女性が生きづらい社会を助長する、日本の「おじいさん」政治を変える方法とは

プレジデントオンライン / 2020年3月11日 11時15分

お茶の水女子大学 准教授 申琪榮さん

男性が圧倒的多数を占める日本の国会で、男性議員が自らの議席をあきらめてまで女性議員の数を増やすことは期待できそうにない。政党内部から変化が起こらないのだとすれば、外側、つまり有権者の側から変化を促すしかない。政治とジェンダーの問題に詳しいお茶の水女子大学准教授の申琪榮さんに、そのための方法について聞いた。

■地方で保守化が進む構図

前の記事でも述べましたが、政党の内部から変わることを待っていても、なかなか期待できません。そうであれば、外側から女性の声を集め、女性議員を政治の場に送り込んで変えていくしかありません。

国会議員は、約9割が男性で平均年齢も高いですが、地方議会の議員はもっと男性中心で高齢化が進んでいます。東京都などの都市部は女性議員の比率が高く、20%を超えていますが、全国の議会の約17%には女性議員が1人もいません。地方政治の世界では、まだまだ家父長制が根強く、家父長制に抵抗を持つ若い人たちは都市部に行ってしまうので、さらに地方の保守化が進むという構図になっています。ちなみに、1996年に選択的夫婦別姓を可能にする民法改正案が発表されたときには、多くの地方議会で反対決議案が可決され、自民党の地方支部からも大反対の声が挙がって断念されました。

しかしその一方で、女性を政治に送り込むうえで、地方議会は国会よりもハードルが低いのも確かです。まずは地方議会で政治家としてのキャリアを積んでから国政を目指すのは良いと思います。国会議員となると、さまざまな力学が働き、やりたい政策を実現するのは難しいですが、地方なら生活に直結する政策に関わることができますし、やりたいことができるという面もあります。

■数百から1000票が当選ラインのところも

現在、都道府県議会と市町村議会を合わせて、議員は全国に3万人以上いますが、地方議会は高齢化が進んでいて明らかに候補者が足りず、当選しやすい状況にあります。無投票という議会もあります。

国政選挙の小選挙区制だと、何人も候補者がいる中でトップにならないと当選しませんが、地方議会だと、例えば定数が15ならば15番目以内に入れば当選できます。また、自治体にもよりますが、少ないところだと数百票から1000票くらいが当選ラインです。うまくターゲットを定め、今まで政治に関心がなかった層を開拓すれば、それほど難しい数ではありません。

それに、地方では無所属で出馬する人も多いので、さらに立候補のハードルは低くなります。志を同じくするサポーターのネットワークに支えられて自由に活動ができます。給料も、一般的な女性の職業と比べて決して悪い方ではありません。若い人や女性が少ないのが不思議に思えます。

■女性公務員が人材プールに

全国で一番、公務員の女性管理職比率が高い都道府県は鳥取県の20.3%、次いで東京都が16.8%です(2019年4月1日現在)。知事や市町村長などの首長が男女共同参画に積極的だと、間接的にではありますが、地方議会の女性議員を増やすうえでプラスになります。行政の中で女性が活躍するようになれば、次第に候補者になる力を持った女性が育つからです。

国会議員も、官僚出身の人はかなりいます。政治に携わった経験が全くない、政策についてまったくわからない人よりも、行政に関わった経験がある方が、議員として政治に関わるときのハードルは低くなります。地方議会でも同じです。県庁や市役所、町村役場での女性管理職が増えれば、女性リーダーとして立候補する人材のプールが大きくなります。女性の登用を推進する首長の役割は大きいのです。

■変化の圧力になるべき、女性の力が弱い

女性議員の比率が10%という、政治に女性の声が届きにくい状況をそのままにしてきてしまったのは、私たちの責任でもあります。法律や予算に、さまざまな意見が反映されるようにしないと、これまでも、これからも、偏ったニーズしか反映されないままになります。その意味を理解しなくてはなりません。それは、私たちだけでなく次世代に対する責任でもあります。

政治の男女格差で難しいのは、女性自身に、「自分たちが当事者なのだ」という意識が少ないところにもあるように思います。一番大きな変化の圧力になるべき当事者の力が弱いのです。通常、当事者団体が国内で活動して、どうしても変化が起きない場合には、国連などに働きかけて「外圧」を促すような形も取れますが、そもそもの女性の当事者団体の活動が育っていないのでそれもできません。

安倍首相は国内外でしょっちゅう女性活躍についてスピーチをしていますが、政治よりも、経済で活躍してもらうことしか考えていないように見えます。しかし、女性が経済で活躍するためにも、政策決定のプロセスにもっと女性が関わる必要があります。

■政治を変えなければ、私たちの生きづらさは解消しない

政治は、社会そのものを作る領域です。医療や教育、働き方など、すべてに予算と法律が関わります。政治が日常を決めると言ってもいい。ここが変わらないと、今私たちが抱えている生きづらさは解消されません。

私はお茶の水女子大学で「政治政策とジェンダー」の授業を教えていますが、最初の授業で「将来、政治に関わりたいと思う人?」と聞くと、教室にいる30~40人のうち誰も手を挙げる人がいません。でも、学期末に同じ質問をすると、必ず何人かは手が挙がるようになります。

関心を持ち、わかれば道が見えてくるのです。

----------

申 琪榮(しん・きよん)
お茶の水女子大学 ジェンダー研究所 准教授
米国ワシントン大学政治学科で博士号を取得し、ジェンダーと政治、女性運動、ジェンダー政策などを研究。学術誌『ジェンダー研究』編集長。共著『ジェンダー・クオータ:世界の女性議員はなぜ増えたのか』(明石書店)など。女性議員を養成する「パリテ・アカデミー」共同代表。

----------

(お茶の水女子大学 ジェンダー研究所 准教授 申 琪榮 構成=大井明子 写真=iStock.com)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング