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グーグルが「採用で最も重視するスキル」とはなにか

プレジデントオンライン / 2020年3月6日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FatCamera

グーグルの親会社アルファベット社が「採用で最も重視するスキル」とはなにか。教育イノベーターの本山勝寛氏は「人材開発部長のジュディ・ギルバート氏は『もちろん賢いことは重要だ。でも知的好奇心のほうがもっと重要だ』という。これからの社会で必要な力は、これまでとは違う」と説く――。

■ランキングを見れば「社会が変わった」ことは歴然

子どもたちが将来、社会から求められる重要な力とはなんでしょうか? そのために、子育てにおいて意識しておいたほうがよいことはなんでしょうか?

そのことを探るために、まずは世界の企業の時価総額ランキングを2019年と1988年で比較した図表1を見てみましょう。

【図表1】世界時価総額ランキング1988年と2019年の比較
順位 1988年 国名 2019年 国名

1

NTT 日本 アップル 米国
2 日本興行銀行 日本 マイクロソフト 米国
3 住友銀行 日本 アマゾン 米国
4 富士銀行 日本 アルファベット 米国
5 第一勧業銀行 日本 ロイヤル・ダッチ・シェル オランダ
6 IBM 米国 バークシャー・ハサウェイ 米国
7 三菱銀行 日本 アリババグループ 中国
8 エクソン 米国 テンセント 中国
9 東京電力 日本 フェイスブック 米国
10 ロイヤル・ダッチ・シェル 英国 JP モルガン・チェース 米国

世界の時価総額ランキングの推移を見ると、時代が大きく変化していることが一目瞭然です。平成が始まった1988年は、世界時価総額のトップ5をNTT、日本興行銀行など日本企業が総なめし、トップ10も日本企業が7社を占めています。

これが2019年になると、日本企業はトップ10どころかトップ30から姿を消しています。逆に、アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、フェイスブックと、米国のIT系急成長企業が名を連ねています。

子どもたちがよく使うユーチューブもグーグルも、グーグルの親会社アルファベット社によるサービスです。では、そのアルファベット社が採用で最も重視するスキルとは何でしょうか。

人材開発部長のジュディ・ギルバート氏は、『未来のイノベーターはどう育つか 子どもの可能性を伸ばすもの・つぶすもの』(英治出版)の中で以下のように語っています。

「もちろん賢いことは重要だ。でも知的好奇心のほうがもっと重要だ。グーグルで成功する人は、すぐに行動を起こしたがる傾向がある。壊れている物を見つけたらすぐに直すような性格だ。問題を見つける能力も重要だが、見つけた問題について不満を並べたり、誰かがそれを解決してくれるのを待っていたりしないこと。『どうすればもっとよくできるだろう』と自問すること。それからすべてにおいてコラボレーションが必要不可欠だ。周囲に多様な専門性を持つ人がいることに気がつき、彼らから学ぶ能力のある人物を私たちは高く評価する」

■これからの社会で重要な3つの「C」の力

アマゾン社の大学採用ディレクターを務めるマリアム・パク氏も、求める人材像に関するCNBCのインタビュー記事(2017年8月15日『Top Amazon recruiter reveals how you can score a job at the retail giant』)で、「絶え間なく好奇心を持ち続けること」がきわめて重要な要素だと強調し、「アマゾンはスタートアップのシリーズのようなところであり、会社として常に新しいアイディアを探求し、社員からのイノベーションを歓迎している」と述べています。

世界を代表する成長企業が口をそろえて、知識や知能指数よりも重要視しているもの。それが好奇心、創造性、コラボレーションする力です。これは時代が要請する変化だと言えるでしょう。これからの時代に重要となる力を、私は以下の3つの「C」としてまとめています。

・Curiosity=好奇心
・Creativity=創造性
・Collaboration=コラボレーション

近年、IQや学力テストで測れない力、「非認知能力」が注目されてきています。非認知能力には、やり抜く力や自制心、社会性なども含まれますが、それらはどの時代にも必要な基礎力であり、日本人が比較的身につけてきたものです。非認知能力の中でも、新しい時代においてより要請される力であり、かつ日本の教育で足りていないものが、この3つ「C」です。

■IT企業創業者が受けていたモンテッソーリ教育

では、子どもの好奇心や創造性、コラボレーションといった力をどのように伸ばすことができるのでしょうか? この問いに対して、唯一の正解がないのが難しいところですが、そのヒントを挙げるとすると、「遊び」「創作」「仲間」です。

人が物事に興味や関心を抱くのは、楽しいことをするときではないでしょうか。人はやらなければならない義務だと思って取り組むと、そのことに興味が薄れていきますが、楽しい遊びだと思って取り組むと、そのことが気になって仕方なくなり、好奇心を高めます。

グーグル創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグの共通点として、モンテッソーリ教育を受けていたことが挙げられます。

モンテッソーリ教育とは、子どもに内在する自分を育てる力を存分に発揮できる環境と自由が保障された中で、子どもの自発的な活動を後押しすることを基本理念とし、遊びを通じて学ぶことを重視しています。つまり、子どもの頃から、図形やお絵かき、言葉遊びや数遊び、さまざまな道具を通して、五感を使って自由な発想と遊びをしていたわけです。

■絵本の言葉の中に将来夢中になるものが眠っている

たとえば、言葉に好奇心を持たせるにはどうしたらよいでしょうか?

漢字ドリルやアルファベット練習帳を毎日繰り返しても、「習得」させるだけで終わってしまうかもしれません。好奇心を引き出すためには、「言葉で遊ぶ」ことが重要です。しりとりやカルタ、ダジャレ、早口言葉、言葉にリズムのある絵本を読む、歌を歌って歌詞を覚える。これらが言葉遊びです。

何げなく子どもが遊んでいることに好奇心を育てるヒントがあります。おもしろいダジャレを考えたり、言葉と言葉を組み合わせて新しい言葉をつくりだしたりするのは楽しい遊びですが、実は言葉への好奇心、さらには創造性を育むワークでもあるのです。

グーグル創業者のラリー・ペイジは6歳の頃、お気に入りの絵本の文字をパソコンに入力していたと言います。好きな絵本の興味ある言葉を、自分にとって好奇心が刺激されるパソコンと組み合わせた体験に、後に「キーワード」と「検索」で世界中の情報のあり方を席巻するグーグルが生まれる原点があったのかもしれません。

■ゼロからイチを作るのが創造性の根源

子どもの創造性を育むには何をしたらよいのでしょう? それは、実際に、子どもに何かを新しく創りあげさせることです。

本山勝寛『そうゾウくんとえほんづくり』(KADOKAWA)
本山勝寛『そうゾウくんとえほんづくり』(KADOKAWA)

子ども用のプログラミング言語スクラッチを開発したマサチューセッツ工科大学(MIT)のミッチェル・レズニック教授は「創作することで、創造的な思考者として成長する機会を得ることができるのです。結局のところ、創作が創造性の根源なのです」と語っています。

完成された玩具で遊ぶだけでなく、ブロックを自分で組み立ててオリジナルな基地や乗り物、町をつくる。公園の砂場で泥や砂、木の棒や落ち葉を使って自分の作品を創作する。絵本を読むだけでなく、自分でオリジナルな絵本をつくってみる。シンプルで素朴な道具を用いて、自分の頭と手でゼロから何かを生み出すことの喜びや工夫を経験することが大切です。

私は最近、『そうゾウくんとえほんづくり』(KADOKAWA)という、児童向けのワークブックをつくりました。子どもが一つ一つワークに取り組み創作していくことで、最後にはオリジナル絵本を完成させられるというワークブックです。絵本は読むものとばかり思っているかもしれませんが、むしろ自分でつくってみるという逆転の発想を体験してもらい、好奇心や創造性を伸ばす楽しいツールを提供したいという想いからつくりました。用意されたワークを重ねていけば、就学前後くらいの年齢でも、絵本づくりという創造性をたくさん刺激する創作活動に挑戦できます。

■コラボレーションは親子関係が原体験になる

最後にコラボレーションです。コラボレーションは単に人と人が仲良くするだけにとどまるものではありません。異なるもの同士を組み合わせたり、強みと強みを掛け合わせたりすることで相乗効果を生み出し、新たな価値を生み出すことです。そこで、「遊び」と「創作」という先の二つに「仲間」を加えます。

人は一緒に遊ぶことで仲良くなり、信頼関係を構築し、さらにその人の強みを知ることができます。互いの強みを活かしあい、自分一人ではできなかったことを協力して成し遂げようとします。また、共通のものを一緒に創作したり、見せ合って共有したりすることで、お互いに刺激を受け、学び合い、新たなものが生み出されます。

コラボレーションする仲間は、幼少期の頃は、友だちだけでなく兄弟姉妹や親子の関係も重要です。むしろ、親子関係はコラボレーションの原体験ともなります。親が子どもと一緒になって世界に対して絶え間なき好奇心をもって楽しみながら遊び、創作し、創造の仲間となることで、子どもの3つの「C」(好奇心・創造性・コラボレーション)を育むことができるでしょう。

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本山 勝寛(もとやま・かつひろ)
日本財団子どもの貧困対策チーム チームリーダー、人材開発チーム チームリーダー
東京大学工学部システム創成学科卒業。ハーバード教育大学院国際教育政策専攻修士課程修了。『16倍速勉強法』(光文社)、『最強の独学術』(大和書房)、『頭がよくなる! マンガ勉強法』(SBクリエイティブ)など著書多数。5児の父で、4 回育児休業を取得。「学びと社会のイノベーション」をテーマとしたオンラインサロン「MSI塾」を主宰。

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(日本財団子どもの貧困対策チーム チームリーダー、人材開発チーム チームリーダー 本山 勝寛)

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