1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

なぜ「ITベンチャーの聖地=渋谷」が過去の話になっているのか

プレジデントオンライン / 2020年3月18日 15時15分

住友不動産ビル営業部長の山下竜弥氏 - 撮影=和田 佳久

ここ数年、「ITベンチャーの聖地」といわれてきた渋谷地域から、六本木などほかの地域にオフィスを移すIT企業が目立つ。そうした動きを加速させているのが、「東京のオフィスビル、ナンバーワン」を謳う住友不動産だ。なぜITベンチャーに選ばれているのか。ビル営業部長の山下竜弥氏に聞いた――。

■オフィスビルの1階に貸室を設けない理由

──住友不動産のオフィスビルに入るITベンチャーが増えているという印象があります。実際に手応えを感じていますか。

ITベンチャーに特化しているわけではありませんが、「ITベンチャーの聖地=渋谷」という従来のイメージを変えるようなオフィスを増やせていると思います。たとえば2016年3月竣工の六本木グランドタワーでは、DMMやBASEなど渋谷地域から多くのITベンチャーが移転されました。このビルは地上43階・地下2階建て、延床面積約6万3000坪を誇る我々のフラッグシップの1つで、テレビ東京も入居しています。

──なぜITベンチャーに選ばれていると分析していますか。

根底には当社のオフィスビルづくりのポリシー「シンプル・イズ・ベスト」をご評価いただいたのだと思います。ビル形状は「整形・無柱・広いワンフロア」にこだわっていて、自由にレイアウトできます。また外観は全面ガラス張りで、1階には貸室をあえて設けず、エントランスホールは重厚感のある広々とした空間にしています。一度お越しいただければ、他社物件との違いがおわかりになるはずです。

立地にもこだわっています。六本木グランドタワーの場合、南北線の六本木一丁目駅直結で、日比谷線・大江戸線の六本木駅や銀座線・南北線・丸ノ内線の溜池山王駅(国会議事堂前駅)、日比谷線の神谷町駅から徒歩圏内。利便性の高いところに、戦略的にビルを建てています。

■「WeWork」などシェアオフィスには目もくれない

撮影=和田佳久

──ビル開発以外にITベンチャー向けに採った戦略はありますか。

ITベンチャーとのリレーション強化には注力してきました。それまでビル営業部のチームは大企業向けと中小企業向けの2班体制でしたが、2016年からは主にベンチャー企業をターゲットとした営業チームを立ち上げました。それ以前からも2013年から大企業とベンチャーのマッチングイベント「出張モーニングピッチ」、2015年からは大企業とベンチャー企業との交流、支援イベント「新宿サミット」を定期的に開催しています。さらに2018年からは三井住友銀行と共同で、大企業がベンチャーにラブコールを送る「リバースピッチ」を始めました。そのほか、ベンチャーキャピタルなどの金融機関が協賛するベンチャー向けのイベントにも積極的に協賛しています。

──その目的は?

もちろん最終的な目的はテナント誘致です。我々は、数年で従業員100名前後に急成長するようなスタートアップに入居していただくことを目指して、有望な小規模ベンチャーとのつながりを積極的につくっています。

──最近は「WeWork(ウィーワーク)」などのシェアオフィスが話題です。住友不動産はシェアオフィス事業に積極的ではありませんが、なぜですか。

時間や日単位でスペースを貸すシェアオフィスではビル運営が安定しないからです。シェアオフィスは話題を集めてはいますが、我々の推計だと現在の市場規模は首都圏で5~6万坪程度です。われわれの大型オフィスビル一棟分ですので、そこに年単位で貸し出すほうが効率的です。我々はいっときの流行に左右されず賃貸事業の王道を突き進んでいくというのが基本路線です。

■わずか一棟からのスタートでオフィスビル東京ナンバー1に

──現在、住友不動産は都内に230棟超を運営し、「東京のオフィスビル、ナンバーワン」と謳っています。どのような戦略で、そうだけ多数のビルを保有することになったのでしょうか。

当社は他社のように都内に多数の土地を持っていたわけではありません。財閥解体で1949年に事業を開始したとき、東京に保有していたビルはわずか一棟でした。そこからスタートしたため、特定のエリアに偏らず、オフィス立地の可能性を秘めていると判断すればどんなエリアでも積極果敢に用地を取得し、大中小とあらゆる規模、価格帯のオフィスビルを建設してきました。

その結果、入居企業からどのような要望を受けても対応できるという「東京のオフィスビル、ナンバーワン」というラインナップができあがりました。当社のトップも常々「我々はビルの百貨店だ」と言っています。現在、ビル営業部は大企業チーム、ベンチャーチーム、その他チームと3つにわかれています。オフィスビル数の割合は6(大):3(中):1(小)です。

■都内のあらゆるエリアに自らオフィス街を作る

──2017年竣工の麻布十番ビルや2016年竣工の新宿ガーデンタワー(最寄り駅は高田馬場)など、他社であればマンション用地になりそうなところに、オフィスビルを建てていますね。結果はどうでしたか。

大成功です。作ってみれば、むしろ立地を気に入っていただけるお客さまが多く、麻布十番ビルと新宿ガーデンタワーは、予想以上に申し込みがありお断りしたほどです。これまでオフィスビルが存在しなかったエリアに作ることで賃料の価格帯を当社主導で設定できるので十分な利益も確保できています。

ビルは我々にとって資産です。保有する以上はいいものを作って資産価値を上げたいという狙いがあります。ゆえに、常にあらゆる点に妥協せず、その地域でナンバー1のハイクオリティなビルを建てようという熱意をもってビル開発に取り組んでいます。それは同時にお客さまのニーズとも合致します。

──今後のオフィスビルデベロッパーとしての展望や戦略を教えてください。

現在のオフィスビル市場の活況がいつまで続くかはわかりませんが、当社に対しては少なくとも3年先までは入居の申し込みをいただいています。不動産は時間の長い商売です。今後も10年先を見据えつつ、都内のあらゆるエリアに自らオフィス街を作る気概で、整形・無柱・広いワンフロアを貫きたいと思います。

撮影=和田佳久

----------

山下 竜弥(やました・たつや)
住友不動産 ビル事業本部営業部長
1969年神奈川県生まれ。92年法政大学経済学部卒業後、住友不動産入社。93年ビル事業本部法人営業部。94年ビル事業本部ビル営業部。2005年都市管理事業本部ビル営業第一部課長。10年ビル事業本部営業部営業グループ長。14年資産開発事業本部総合事業所課長。15年広域ビル事業部長。2016年ビル事業本部ビル営業三部長。17年より現職。

----------

(住友不動産 ビル事業本部営業部長 山下 竜弥 構成=山下久猛 撮影=和田佳久)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください