5回の暴落を経験した経済評論家が伝授「今、投資で絶対やってはいけないこと2つ」
プレジデントオンライン / 2020年3月23日 6時15分
■コロナ暴落にどう向き合うか
このところコロナウイルスによる影響で世界中の株式市場が大きく下落しています。3月18日現在での日本の日経平均株価は1万6726円となり、2月17日の2万4066円から1カ月もたたないうちに30.0%という大幅な下げとなりました。メディアも「リーマンショック以来の暴落」と報道していますし、実際にこれだけ短期間での下落というのはこの数年間ではなかったことです。
株式や投資信託による投資をしていない人にとっては、ほとんど関心の無いことかもしれませんが、投資をしている人、特にリーマンショック以降に投資を始めた人にとっては、穏やかな気持ちではいられないと思います。リーマンショックの時は「100年に一度の下落」ということがよく言われましたが、それは事実ではありません。私自身、1974年から半世紀近くにわたって株式市場を見続けてきましたが、リーマンショック級の下落は少なくとも5回経験しています。あれが100年に一度の下げなら私は今500歳になっているはずです(笑)。そこで、今までに何度も大幅な下落を経験してきた私から見た今回の下落とそれについてどう考えて、どう対処すべきかをお話したいと思います。
■今回、なぜこんなに株が下がったのか?
まず今回の下落の理由です。一般的にはコロナウイルスのせいだと言われていますが、私はそうでは無いと思います。冷静に企業業績や経済指標を見ていれば昨年後半以降、日本の企業の業績はあきらかに低下傾向を示していたからです。特に10月の消費税増税以降は消費の落ち込みは明らかでした。にもかかわらず株価は上昇を続けていました。株価というものは短期的には必ずしも経済の実体を正確に表すものではありませんから、こういうことはよくあることで、買われ過ぎや売られ過ぎで株価が上下に振れ過ぎることは十分起こりえます。米国もやや状況は異なるものの同じような状況です。
したがって、今回のコロナウイルス騒動は本来割高だった市場が下げるきっかけになっただけのことでしょう。ではなぜ、コロナウイルスが下げるきっかけになったのでしょう。それは「わからないものに対する恐怖」です。現時点でコロナウイルスに関してわかっていること、それは、1)感染力はかなり強い、2)でも死亡率は低い、3)高齢者や持病を持つ人は悪化しやすく、最悪は死に至ることもある、4)特効薬はない、5)予防には手洗い、うがい、そして免疫力の強化が有効、といった特徴です。これって何かに似ていませんか? そう普通の風邪と同じです。でも単なる風邪とは言い切れない、まだわからないことがたくさんあるので厄介なのです。今後どのような展開になるかは今のところ読めません。いずれ収束するだろうとは思いますが、それがいつになるのかはわかりません。
■今後のさらなる急落は考えにくい
そんな状況の中で政府も感染拡大を防止するためにさまざまな施策を打ち出してきています。学校の一斉休校や、大規模イベントの自粛といった、さまざまな活動を制限する方向です。これは感染拡大を防ぐためにはしょうがないことですが、こうした経済活動の縮小は経済にとってはマイナスの影響を与えることは間違いありません。
したがって、今回の下落による調整は少し長引くかもしれません。ただ、過去の大きな下落を見ているとだいたい直前の高値から30~40%ぐらい下げたところで止まるという傾向があります。今回も既に30%ぐらい下げていますから、ここからさらに下がることはあっても、今までのような下げ方は無いでしょう。
■やってはいけないことは「売ること」と「止めること」
さて、ここからが、こうした下げ相場にどう対応するかということです。これは個別株投資をしている人と、投資信託などの積立投資をしている人で若干異なりますが、どちらにも共通していることは「決して慌てて売ってはいけない」ということです。投資というのは経済行為ですから、冷静に考えてきちんと数字を見て判断しないといけないのですが、一方で投資マインドを大きく左右するのが人間の心理です。相場の上げ下げというのは直接自分のお金が損か得かということに直結しますから、心が揺れ動かされないわけがないのです。
投資を邪魔するもの、それは「欲」と「恐怖」です。上がっている時に冷静な判断を妨げるものは「欲」であり、下がっている時に正しい行動の邪魔をするのが「恐怖」です。今のように下落が続くと、今投資をやっている人は不安でたまらないでしょう。しかしその恐怖におびえて売ってしまうと、必ず失敗します。
例えば確定拠出年金という制度があります。毎月一定額で預金や投資信託を購入する制度です。この制度は2001年から始まっていますが、昨年(2019年)の時点でマイナスになっている人がなんと2.3%、19万人近くもいるのです(※企業年金連合会2019年2月発表の資料より)。2001年当時の日経平均は1万円ぐらいですから、ずっと積立を続けていたのであればほとんどの人はプラスのはずです。にもかかわらずマイナスになっている人がこんなにいるのは一体どうしてでしょう。
■暴落時にやってしまいがちな最悪な行為
この理由は簡単です。積立で投資信託を買っていた人がリーマンショックで大きく下がった時に怖くなって売ってしまい、そのお金を定期預金に移して今日まで放ってあるからです。定期預金ではまずほとんどお金は増えませんから、リーマン時に損を確定したものがそのまま今日まで続いているということなのです。その時に何も行動しなかった人はその後株価の回復によって大きな利益を得ることができています。株式市場というものは永遠に上がり続けることもなければ永遠に下がり続けることもありません。仮に下がっても長期保有していれば報われる可能性は大きいのです。したがって、わざわざ安くなった時に売ってしまうというのは最悪の行動と言って良いでしょう。
売るところまでいかなくても嫌になって積立を止めてしまう人もいるでしょうが、これも感心しません。積立投資の良いところは一定の金額で購入することによって値段の高い時は少ししか買わず、安い時にはたくさん買えることです。下がった時に積立を止めてしまったのでは、安い時にたくさん買って平均コストを下げるということができなくなってしまいます。したがって、積立投資をやっている人は、売ったり、積立を止めたりするのではなく、何もせずに淡々と積立を続けること、これに尽きると思います。
■個別株投資のスタートには好機
一方、これから投資を始める人、それも個別株投資を始める人にとっては、今はとても大きなチャンスです。なぜならコロナウイルスの蔓延によって大きな影響を受ける企業だけでなく、それ以外の企業も一緒に連れて大きく下がっているからです。言わばどれもこれも一緒くたに投げ売り状態になっている超バーゲンセールの真っ最中です。バーゲンセールなら熱心に出かけていって安くなっている良い物を買うのに、市場が株の大バーゲンセールをやっている時に買わない手はありません。本来はこんな時に備えて日頃から『会社四季報』などで研究して、成長する企業を探しておくべきですが、今からそれをやっても決して遅くはありません。なぜなら、今回の調整はどうやら長引く可能性がありそうだからです。
ややもすれば、日経平均がどうなった、こうなったということだけにとらわれがちですが、全体の動きは見てもしょうがないですし、それを予想するのも無理です。どんなに市場が下落し、低迷を続けても、確実に利益を挙げて成長を続ける会社はあります。ところがそんな会社でも他と同じように下がっているこういう時期こそ、仕込んでおく時期なのではないでしょうか。そういうことができる人だけが株式投資で大きな利益を手にすることができるということを忘れてはいけません。
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経済コラムニスト
オフィス・リベルタス代表 大手証券勤務を経て2012年独立。行動経済学、シニア層向けライフプラン等をテーマに執筆・講演活動。著書に『「定年後」の“お金の不安”をなくす 貯金がなくても安心老後をすごす方法』ほか。
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(経済コラムニスト 大江 英樹 写真=iStock.com)
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