コロナ休校のうちに小学生を「理科・社会好き」に変える良書21冊
プレジデントオンライン / 2020年3月10日 9時15分
*本稿は、『プレジデントFamily2018年秋号』の一部を再編集したものです。
■わが子を必ず「理科好き」にする10冊
身近な生き物から宇宙まで。子供のワクワクを刺激します!
「理系の司書として、小学校や地域の図書館の選書をしています。近年はビジュアル的に優れた本、最新の学説を掲載している本、物語で興味を持たせてから科学の原理に自然に引き込む本など子供の本のレベルも上がっています」
そう語るのは、科学読物研究会の市川雅子さんだ。
「科学は“なんで?”という素直な驚きから始まり、原理を知ることで“なるほど”と子供の知的好奇心を満足させてくれます。イベントで“ダチョウの卵に乗ってみよう”という企画をやったら、“卵なのに全然割れない”と子供たちは大興奮。その驚きこそが科学の世界への第一歩です」
茨城県で公立小学校の教員を務め、理科教育に関する著書も多い宮内主斗さんも口を揃(そろ)える。
「学校の授業では、物とは何か、生物とは何か、といった物事の定義を考えるような学習にあまり時間を割けていません。しかし、理科の学習は知識の獲得ではなく、仕組みを理解し、納得することが重要です」
本を通じて科学的な考え方をなぞっていく経験を積むことで、現象の理由を考えたり類推したりする力が身につくのだと宮内さんは言う。
「今回は“空気って何?”“電気って何?”というそもそも論をじっくり扱う本を選びました。自信を持って薦められるものばかりです」
■【理科:身近な生き物の世界編】
公園や野遊びがもっと楽しくなる
『たのしい理科こばなし ①生きものとかんきょう』宮内主斗 星の環会
身近な野草や木、虫や猫からアフリカの動物までいろいろな生き物を仲間ごとに解説します。例えば、ホトケノザとサルビアは同じ仲間です。どこに目を付ければそれがわかるのでしょうか。図鑑ではなかなかわからない、その生き物の生活の仕方が見えてくる本です。選者自身が“こんな本があったら”という思いで作りました。(宮内)
身近にある知らない世界
『目に見えない微生物の世界』(河出書房新社・エレーヌ・ラッジカク、ダミアン・ラヴェルダン、セドリック・ユバ、クリスティーヌ・ロラール)
顕微鏡を使わないと、決して私たちの肉眼では詳細に見ることができない微生物。海の中にも、土の中にも、家の中にも、着ている服の繊維や皮膚にも、どこにでもいる隣人のような存在です。その奇妙で美しく、不気味で不思議に満ちた世界をじっくり観察できる。絵だからこその詳細かつ明確な表現は、何回見ても飽きません。(科学読物研究会)
動物を仲間分けしてみよう
『せぼねのある動物たち』(仮説社・板倉聖宣)
この本は、「科学者が言っていることは本当かな?」と素人目線で疑問を投げかけ、「科学は信用できて、役に立つ」と感じることができる本です。動物の仲間分けも面白い。科学は覚えるものではなく、信用して使うといろいろ発見できて楽しいと感じられる本です。(宮内)
■【理科:地球の歴史をひもとく編】
笑いながら進化への興味が湧く
『おもしろい! 進化のふしぎざんねんないきもの事典』(高橋書店・今泉忠明)
オオアリクイは、シロアリを食べるために細長い口に進化した。そして、前足はシロアリの巣を壊すために強力な爪を手に入れた。しかし、この爪は、歩くのにとても邪魔。このように、進化した結果できてしまった残念な部分にスポットを当てて書かれた本です。かわいいイラストと面白おかしい紹介文にうならされます。(宮内)
鳥はもともと恐竜だった⁉
『恐竜は今も生きている』(ポプラ社・富田京一)
ティラノサウルスには羽毛があり、恐竜は鳥に進化した。そんな最新の研究成果を、順を追ってユーモラスな絵とともに解説。恐竜は、脚のつき方がヒトと同じで、活動のための熱を自分で作る内温動物だったことも化石研究から判明。子供は新しい情報に驚きつつも、自分の知識を整理しながら納得できる。鳥を見る目が変わる本。(科学読物研究会)
石の中は見たこともない驚異の世界
『石の卵』(福音館書店・山田 英春)
見た目は丸い石ころなのに、割ると断面がきれいな模様になっている不思議な石の数々を紹介。神秘的な美しさと、それがどのように作られたのかを説明していきます。長い年月をかけて自然の力で作られた色と形に思わず目を奪われます。鉱物や地学に興味を持たせるきっかけになる一冊です。(科学読物研究会)
■【理科:未知の世界への入り口編】
壮大なプロジェクトを写真で追体験
『おかえりなさい はやぶさ 2592日の宇宙航海記』(講談社・吉川 真)
太陽系誕生の謎を研究するため、観測記録とサンプルを持ち帰る使命をおびて打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトを、写真と図で紹介する。研究者と技術者の協働による優れた技術と不屈の精神がもたらした結果に心を打たれる一冊です。(科学読物研究会)
ジャガイモから生物の法則が見えてくる
『ジャガイモの花と実』(仮説社・板倉聖宣)
私たちは、ジャガイモの実を食べているのではありません。では、実とは何なのでしょう。読んでいくと、その答えが出てくるだけでなく、ジャガイモの品種改良が大変な理由もわかります。実はジャガイモの実や種は、なかなかできにくいものなのです。ジャガイモを入り口に、生物学の世界を見てみましょう。(宮内)
“常識”を科学的に説明します
『10分でわかる!科学のぎもん 4年生なぜだろう なぜかしら』(実業之日本社・江川多喜雄)
この本は、学校で習った知識を使って、身近な疑問を説明してくれる本です。例えば、「テレビのリモコンのオフボタンを押しても、エアコンの電源は切れない」「ドライアイスが溶けても周りはぬれない」といった“当たり前”と思っていることの謎を解き明かしてくれます。1テーマ4ページほどなので読みやすいのも魅力。(宮内)
水や空気を分解すると?
『もしも原子がみえたなら』(仮説社・板倉聖宣)
絵本のようなかわいいイラストで、原子や分子のことを学べるロングセラーです。身近な空気の中にどんな成分が隠れているのか、窒素分子や酸素分子、水の分子を拡大してみるとどんな形をしているのか、雨粒の中にはどれほどの水の分子があるのか、扱う疑問は身の回りのことがベースになっています。(科学読物研究会)
子供に科学の本に親しんでもらうために、書籍の研究・執筆のほか、各地で科学あそび、科学の本の読み聞かせなどを行っている。今年で50周年を迎え、会員は全国に約300人。今回の選書と執筆は市川雅子さん(写真)、坂口美佳子さん、原田佐和子さん、二階堂恵理さん、増本裕江さん、渡部美帆さんの6人が担当。
宮内主斗さん
茨城県公立小学校教諭。著書に『理科授業づくり入門』(明治図書出版)、『おもしろ理科こばなし』(星の環会)ほか多数。趣味は写真、マクロ撮影。
■わが子を必ず「社会好き」にする11冊
電車、お城に食べ物、興味に沿って世界を広げて!
「親御さんの思い描く社会科と、私たちが教えている社会科は違うかもしれません」
お茶の水女子大学附属小学校社会科部会の岡田泰孝さんはこう語る。社会科といえば、「歴史」と「地理」。年号を暗記して、地名を覚えて……。そう認識している人は多いだろう。
「もちろん、『暗記』も必要なんですが(笑)。グローバル化、情報化が当たり前の時代を生きる子供たちには、さまざまな情報や出来事を受け止めて主体的に判断する力、他者と一緒に生き、課題を解決していく力が必要になります。社会科は、その力をつける時間なんです」
子供たちの「世界観」をいかに広げるか。歴史も地理も、その「世界観」を広げるために学ぶもの。
同じ社会科部会の佐藤孔美さんも、「社会科は3年生から始まりますが、1、2年生のうちから、『身の回りのはてな』を探させます。点字ブロックってなぜあるの? など、はてなを持つことが、世界に目を向けていくことになるんです」と言う。
2年生を担当する岩坂尚史さんは、「クラスのルールを決めるなど、そうした話し合いも社会につながります。家族の中でもできますね」と語る。
身の回りのはてなが、地球規模の問題や過去の出来事に興味を持つきっかけになる。お薦め本も、そのきっかけの一つになりそうだ。
■【社会:歴史が見える編】
絵画、兜、茶器、見るだけでワクワク
『橋本麻里の美術でたどる日本の歴史』(汐文社・橋本麻里)
縄文時代から昭和まで、歴史上の建築物や絵画などを見ることで、具体的にイメージが湧いて親しみながら読むことができます。それらの美術品をその時代の政治などに関連させながら解説しているので、歴史の入り口として入りやすいと思います。(岩坂)
※古代、中世、近世・近代の全3巻
戦争の怖さ、平和の尊さは知っておくべき
『はだしのゲン 愛蔵版』(汐文社・全10巻・中沢啓治)
日本で社会科を学ぶときに、やはり第2次世界大戦のことははずせません。社会科の好き嫌いにかかわらず、知っておいてほしいことです。作者が実際に体験したことを基に語るこの漫画は、戦争について深く考えさせられる大作です。(佐藤)
■【社会:地図帳で発見編】
食べ物を通して土地柄と歴史がわかる
『日本各地 食べもの地図 東日本編』『日本各地 食べもの地図 西日本編』(帝国書院)
給食にもご当地メニューがあるのを知っていますか? 高知県のりゅうきゅう(ハスイモ)入りそうめん、土佐和牛のハンバーグ。他にも日本全国の特産物や郷土料理が鮮やかに目に飛び込んできます。食欲と一緒に好奇心がそそられること間違いありません。(佐藤)
新幹線に忍者にマンガ、大好きを見つけて!
『にっぽん発見!マップ』(小学館)
日本にある「世界一」、天然記念物の日本犬など、子供を楽しませるトピックが満載です。路面電車やお城などふんだんに掲載された画像がわくわく感をあおって、間違いなく日本や社会科に興味を持つきっかけになるはず。中学受験にも役立つ知識がいっぱいです。(岩坂)
名所から駅弁まで、とことん詳しい!
『旅に出たくなる地図 日本』(帝国書院)
日本には知られざる素敵(すてき)なところがたくさんあります。見ているだけでその風景に自然と引き込まれる、そんな気分になれる本です。地図を見る楽しさにも気づくでしょう。「楽しいこと」が「好き」になる一番の近道です。世界編もあります。(佐藤)
■【社会:世の中を知る編】
歯医者さん、お坊さん、新聞記者も
『しごとば』(ブロンズ新社・鈴木のりたけ)
絵本作家、鈴木さんの絵が圧巻。さまざまな職業の“道具”を通して、人の営みを事細かに実感することができます。『続・しごとば』『続々・しごとば』などのシリーズ作もお薦め。仕事場をじっくり観察し、道具の意味を考えることは社会科の学習に直結します。(岩坂)
憲法って何? 変えていいの? と考える
『憲法くん』(講談社・松元ヒロ、武田美穂)
コント集団「ザ・ニュースペーパー」の元メンバー、松元ヒロさんと、「ちいさいモモちゃん」シリーズなどで知られる武田美穂さんによる絵本。楽しく語りかける文調ですが、憲法改正の意味など問題提起もされていて、考えさせられます。(岩坂)
21世紀のアフリカの実話から学ぶこと
『風をつかまえたウィリアム』(さ・え・ら書房・ウィリアム・カムクワンバ/ブライアン・ミーラー)
電気がないアフリカの小さな村で、ゴミ捨て場から使える道具を探し、風車を作り出すお話です。あきらめずに試行錯誤する大切さと共に、私たちに不可欠なエネルギーの選択をどう考えればいいのか、日本の社会問題に触れられる一冊です。(岩坂)
野球か鬼ごっこか、多数決を考える
『こどものとうひょう おとなのせんきょ』(復刊ドットコム・かこさとし)
子供たちの遊びの世界では、意見のぶつかり合いは日常茶飯事。しかしそれは小さな社会の中での民主主義を考える第一歩です。子供が投票すること、大人が選挙をすること、そこから民主主義とは何なのかを感じることができる一冊です。(佐藤)
正解のない哲学的な思考力をつける
『こころのナゾとき』〔成美堂出版・土屋陽介(監修)〕
“ふつう”ってなに? 友達っていないとダメなの? 死んだらどこへ行くの? 正解はないけれど、だからこそ考えることを楽しめるのです。「そもそも」と考える哲学的な学び、問いを持つ力、考える力を身につけることこそが社会科なのです。(岡田)
※小学1・2年版、小学3・4年版、小学5・6年版があります。
素朴で普遍的な問いを考え抜こう
『いっしょにいきるって、なに?』(朝日出版社・オスカー・ブルニフィエ)
最初の問いは「ひとりっきりで、生きてゆきたい?」。その問いに対して異なる意見や考えがあって……、思考の仕方を身につけられます。一人、尊重、意見、平等、仕事、リーダーについて考えていきます。考えるクセが身につく本。(岡田)
お茶の水女子大学附属小学校 社会科部会
大阪府の私立四條畷学園小学校勤務を経て、2012年より現職。共著に『生活科で子どもは何を学ぶか』など。
佐藤 孔美(さとう・くみ)
東京都の区立小学校勤務を経て、2001年から現職。共著に『社会的価値判断力・意思決定力を育成する「市民」の学習』など。
岡田 泰孝(おかだ・やすたか)
「価値判断力・意思決定力を育成する社会科授業研究会」副代表。共著に『シティズンシップ教育で創る学校の未来』など。
(プレジデントFamily編集部 撮影=市来朋久)
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