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小学生の親なら「自ら進んで勉強する子」を放置してはいけない

プレジデントオンライン / 2020年2月27日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Milatas

「子供が机に向かわない」と悩む親は多い。だが、黙っていても机に向かうのが望ましいとは限らない。中学受験塾代表の富永雄輔氏は「進んで勉強する子の中には、『このままでは合格できない』という焦りで追い込まれているケースがある。焦りによる勉強ではそのうち息切れしてしまう」という——。

※本稿は、富永雄輔『それは子どもの学力が伸びるサイン!』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。

■「自ら机に向かう子供」は案外ヤバいこともある

「勉強しなさい!」と言われなくても、自ら机に向かって勉強をはじめる……そこに「勉強に対する前向きな気持ち」がともなっていれば、もちろんこれはとても喜ばしいサインです。

真剣さの中にもどこか楽しそうな雰囲気が感じられたり、やる気が伝わってくるくらい生き生きとした表情を浮かべているなら、学力を伸ばす絶好のチャンス。親が「がんばってるね!」と声をかけ、大いに励ましてあげると、ますますその気になってくれる可能性が高いでしょう。

ただ、自ら机に向かってはいるものの、表情が沈んでいたり、どこか落ち着かなかったりする様子が見える場合は注意が必要です。

なぜならそれは精神的に追い込まれているサインかもしれないからです。

夜遅くまで塾で勉強してきたにもかかわらず、さらに机に向かおうとする場合や、自分の部屋にこもってほとんど出てこない場合などは、その可能性はさらに高くなります。

「このままではみんなに置いて行かれる!」「志望校に合格できない!」という焦りが、休む間もなく机に向かう行動となって表れているのです。

■マジメな子が焦って勉強するあまり、息切れしてしまい……

自分から机に向かっている姿は「やる気」の表れのように見えて、親は安心してしまいがちですが、最近の子供たちは非常に素直で真面目なタイプが多いため、それが実はネガティブなサインである場合も多いです。

もちろん受験生であれば、「焦るな」というほうが難しいですし、本番まで3カ月を切っているくらい差し迫っている場合なら、その状況でもなんとか乗り越えられるかもしれません。

宿題に疲れてしまった少年
写真=iStock.com/x-reflexnaja
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/x-reflexnaja

けれども、受験生ではない、あるいは受験生であっても本番までまだ3カ月以上時間があるにもかかわらず、必要以上に気負ってしまうお子さんは、どこかで必ず息切れしてしまいます。とりわけナイーブなお子さんの場合、途中で心が折れてしまう危険性もあります。

■「不安からの勉強」ではなく「前向きな勉強」に向かわせる

普段から、子どもの表情や言動をよく観察して、「あれ?」と思ったら、とにかく手を動かすことをすすめるのもひとつの手です。

たとえば「算数は1桁の計算をひたすらやる」といった簡単なことでもかまいません。「これだけやりきった!」という達成感を感じられることをまずは目指します。すると、徐々に「自己肯定感」が得られて「不安からの勉強」ではなく、「前向きに取り組む勉強」になり、いいスパイラルで学力を上げることができます。

その状態に、親御さんが導いてあげることが大切なのです。

私が代表を務める塾でも「子どもの表情をよく観察する」ことは指導する者の心得として、徹底しています。

子どもをしっかり観察していれば、「がんばっている表情」なのか「追い込まれている表情」なのかはすぐにわかります。

「がんばっている表情」のときはまわりもいっしょになって「イケイケドンドン」と鼓舞するのはとても効果的です。一方「追い込まれている表情」のときは上手にクールダウンさせて、安心材料を与えて自信を取り戻させることを優先します。

ここで親が「しばらく勉強しなくてもいいよ」と声をかけるのも一案ですが、子どもによっては素直に聞けません。そんな場合は、お母さんがついていっしょに勉強するとか、お父さんがついてお父さんは仕事をしているなどの形で、不安を共有することもおすすめします。

それでも「勉強しなくては」という強迫観念をもっている様子が見られるなら、思い切ってしばらく勉強を休ませ、気分転換させるのも大切です。

■やる気満々で机に向かうも、笑顔がなくなった小6の女の子

難関中学の合格をめざす小学6年生のある女の子は、とてもがんばり屋さんで、私の塾の夏期講習にも1日も休まず通ってくれました。

笑顔の可愛(かわい)いお子さんでしたが、夏休みの終わり頃から徐々にその笑顔が見られなくなっていったのです。

少し心配になった私は親御さんに連絡し、お家での様子を聞いてみました。

すると、「この夏は本当にやる気満々で、塾から帰ってからも机に向かっていて、本当に感心している」と嬉(うれ)しそうに話してくださるのです。塾では宿題は出していなかったので、それは彼女の自主的な学習です。彼女の場合は、それだけ追い込まれていることを示すサインではないかと私は感じました。

翌日、塾で彼女に声をかけて話を聞くと、「お母さんから夏休み明けのテストで偏差値60は取らなきゃダメだって言われてる。でも今のままだと絶対に無理だからもっとがんばらないとダメなんです」とうつむきながら話すのです。その目にはうっすら涙が浮かんでいました。

■2週間の「完全休養」で見事に復活した

そこで私は親御さんにもう一度連絡し、私の考えを率直にお伝えしました。親御さんははじめはとてもとまどっていらっしゃいましたが、話しているうちに思い当たることもあったようで、最後は納得された様子でした。

翌日親御さんのほうから連絡があり、お子さんと相談をされた結果、2週間ほど受験勉強をお休みすることにしたそうです。ずっと全力でがんばってきた子が、この時期に2週間も休むのはかなり勇気がいったでしょうが、「ずっとがんばってきたからこそ、少しくらい休んでも大丈夫ですよ」と私も賛成しました。

そして、2週間後。再び塾に現れたそのお子さんは、前回会ったときとはうって変わり、明るい笑顔を取り戻していました。2週間の間、ゆっくりテレビを見たりお友達と遊んですごく楽しかったそうです。「そうしたらなんだかまた勉強したくなっちゃった」と笑っていました。

仮眠から目覚めてこちらを向く少女
写真=iStock.com/kiankhoon
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kiankhoon

その後、そのお子さんは息切れすることなく、受験勉強をやり切りました。特に最後の踏ん張りは私も親御さんも目を見張るほどで、その結果、見事志望校にも合格したのです。

結果として見れば、夏の「あの2週間」は、彼女のエネルギーをチャージするのにやはり必要でした。

■子どもを追い込む原因の8割は親

本人が何に焦っているのか、何に悩んでいるのかにじっくり耳を傾けることも大事ですが、子どもを追い込んでしまう原因の8割は親の言動だと私は感じています。

多くの親御さんはその自覚をもっていませんが、何気なく発する「このままでは合格できないよ」「このままでは成績がますます下がってしまうよ」といったネガティブな言葉の積み重ねが、子どもをどんどん追い込んでしまっているのです。

もちろん、愛情の裏返しで、おそらくご自身が子供の頃はそのような言葉がけに奮起して育ってきたのでしょうが、今の子どもたちは、ネガティブをポジティブに変換させる力が非常に弱いです。

富永雄輔『それは子どもの学力が伸びるサイン!』(廣済堂出版)
富永雄輔『それは子どもの学力が伸びるサイン!』(廣済堂出版)

今の子どもたちを伸ばすセオリーはあくまでも「ほめること」そして「自信をもたせること」なのです。

受験校の選び方でも、チャレンジ校ばかりよりも、ある程度安全校も受験する作戦のほうが気持ち的に楽になり、自信がもてますし、結果的にチャレンジ校にも受かりやすくなります。

愛情の裏打ちがあっても、子どもを追い込んでいる張本人が「何に悩んでいるの?」「何に焦っているの?」と聞き出そうとしても、子どもはなかなか本音は言いません。もっとも子ども自身も原因に気づいていないこともあります。ですから、まずは親御さんご自身が自分の言動を振り返ってみてください。

私の経験上、必要以上に自分を追い込んでしまうのは男の子よりも女の子に多い傾向があると感じます。もちろん個人差はありますが、一般的に男の子より女の子のほうが勉強に真面目なので、思うように成績が伸びなかったりすると、メンタルに大きなダメージを受けてしまいがちです。

男の子の場合は、よくも悪くも勉強に対してあまり深刻に考えない子のほうが多いのですが、とくに女の子の場合は心のケアを常に気に留めておくほうがよいでしょう。そのためにも「勉強している姿」ではなく、その表情をしっかり見てあげてください。近年流行のリビング学習については、こどもの性格や家庭環境によってその効果はまちまちなので、絶対的にいいとも悪いとも一概には言えない部分があります。

ただ、「勉強している子どもの表情を観察しやすい点は確かにメリットです。

・その行動に前向きな気持ちがともなっているか、こどもの表情を見て判断する。
・子どもが追い込まれる原因の多くは親。まずは親が自分の言動を顧みて。

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富永 雄輔(とみなが・ゆうすけ)
進学塾VAMOS(バモス)代表
幼少期の10年間、スペインのマドリッドで過ごす。京都大学を卒業後、東京・吉祥寺、四谷に幼稚園生から高校生まで通塾する進学塾「VAMOS」を設立。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年約8割の熟成を難関校に合格させている。受験コンサルティングとしての活動も積極的に行っており、年間300人以上の家庭をヒアリング。その経験をもとに、子どもの個性にあった難関校突破法や東大生を育てる家庭に共通する習慣についても研究を続けている。

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(進学塾VAMOS(バモス)代表 富永 雄輔)

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