新型コロナでじわじわ増加中「ウェブ面接」3つの落とし穴
プレジデントオンライン / 2020年3月11日 11時15分
■新型コロナで注目が集まる「ウェブ説明会」「ウェブ面接」
新型コロナウイルスの影響が、大学生の就職活動にも広がっています。
3月1日に来春の卒業者向け就職説明会が解禁になりました。しかし、リクナビ、マイナビ、キャリタス(ディスコ)といった就職情報の大手3社だけでなく、中小企業や大学内での合同説明会はほぼ中止。説明会や選考も大手企業を中心に中止・延期が相次いでいます。
そこで注目を集めているのが「ウェブ説明会」です。例えば「マイナビ就職WEB EXPO」は、2017年からマイナビが展開しているインターネット上で合同説明会です。事前に予約し、スマホやパソコンでライブ配信や録画された企業側の動画を視聴できます。
昨年以前であれば、合同説明会に参加できなかった就活生がサブ的に視聴する、という程度でした。それが今年は、実質的には、この「マイナビ就職WEB EXPO」が唯一の合説となったのです。その結果、視聴した学生は6万5000人と前年比2倍以上もの伸びを見せました。
新型肺炎の感染リスクを下げるためにも、ウェブ説明会という潮流は続くでしょう。その上、選考では「ウェブ面接」を導入する企業が急増しており、運営企業には問い合わせが殺到しています。
スタジアム(インタビューメーカーの運営企業)は、沖縄タイムス2月28日朝刊「感染予防へウェブ面接/新型肺炎で問い合わせ急増/動画配信で接触回避も」記事によると、「問い合わせが1月の約22倍に上る」とのことです。
■ウェブ面接のメリットは移動リスクゼロ
このウェブ面接は、導入企業・就活生、双方にとってメリットがあります。具体的には「時間の節約」「コストの節約」「イベントリスクの軽減」の3点です。
1点目、多いのは「移動時間」の節約です。特に地方の就活生は、面接のためだけに時間をかけて移動していました。これは地方で採用試験を展開する企業にも当てはまります。それから、企業側だと、移動に時間がかかると、その間、他の仕事をしづらい、というデメリットもあります。
2点目、コストの節約も1点目とほぼ同じ。就活生・企業、双方とも交通費や場合によっては交通費が発生します。
3点目、「イベントリスクの軽減」は、コロナショックがまさに当てはまります。未解明の部分が多いとはいえ、接触により感染リスクは高い、とされています。ウェブ面接であれば接触によるリスクはゼロです。
コロナショック以前から、イベントリスクとしては東京オリンピック・パラリンピックがありました。予定通り実施され、外国人観光客が急増すると、首都圏の交通網には大きな影響があるとみられています。この混雑で就活生(または採用担当者)が移動できない恐れもあります。リスク軽減のため、コロナショック以前からウェブ面接を導入する企業が増えていました。
■就活が激変しウェブ面接が主流に
これまでの就活では、ウェブ面接は主流ではありませんでした。大手企業だけでなく中小企業も「面接というからにはちゃんと会わないと判断できない」とする企業が多かったのです。しかし、状況は大きく変わりつつあります。
2020年には5Gが導入されます。これにより高速通信、低遅延、多接続が可能となり、IT化がさらに進む、といわれています。今回のコロナショックで、就活のウェブ化はますます加速するでしょう。今後、就活では面接といえば、ウェブ面接が初期~中盤の選考で利用され、リアルの面接は最終選考を含む終盤のみ、と変化していくでしょう。
それでは、このウェブ面接は就活生にとって福音か、といえばそうとも限りません。
学生が気づいていない落とし穴があります。しかも、従来の面接と異なり、導入した企業も体験した学生も多くありません。そのため、情報が不足気味、とも言えます。そこで、主な落とし穴3点を以下にまとめました。
■就活生にとってウェブ面接は良いことばかり、ではない
落とし穴①:就活生にとって意外と初期費用がかかる
メリットで「コストの節約」と挙げているのに矛盾しているじゃないか、と就活生の方は思うかもしれません。まず、企業側はウェブ面接を運営する企業と契約します。当然ですが、そこでコストが発生します。企業側からすれば、従来の面接でもコストがかかるわけですし、イベントリスク(コロナウイルスへの感染)を考えれば、安い買い物、と言えるでしょう。
問題は就活生側です。ウェブ面接では、ノートパソコンかスマートフォン・タブレット端末を利用することになります。企業採用担当者やウェブ面接運営企業は「お手持ちのスマートフォンで構いません」とアナウンスするところもあります。が、実際にはどうでしょうか。
企業側はその大半が高速回線を利用しています。一方、学生が古いスマートフォンを使い続けている場合、回線が遅く、場合によっては面接中に回線が切れる、という事態を起こしかねません。採用担当者も人間です。いくら、就活生の責任ではないとはいえ、回線切れトラブルが続くと、それだけでイラッとしてしまいます。
そのため、スマートフォン・タブレット端末やノートパソコンを新しいものに買い替える、あるいは、高速化のプランに乗り換えるなどの対応策が就活生には求められます。
■「機材格差」が就活の成否を分けることも
ノートパソコンでカメラを搭載していない機種だと、外付けカメラを購入する必要があります。イヤホンもできれば購入したいところ。
回線越しに会話するのがウェブ面接です。そのため、時には声がお互いに(あるいはどちらかが)聞こえづらい、ということにもなりかねません。このリスクを避けるには、イヤホンを購入する必要があります。イヤホンではなく、ハンズフリー・ヘッドセットという選択もあるでしょう。
スマートフォンの場合、片手で持つ状態だと、どうしてもブレなどが出てしまいます。友人同士の会話なら、それもいいでしょう。しかし、ウェブ面接は採用の是非を決める場であり、ブレ等が発生するのは適当とは言えません。スマートフォンを利用するのであれば、スマホスタンドなどを利用して固定する必要があります。
こうした初期投資が就活生側にも求められます。通常の面接であれば、就活への初期投資といっても、リクルートスーツをブランドものにするかどうか、という程度。しかも、そこで費用をかけたからといって、選考通過の確率が劇的に上がるわけではありません。
一方、ウェブ面接はどうでしょうか。回線落ち、ブレ、声の遠さなど、いずれも採用担当者はストレスを感じます。そうしたトラブルを避けるための初期投資ができる就活生と、そうでない就活生とでは選考通過に相当な差が出るもの、と思われます。
■「カメラの位置」で上から目線にも偏屈にもなる
落とし穴②:映り方で印象が変わる
ウェブ面接は採用担当者、就活生、双方が画面で相手の顔などを見ることができます。当然ですが、双方が画面越しにどんな場所にいるのかを確認できます。企業側は会議室等からウェブ面接を実施しようとするでしょう。ウェブ面接を導入する際に、運営企業等から指示を受けているため、映り方はそれほど問題ありません。
一方、就活生側はそうしたノウハウをもっているわけではありません。そうなると、どう映っているのか、何を、どう注意したらいいのか分からない、といった人も多いと思います。映り方は自分への印象を左右するので、しっかりと準備する必要があります。
映り方でいえば、具体的には「カメラの位置」「光の加減」の2点があります。
まず、前者ですが、スマートフォンにしろ、ノートパソコン・タブレット端末にしろ、カメラの位置は意外と重要です。ウェブ面接を初めて体験する就活生は、カメラの位置を低くしがちです。その結果、就活生がカメラを見下ろす形になり、意図せずとも「上から目線」で悪印象を与えてしまう恐れがあります。
カメラの位置が高すぎると、逆に就活生がカメラを見上げる形になります。これはこれで卑屈な印象を与えてしまいます。カメラの位置は、就活生の視線に合わせるように調整してください。
■「光の加減」も就活生の印象を左右する
次に光の加減です。日中、窓を背にすると、逆光となり、顔が映りにくくなります。光が斜めに入るようにするといいでしょう。それから、顔映りをよくするために、モデル撮影等ではレフ版が使われます。レフ版を購入する必要はありませんが、カメラに映らない位置にコピー用紙の白紙や白いハンカチを置くのも一法です。
自室でウェブ面接を受ける場合、自室の照明がそもそも暗い、ということもあります。特に蛍光灯やペンダントライトだと、部屋全体が暗い印象を与えてしまいます。電機量販店の照明コーナーだと、LEDシーリングライトがよく展示されています。こちらだと、かなり明るくなるため、場合によっては付け替えた方がいいでしょう。
■アウェー感はそれほどない、からこそ油断に注意
落とし穴③:生活面・異音などでマイナス評価も
従来の面接だと、就活生は普段訪問したことのない企業の会議室等に出向きます。いうなればアウェーであり、緊張しやすい、と言われていました。一方、ウェブ面接だと、自室などで受けるため、アウェー感はそれほどありません。
ここが落とし穴で、自室で受ける場合、カメラは就活生が想像する以上に、背景や左右が映ってしまいます。生活感があると、悪印象をもたれるリスクがあります。そのため、部屋をきちんと片付けておいたほうがいいでしょう。
■「空いている部屋を貸してください」と依頼する
異音などを拾いやすいのもウェブ面接の特徴です。もし、自室でも隣室の声・音楽等が聞こえやすいほど壁が薄い、室外の騒音が聞こえやすいということであれば、自室はやめましょう。
ただし、カフェ、学生食堂などでウェブ面接、というのも無理があります。一番いいのは大学キャリアセンター・就職課や新卒応援ハローワークに「ウェブ面接をしたいので空いている部屋を貸してください」と依頼することです。
今後、ウェブ面接は日本の就活でより一般的になるでしょう。本稿で紹介した「落とし穴」を意識するだけでも結果は変わるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
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大学ジャーナリスト
1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。2018年は「大学ジャーナリスト」として、テレビ出演が急増。主な著書に『大学の学科図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)『女子学生はなぜ就活に騙されるのか』(朝日新書)など累計28冊。取材で移動が多いこともあり、ANAはダイヤモンドクラス、JALはプレミアまで到達するほどのマイラー。
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(大学ジャーナリスト 石渡 嶺司)
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