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未曾有の"コロナ大不況"突入で「あなたはリストラされる」

プレジデントオンライン / 2020年3月23日 11時15分

アナリストの馬渕磨理子氏。すでに事実上のリストラ宣告をされる方が出ています。

新型コロナウイルスの感染拡大が、ついに雇用にも影響を及ぼし始めた。「当初は、直接的にコロナウイルスの影響を受けたのは、飲食などの営業時間短縮によるアルバイトなどに代表される非正規雇用者でした。しかし、現在は観光業をはじめとして幅広い業界でリストラが広まろうとしています」。そう分析するのは人気アナリストの馬渕磨理子氏だ。今後、感染拡大が長引けば、コロナ大不況でリストラされるのは誰なのか。最悪のシナリオを解説する。

■コロナショックでテレビ局が笑えない状況に

先日、日本政府は、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策を発表しました。その一つが、非正規雇用者を対象とした「個人向け緊急小口資金等の特例」。予算207億円を投じたこの特例、非正規雇用者への緊急小口の額を10万円から20万円に拡充させ、さらに無利子、償還免除などの優遇措置を設けるというものです。しかし、これはあまりにも心もとない金額。今回のコロナ不況により、フリーランスや非正規雇用者の中には取引先からの事実上のリストラを通達されるケースも目立っています。

イベント業や飲食業などはコロナ不況のダメージを受けた業界として真っ先に思い浮かびますが、意外な打撃を受けているのがマスコミ業界。新型コロナの影響で、イベントなどのCMが差し替えられるなど、広告収入の大幅な減少が見込まれるテレビ局では、非正規雇用者の契約更新を急遽(きゅうきょ)白紙に戻すケースが出始めています。テレビ局に襲いかかる売上減少の原因は広告収入だけではありません。毎年、キー局や地方局では7月ごろにスポンサー企業を募り大規模なイベントを開催するのが通例となっていました。今年はそのイベント開催中止が危ぶまれています。フジテレビならば「ワンガン夏祭り」、テレビ朝日ならば「テレ朝夏祭り」、日本テレビならば「超☆汐留パラダイス!」といったように、4月ごろには夏に向けてイベント開催に向けて動き出すのが通年の動きでしたが、仮に開催できたとしても規模縮小を余儀なくされることは間違いありません。

■契約内容を大幅変更。30代テレビ局勤務の男性

テレビ局のイベントは、収益において大きな意味を持つものです。イベントを入り口とした番組の新規スポンサーの獲得、スポット広告の新規出稿など、営業ツールとしても重要な役割を担っているからです。また、テレビ局がイベントを通してリアルな場で直接顧客とコミュニケーションを持てるイベントは、局や番組のファンを増やす施策としても有効。直接的な収益以上の効果を生むチャンスなのです。

今回のコロナ不況の煽(あお)りを受け、契約内容の大幅な変更を言い渡されたキー局で勤務する30代男性によると、「4月は、イベントでのブース展示にスポンサー企業が名乗りを上げてもよい時期ですが、局側もこの時期の提案は難しい状況」と内実を語ります。

各キー局の動きで今後訪れる最悪な事態はとても深刻なものです。フジテレビの場合、協賛金だけでも夏のイベントに数十億円程度が集まることが知られています。また、本社のあるお台場は毎年外国人観光客で賑(にぎ)わう観光スポット。アジアからの観光客の姿を見なくなった今の東京湾岸エリアの風景が続くと、多くの人が集まるイベント会場として知られるお台場はもっとも打撃を受ける場所の一つになるでしょう。

フジテレビ本社。夏のイベントで大打撃か。
写真=時事通信フォト
フジテレビ本社。夏のイベントで大打撃か。 - 写真=時事通信フォト

テレビ朝日もその影響を受けています。すでに『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の延期を発表した同局。テレビ朝日の映画ドラえもんシリーズは、ファミリー層を中心に支持を集め、毎年大きな収益源となっていました。過去には、『映画ドラえもん のび太の宝島』ではシリーズ史上最高興行収入53億円という大ヒットを打ち立ています。今回の『映画ドラえもん のび太の新恐竜』にも期待が寄せられていただけに、公開延期は売り上げの見通しが立てにくいたため、かなり痛手となります。

■「雇われる側」がコロナ不況で負けない方策

こうした収束の見通しがなかなか立たない中での大幅なリストラ、訪日外国人観光客によるインバウンドの減少、各種イベントの中止が広がったことで、現在少なくとも3兆円近い“コロナ不況”が想定されています。そんなときに、雇われる側として必要とされる人材になるためにはどのような特徴を備えていればよいのでしょうか。

それは「専門性を高める」「マネジメントができる」「ファミリーと認識される」の3つに収斂(しゅうれん)されます。まず、自分の努力でできることが「専門性を高める」こと。マーケティング・財務会計・プログラミング・編集などのスキルがあることに加え、社外との豊富な人脈を持つなど、組織の中で自分にしかできない仕事をアウトプットし続けることで、所属する会社へ大きく貢献できます。

次に、組織にとって最も要になるのが「マネジメントをできる」人材になること。経験や知識、コミュニケーション能力はもちろんのこと、戦略を立て、ネゴシエーションまでこなせる能力があれば、会社組織においてはマネジャーとして重宝されます。一朝一夕に身につく能力ではないですが、コロナ不況の中でも社員のモチベーションを管理できるマネジャーは会社にとって絶対にクビにできない人材。最近ではMBAなどの資格を持ってマネジャー職を経験するビジネスパーソンも目立っています。

■ファミリーとして認識されるかが、コロナ大不況下では大事

最後が、「ファミリーと認識される」こと。これは、コロナ不況の煽りを受けていると言われるフリーランスの場合、特に重要なスキルになります。ビジネスにおいては、役職や会社などを超えた、“人脈”とは異なる“ファミリー”と言えるビジネスパーソン同士のネットワークが形成されています。ファミリーの中心人物は、連続起業家など、複数の企業の顧問を務める人物であることが大半で、そんなファミリーの“父”が、ビジネスの案件や仕事を次から次へとフリーランス人材に持ってくるのです。ファミリーの“父”は、経営者に限らず、投資家のケースも少なくありません。彼らはWeb作成ならこの人にお願いする、マーケティングはこの人にお願いするとあらかじめ常に人材を決めています。この目に見えない“ビジネスファミリー”の経済圏を認識し、自分がどのファミリーに所属しているのか自覚していることはとても重要なスキルと言えるでしょう。フリーランスとして生きてく場合、自分がいつでも切られる人材なのか? それとも、ファミリーの中で固有の価値を見いだされている人材なのか。その見極めができている人は今回のコロナ不況のダメージも最小限で済んでいます。

ここまでの話をまとめると、フリーランスや非正規雇用の方が、実践すべきことは「仕事のポートフォリオを組む」こと。前述した3つの特徴に加え、コロナ不況の煽りを受けているテレビ局の中でも単なる「交換可能な下請け」にならずに、複数の企業と取引し、ファミリーの中で固有のスキルと価値を持っていれば、コロナ不況を乗り越えられるはずです。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
株式会社フィスコ/アナリスト・投資家
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、株式会社フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。ロイター・ブルームバーグ・yahoo!ファイナンス、雑誌プレジデント、テレビCMなど多数出演。

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(株式会社フィスコ/アナリスト・投資家 馬渕 磨理子 構成=鈴木俊之)

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