産婦人科医が教える、35歳以上の出産における「最大のリスク」とは

プレジデントオンライン / 2020年3月18日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/RyanKing999)

35歳以上の初産は「高齢出産」と言われ、それ以前の年齢での出産よりも妊娠中・出産時のリスクが高くなることが知られています。産婦人科医の月花瑶子さんに、35歳以上の妊娠で心に留めておきたいことを聞きました。

■妊娠高血圧症候群で早産のリスクが2倍に

厚生労働省の発表によると、2018年の平均初産年齢は30.7歳。出生率が減少するなかでも、40~44歳、45~49歳で出産する人は増えています。40歳以上で出産した芸能人のニュースも多く、高齢出産はハイリスクなお産である、というイメージを持つ人は少なくなっているかもしれません。

「以前に勤務していた都内の病院を例に挙げると、そこでの妊婦さんの平均年齢は35歳前後。高齢出産といっても、決して特別なものではありません。ただ、やはり年齢が上がるにつれ、妊娠中の合併症などが起こるリスクが高くなっていくのも事実。過度に心配しすぎることはありませんが、どんなリスクがあるのかを知っておくことは大事です」

高齢出産の妊婦が注意したい妊娠中の合併症の筆頭は、妊娠高血圧症候群です。妊娠高血圧症候群は、それまで正常な血圧だった人が妊娠20週以降に高血圧になった場合に診断されるもの。発症すると出産を終えるまでは治りません。

「高血圧で最もこわいのは、脳出血や痙攣などです。万が一発生すると母体の生命に関わる重篤な事態になりかねません。母体だけでなく、赤ちゃんも危険にさらされてしまう。また、妊娠高血圧症候群を発症すると、胎児の発育不全を起こすこともあります。妊娠高血圧症候群の一番の治療は、端的には妊娠を終了させることです。なので母子やいずれかの状態が悪い場合は、たとえ早産でもベストな方法として帝王切開などで分娩をすることもあります。たかが高血圧とあなどってはいけません」

■塩分の取りすぎに注意し、医師の指示に従って

自分でできる予防策は、妊娠したら高血圧の兆候がなくても塩分の摂りすぎに注意すること。実は現在、治療としての極端な塩分制限はあまりよくないとされていますが、普段から塩分を過剰に摂取している人が日本人には多いのは事実です。塩分控えめを意識して、適切な量を摂取するようにしましょう。また、急激に体重が増えた場合も、妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。

妊娠高血圧症候群は、初期段階では自覚症状がありません。それまで順調であっても、出産直前になって急に高血圧になることも。毎回の妊婦健診をしっかり受け、血圧をチェックしていきましょう。

「通常、妊娠中は軽い運動など、適度に体を動かすことが推奨されますが、妊娠高血圧症候群の症状がみられるときは、運動によって症状が悪化してしまうことも。一般的に『妊婦によい』とされていることが当てはまらないケースもあります」

「よく、妊娠は病気ではない、と言われます。でも、妊娠中はいつもの自分の体とは違う、ということもまた事実。医師の指示に素直に耳を傾ける姿勢が大事です。高齢出産の女性は、すでに自身のライフスタイルを確立し、仕事をバリバリ頑張っている方も多いですね。自分なりの健康法を持っていて、自分の体のことはよくわかっているという自負もあるため、指示を聞き入れてくれないこともしばしば。でも、それまで健康に不安がなかったからといって、妊娠中も問題が起きないとは限りません。何が起きるかわからないのが妊娠・出産なのです」

■産休前の急な入院も念頭に入れて仕事を

「妊娠高血圧症候群になると、塩分やカロリーをコントロールした食事をとり、安静を維持する目的で管理入院になることもあります。ただ、突然、管理入院となると『本当に必要ですか?』『急に言われても、仕事の調整がむずかしい』と困惑される妊婦さんもいらっしゃいます。でも、入院をすすめられるときというのは、医師の管理のもとで経過を見守る必要がある状況になっているということです。高齢妊婦さんは、妊娠の経過によっては産休前に急な入院が必要になる場合もある、ということも頭に入れておきましょう。そうした心づもりがあるだけでもいざというときに冷静に対処できるのではないかと思います」

管理入院によって食生活や安静のポイントをつかみ、血圧も安定してくれば退院に。ただし、妊娠高血圧症候群は、出産を終えるまでは治らないという特徴もあります。症状が重い場合は、脳出血などの危険が起こる前に帝王切開になることもあります。

■妊娠前からの健康習慣は有利に!

妊娠中に起こるトラブルとしては、ほかにも妊娠糖尿病、貧血などがあげられます。なかでも妊娠糖尿病は、高齢出産のほうがなりやすいと言われているので、注意が必要。発症すると、妊娠高血圧症候群などのほかの合併症も引き起こしやすくなります。予防のためには、バランスのいい食事と適度な運動が大事に。

高タンパク・低カロリーな食事は、鉄分もしっかりとりやすく、マタニティ期を健康にすごすためのベースになるもの。こうした食生活が習慣づいている人は、意識しなくても妊娠中のトラブルの予防につながります。

「また若い妊婦さんに比べると、おなかが大きくなってきて腰痛を訴える妊婦さんも多いですね。ヨガやピラティスなど、骨盤のゆがみを正すストレッチは、腰痛緩和にも効果があるようです。妊娠前から適度な運動習慣で筋肉を鍛えていたほうが、妊娠中も元気に快適に過ごせる印象がありますね」

妊娠中はホルモンの影響などもあり、トラブルが起きやすい状態。さらに高齢であることが、そうした症状を起こすリスクを高めます。健康な人も自分を過信せず、生活習慣を見直していきましょう。

「さまざまなリスクはありますが、検診にきちんと行き、医師の指示を守っていれば、不安になりすぎなくても大丈夫。妊娠中はストレスをためず、できるだけリラックスして過ごしてくださいね」

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月花 瑶子(げっか・ようこ)
日本産科婦人科学会産婦人科専門医
東京・新宿にある不妊治療専門クリニック杉山産婦人科に勤務。 産婦人科領域で事業展開するヘルスアンドライツのメディカルアドバイザーを務める。 共著書に『やさしく正しい 妊活大事典』(プレジデント社)、 監修メディアに「性をただしく知るメディア Coyoli」がある。

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(日本産科婦人科学会産婦人科専門医 月花 瑶子 構成=浦上藍子)

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