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野村克也「メジャーに行く日本人はプロ野球に戻ってくるな」

プレジデントオンライン / 2020年3月24日 15時15分

メジャー組とはぶっつりと縁を切ればいいんだよ。

■プロ野球がメジャーのマイナー化しているよ

なんで日本のプロ野球選手はみんなメジャーリーグに行きたがるんだろうね。メジャーはお金がいっぱいもらえるからかな。マー君(ニューヨーク・ヤンキース田中将大投手)もメジャーに行っちゃったね、俺が監督辞めた途端に。球団は行ってほしくはなかっただろうね。メジャーに行く気があるなんて微塵も感じさせなかったから。球団からしてみれば大損失だからね。

そんな簡単にいい選手なんて出てこないんだから。10年に1度出るか出ないかというような有望な選手が自由気ままにメジャーに行ってしまったら、日本のプロ野球がダメになっちゃうよ。今や完全にメジャーリーグのマイナーになっているよ、日本のプロ野球は。

松坂大輔がケガをして戻ってきたけど、ああいうのを採っちゃいかんよね。一方、松井秀喜は潔いわな。まだ日本でプレーできる可能性もあったけど、きっぱりとメジャーで引退した。行くんだったら戻ってこないというくらいの覚悟で行ってほしいね。

そういえば広島カープの菊池(涼介)がメジャーを断念したね。日本では守備の名手と言われているけど、あのレベルの野手はいっぱいおるけどね、アメリカには。日本人野手がメジャーで活躍するのはまだまだ難しいですよ。

■日本より緻密なメジャーの野球

メジャーリーグのレベルの高さを最初に俺に教えてくれたのは、南海ホークス時代のチームメートで元メジャーリーガーのブレイザーという選手。当時の私はメジャーリーガーを「パワーとスピードだけで雑な野球をする選手」くらいにしか考えていなかった。しかし、雑で考え抜かれていない野球をしていたのは、むしろ日本のほうだと気付かせてくれたのが彼だった。

ブレイザーとの会話で印象深いのはヒットエンドランについて話し合ったときだったね。当時の俺も日本の野球界も「ヒットエンドランのサインが出たら、打者は意地でもゴロを打つ」までしか考えられていなかったが、メジャーから来たブレイザーは違ったね。「一塁ランナーが走りはじめたときにセカンドが二塁のベースカバーに入れば一二塁間に、ショートがベースカバーに入れば三遊間を狙ってゴロを打つ。さらに、それを見極めるために一塁ランナーは走るそぶりだけ見せてどっちがベースカバーに入るか探るんだ」って言っていて感心したよ。メジャーがここまで緻密な野球をやっていたなんて驚いた。

それ以来、私は毎日のように彼を質問攻めにしながらメモを取るようにしていたな。バッテリーの配球、守備のポジション、攻撃のセオリーなどを随分と勉強させてもらったよ。それがのちに俺の「考える野球」につながったから、原点はメジャーリーグにあるといっても過言じゃないね。

俺は現役時代ですらメジャーでプレーしようなんて頭の片隅にもなかったがね。王・長嶋でもメジャーは無理だっていう時代で野球していたから。

しかし、今は随分と簡単に日本人がメジャーに行けるようになった。メジャーリーグの元監督で前にヤクルトスワローズの臨時コーチをやってもらったパット・コラレス氏に「なんで日本人選手がメジャーで働ける時代になったのか」って質問したんだよ。彼の説明だと一番の要因はメジャーリーグのチーム数が16から30に増えたこと。

16チームの時代なら間違いなくマイナーでプレーしてそうなレベルの選手が今では大きな顔してメジャーでプレーしているという言い方をしていた。全体的にメジャーのレベルが下がったちゅうことだ。もう1つは日本のプロ野球のレベルが上がったこと。さっき言ったヒットエンドランのセオリーは今じゃ日本の少年野球で常識になっているし、「考える野球」が浸透してきたわね。その2つを指摘していたな。

いずれにせよ、優秀な選手ほどメジャーリーグの高い年俸に目をくらませずに、日本に残ってプレーしてほしいね。そうでないと日本球界にとって大きな損失になるから。

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野村 克也(のむら・かつや)
野球評論家
1935年、京都府生まれ。54年、プロ野球の南海に入団。70年からは選手兼任監督。その後、選手としてロッテ、西武に移籍し45歳で現役引退。ヤクルト、阪神、楽天で監督を歴任。野球評論家としても活躍。

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(野球評論家 野村 克也 構成=プレジデント編集部 撮影=村上庄吾)

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