1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

もし、ダイヤ号の乗客がダイヤ号を訴えたらいくら勝てるか

プレジデントオンライン / 2020年3月19日 17時15分

乗客は「事実上の拘束下で恐怖感が相当期間与え続けられた」ことなどを根拠に慰謝料を請求できる。(時事通信フォト=写真)

■お亡くなりだと2千万~4千万円

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。2020年2月初頭、外国人乗客の中に感染者が確認された豪華クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスでは、長い期間、船上で乗客の隔離が続いた。

ダイヤモンド・プリンセスを巡っては、20年1月25日に香港で下船した80代男性の新型コロナウイルスの感染が20年2月1日に発覚。共同通信は、乗客の話として「クルーズ船内では3日午後6時半ごろになって初めて、感染者情報がアナウンスされた。感染した男性が使ったとされるサウナやレストランは通常通り営業し、大半の人がマスクをしていなかった」と報じている。

厚生労働省が感染拡大を抑制するため、乗客全員を自室での待機とするなどの防止策を講じたのは5日の朝からだ。19日から検査で陰性だった乗客らの下船が始まった。しかし陰性で下船した乗客も、その後の再検査で陽性になるなど、混乱は続いた。報道によれば、日本環境感染学会の専門家はパーティー・ビュッフェでの乗客交流や乗員サービス提供などが感染を広げた可能性を指摘している。

数十万円以上の渡航費を支払い、夢のクルーズに乗船した人たちは、下船後も不安な日々を過ごしている。そんな“精神的被害”を受けた乗客は、泣き寝入りするしかないのか。

■損害賠償請求できる可能性

「仮に報道が事実なら、乗客は罹患していなくても、同船を運航する法人に対し損害賠償請求できる可能性は十分あります」

そう解説するのは、城南中央法律事務所の野澤隆弁護士だ。

野澤弁護士によると、船を運航する法人は高度な注意義務を負担している。いわゆる“場屋(じょうおく)営業者の責任”をどう解釈するかが問題になるという。

「場屋営業者(旅館や飲食店などの営業者)は、客を迎え入れている関係上、保管物などにつき重い責任を各種法令で負担させられています。たとえば、旅館が客から預かった荷物を紛失したら賠償責任を完全に逃れることは、レアケースを除けば、困難です。そんななか、このクルーズ船は、高額料金で乗客の一定期間の生活をほぼ丸ごと囲い込む業務形態ですので、短期間の小さな過失であってもかなりの賠償が認められる可能性があります。

今回の件が裁判になった場合には初期段階における運営体制の不備のほか、『事実上、移動の自由が一定期間なく、しかも感染するかもしれない』といった慰謝料の要素をいかに金額評価するかが大きな争点となります」

しかしクルーズの運航法人は代金の全額返金などを発表している。ただ野澤弁護士は「仮に“これ以上クルーズ会社に対して追加のお金を請求しない”ことを乗客が了承したうえでお金をもらっていたら、法人との更なる交渉は厄介にはなってきますが、基本的にはそれとは別で慰謝料を請求できるはずです」と説明する。

では乗客は実際、どれくらい受け取れるのだろうか。

「新型コロナに罹患した乗客は500万~700万円を基本的な慰謝料として法人に請求することになると考えます。ただ最終的な判決や和解で勝ち取れる額はかなりの減額が考えられます。罹患していなくても、『事実上の拘束下で恐怖感が相当期間与え続けられた』ことなどを根拠に200万~300万円程度を請求し、最終的にとれるのは100万~150万円くらいで手を打つというのが現実的かもしれません。もし、お亡くなりになった場合の慰謝料は2000万~4000万円程度が請求相場になります」

ただクルーズ船は横浜に着いてからは、日本政府の指示により事実上運営されていた。政府に対しては責任を問えないのだろうか。

「難しいでしょう。新型コロナについては各国政府がかなり対応したが結局世界中に蔓延した状況を考慮すれば、法的な責任を認めるほどの過失を日本の政府はおかしていない。少なくとも行政府に対する裁判所のチェック機能が弱い日本で認められる可能性は低いのが現実です」

ダイヤ問題の第2ラウンドが始まる。

----------

鈴木 俊之(すずき・としゆき)
編集者・ライター
1985年生まれ。12年法政大学卒業、出版社入社。月刊誌編集部を経て15年独立。専門分野は金融、起業、IT、不動産、自動車、婚活、美容など。

----------

(編集者・ライター 鈴木 俊之 写真=時事通信フォト)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください