとばかりいうだけで、何ら手を打たず、感染が広がるのをただ見ていることしかできなかった。

しかも、2月20日、船で感染した日本人男女2人が死亡したと発表されたとき、安倍は「政府一丸となって国民の健康を守る責任がある」と記者に語った後、六本木の料理店で、安倍応援団の金美齢など右派連中とともに、会食していたというのである(LITERA2月22日より)。

国民に不自由な生活を強いておきながら、自分は嫌韓・嫌中派たちと美食三昧というのでは、怒るというよりも呆れ果てるしかない。

■服従、沈黙、傍観、無関心が一番いけない

この危機感と真剣さの欠如した対応に呆れたのだろう、「選手を命の危険にさらすことはできない」と、南アフリカ・サッカー協会が、3月27日に予定されていた23歳以下(U23)日本代表との親善試合に、南ア代表を派遣しないと表明した。

このままでは、東京五輪開催も危ういと、ロンドンの市長選に立候補している2人が、ロンドンで開催してもいいといい出した。

ウソで固めて無理やり招致したため、「汚れたオリンピック」という不名誉な称号までついた東京五輪。IOC委員への賄賂疑惑、原発汚染水はコントロールされている、8月の日本は気候温暖など、口から出まかせのウソ八百は、海外から見れば、信用ならない国と見えるのは当然である。

いまわれわれに必要なのは、安倍政権がこれまでやってきた、国民を軽視し、憲法を蔑ろにし、国を私物化するやり口を、絶対に忘れないことである。

安倍が去っても、第2、第3の安倍は出て来る。安倍的なやり方は絶対許さない。たかだか、3割強しかいない安倍支持者など、4割の有権者が「ノー」といえば、簡単にひっくり返る。

服従、沈黙、傍観、無関心が一番いけない。

辺見庸も『永遠の不服従のために』(鉄筆)の中で取り上げているが、チャールズ・ブコウスキーは『町でいちばんの美女』(新潮文庫)の「政治ほどくだらないことはない」で、「われわれは突然、自分たちの命が愚かな連中の手中にあることに気づくのである」といっている。

そう、われわれは今こそ気づくべきである。過ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ。これ以上「アベノウイルス」感染を放置しておくことは、国が崩壊することであると。(文中敬称略)

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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