40代で「夫婦の幸せはこんなもの」から脱出できた理由
プレジデントオンライン / 2020年3月5日 15時15分
※本稿は、勝屋久『人生の目的の見つけ方 自分と真剣に向き合って学んだ「倖せの法則」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「こんなもの」程度の夫婦関係で"倖せ"なのか
夫婦や、仕事においてのパートナーとの関係性について、課題はつきものだと思うが、僕の場合も夫婦の関係が人生において大きなテーマだった。
僕は40代の頃から意識が外側から内側に向かうように変わったからか、僕たちを含めて「世間の夫婦の関係性」に違和感を強く感じ始めた。前妻に「倖せ?」と尋ねたら、「まあ倖せだよ。こんなものなんじゃない?」と彼女が言った言葉が、その当時どうしても受け入れられなかった。
僕は人生を「こんなもの」にしたくないと怒りが湧き、それをまた抑え込んだものの、違和感は残ったままだった。それは自分の怒りを彼女に投影していたからだった。つまり、それまで僕自身が「こんなものなんじゃないか」と自分に言い聞かせ、どうにかやり過ごしてきていたのだ。
でも、意識が内側に変わり出したことで、彼女が僕の抑圧の蓋を開けてくれた。何度か話したものの、今振り返ると、当時はまだまだ上っ面なコミュニケーションしかできず、結局、僕の一方的な話や言い訳になるような話し方になったのだと思う。本音は別のところにあったのだが、会話は観念ベースで、相手に対して自動反応で返答したり、傍観者になったり、相手を説得しようとしたりして、結局、会話そのものがまったく嚙み合わなかった。そして僕は逃げる形で別居し、離婚をした。47歳のときだった。
■お互いが倖せに生きるのがパートナーシップ
その後、リストラに遭い、当時付き合っていた祐ちゃんと、もう結婚は面倒だからいいかなと思っていたが、彼女とのやりとりで自分の存在を許せた僕は、49歳のとき、2度目の結婚に挑戦しようと思った。
![勝屋久『人生の目的の見つけ方 自分と真剣に向き合って学んだ「倖せの法則」』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/8/200/img_480ea04ec2d4bb72c2f49ae434cba73b241088.jpg)
しかし、本当のところ、不安はぬぐえていなかった。実際にどのようにパートナーシップを築いていけばいいのか、わからなかったのだ。前妻のときも倖せにしたくて、一緒に倖せになりたくて結婚したけれど、できなかった。そして実際に、離婚するのは大変だったので、今度こそ失敗したくないという怖れも強かった。だけど、今までに、お手本となるビジョンを感じるような倖せな夫婦にも出会ったことがなかったので、どうすればいいのかイメージすら湧かなかった。
悶々とする中で、「そもそも結婚って何なんだろう?」「結婚する必要があるのだろうか?」「パートナーシップって何だ?」という疑問が湧いてきて、どんどん意味がわからなくなっていった。そしてあるとき、祐ちゃんに意見を求めた。すると彼女はこう言った。
「パートナーシップとは、相手を通して自分とつながること。そして、お互いを育み合うこと。その結果、ずっと一緒かどうか、先のことは誰にもわからないけれど、それぞれが自分の人生を倖せに生きることが目的だと思う」
■「母親フィルター」がつくり出す理想像
母親が無意識につくり出す観念は、そのまま子どもに影響を及ぼす。特に息子には色濃く出る。そんなことを昔、教わった。
祐ちゃんに「付き合っている頃はとてもしっかりしていて、紳士的な対応だった。今ではとても考えられないけど(笑)」と言われたことがある。「男は優しくなければだめ」「男はしっかりしなきゃだめ」ということを、小さい頃から、何かがあるたびに母親に言われてきた。そして、父親がそうでないことの不満も必ずセットでついてきた。
母親が放つ言葉と気持ちが僕の中にどんどん染み込み、母親がイメージする男性理想像(虚像)を形成して、大人になっていく。男はしっかりしなければならない。男は優しくあらねばならない。まさに「気をつけて」生きる人生になってしまっていた。
そのことにも気づかずに。自分の本当の気持ちを無視して、虚像になろうとして、過去ずっと女性と接していた。前妻のときもそうだったし、付き合い始めの祐ちゃんにもそうだった。その一つが紳士的な対応だった。
■「あらねばならない」という考え方はもうやめよう
ここでようやく、母親というフィルターを通してパートナーを見ていたことに気づいた。つまり僕は、目の前のパートナーを見ているようで、まったく見ていなかった。そのことに気づいたときは、本当に愕然とした。
その後、母親フィルターを意識化できるようになり、その都度、外すことを繰り返し、今では解放された。「男はしっかりしなければならない」「男は優しくあらねばならない」という母親の理想の男性像に囚われなくなると、本当にリラックスして彼女と接することができるようになった。
それまでは、「こうあらねばならない」が前提だったので、ただの自動反応だったり、役割の優しさだったりしたが、今では自分とつながって、「優しくしたい」「大切にしたい」という自分の愛がベースで関われるようになった。
何より彼女の機嫌や顔色を怖れることもなくなった。この変化は僕にとっては大きかった。本当に、楽になった。
■男性によくありがちな「逃げ癖」
パートナーを通して自分と向き合い続けると、さまざまな見たくない自分が明らかになってくる。その一つが、何かあると逃げる癖だ。
夫婦関係で揉めたとき、揉めそうになったときの対処法は、ついつい面倒くさくなったり、お互いに冷静になるときを待ったりと、人によっていろいろあると思うが、僕の場合は、無意識に心のシャッターを降ろし、自分とつながらないようにして逃げること。自分の中に閉じこもったり、実際に部屋にこもったり、家を出たり。とにかく、その場から逃れたくなるのだ。そして、関係性を絶ち切りたくなる。これも程度の差はあれ、前妻とも祐ちゃんとも同じことをやってきた。
あるとき、それについて二人で話していたときに、やっと冷静に考察でき、僕の逃避行為は自分の怖れの感情を相手に知られないようにするためだと気づいた。
逃避行動は自分とつながらせようとしない自分のエゴであり、自分の人生を生きることを妨げている行動パターンだと腹落ちしてからは、怖れの感情を抱きながらも、そこに巻き込まれずに、彼女と意識的に対話できるようになった。
■自宅は最高のエネルギースポットだ
自分とつながれば、パートナーとつながり、夫婦関係がよくなることを日々体験している。もはや、自宅や、パートナーと一緒の場が、自分の安心・安全な場となっている。
振り返ると僕の幼少期、前の結婚、今の結婚当初まで、自宅が本当の意味でリラックスできる安心・安全な場ではなかった。もちろん、そのときなりに安心してリラックスはしていたのだが、今とは比べものにならない。まったく違うのである。
それもそのはずだ。小さい頃は母親、結婚してからはパートナーのご機嫌や顔色を、ずっとうかがってきたのだから。そして、幼少期の家庭環境から、安心して自分のハートとつながれる居場所を外に探す旅をずっとしてきたのだ。その都度、ほんの一時的にはそういう場所は見つかるのだが、ずっと継続して存在する居場所を心の奥では求めていたのだ。
そういった背景があるので、長い年月をかけて探していた自分の本当の居場所をようやく手に入れられたことは、僕にとってはこのうえない歓びなのである。まさに自宅は最高のエネルギー充電の場だ。僕にとってパワースポットであり、ハートフルネスな充電の場だ。
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アカツキ社外取締役、マクアケ社外取締役、画家
マクアケ社外取締役、画家。1962年、東京都生まれ。上智大学理工学部数学科卒業後、日本IBMにて25年間勤務。2000 年、IBM Venture Capital Groupパートナー日本代表、経済産業省IPA未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャーなどを経て、2010 年8月にリストラを期に独立。生き方そのものを職業として夫婦で活動中。2014年から本格的に画家としても活動開始。
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(アカツキ社外取締役、マクアケ社外取締役、画家 勝屋 久)
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