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おトクすぎる「フルムーンパス」…鉄道ジャーナリストも"穴"と断言した

プレジデントオンライン / 2020年3月25日 11時15分

新幹線のグリーン車内。青春18きっぷとは違った、ゆったりとした旅を楽しめる。 - 写真提供=JR東海

「フルムーン旅行」というフレーズを聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

実は、フルムーン旅行の語源となっているのはJRが発売する「フルムーン夫婦グリーンパス」(以下、フルムーンパス)という特別企画乗車券(トクトクきっぷ)です。1981年に初めて発売されて以来、毎年の定番商品です。

鉄道ジャーナリストの東香名子氏は、「ゆったり国内旅行をしたい、いろんな土地を観光したいというご夫婦にぴったりの非常にお得な切符」だとフルムーンパスを説明します。

■対象は2人の年齢を合わせて88歳以上の夫婦

CMなどの影響から「フルムーン旅行」といえばリタイア後の熟年夫婦が2人でのんびり旅をする、というイメージがあるかもしれません。しかし、実はフルムーンパスの対象は「利用開始日時点で2人の年齢を合わせて88歳以上の夫婦」です。購入の際には健康保険証などの公的証明書を提出し年齢を証明します。

それなら自分たち夫婦も使える、と思った方も多いのではないでしょうか。

有効期間は5日間、7日間、12日間の3種類。有効期間中、JRの新幹線を含む特急、急行、快速、普通列車のグリーン車、B寝台車、BRT(バス高速輸送システム)およびJR西日本宮島フェリーに自由に乗り降りすることができます。

ただし、のぞみ号・みずほ号は対象外です。また、夫婦で1枚の切符を共有する形のため、2人で同一行程を利用しなくてはならない点には留意が必要です。

例年9月1日から翌年5月31日まで発売され、利用期間は10月1日から翌年6月30日までとなっています。年末年始と年度始め、ゴールデンウィークなどの繁忙期は利用除外日です。

値段は、有効期間が5日間のもので8万4330円、7日間のものが10万4650円。12日間のもので13万0320円となっています。また、どちらか1人、もしくは2人ともが70歳以上である場合には、「シルバー用パス」としてそれぞれ5000円安くなります。

この情報だけを見ると、使い方によってはかなりお得な切符である、というのがピンとこないかもしれません。

■グリーン車が利用できるフルムーンパス

お得なことで知られている「青春18きっぷ」は5回利用できて1万2050円という価格設定ですし、2人分でも2万4100円。そう考えると、フルムーンパスはかなり高価です。

しかし、フルムーンパスを使いこなせば、数万円お得に快適な旅をすることができるのです。

青春18きっぷの場合、利用できるのは日本全国のJRの普通・快速列車の普通車自由席、およびBRT(バス高速輸送システム)、ならびにJR西日本宮島フェリーです。乗車可能な区間は広範に渡るものの、普通・快速列車のみ対象のため快適性は期待できません。いわば時間をかけてでも安価で遠くへ行くための切符といえるでしょう。

「元気が有り余っている若者なら長距離移動でも青春18きっぷがおすすめですが、はたしてナイスミドルのみなさん、東京―名古屋でも鈍行でいったら約6時間かかりますよ。大人の旅を楽しむなら断然でフルムーンパスなのです」(東氏)

フルムーンパスの魅力はなんといっても、グリーン席に自由に乗車できることですね。

春の新幹線と富士山
写真=iStock.com/blanscape
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/blanscape

さて実際のところ、どれくらいお得になるのでしょうか。

例えば夫婦2人で東京から広島へ旅行に出るとします。正規の料金ですと、新幹線の往復の乗車券と特急券(グリーン車利用)を合わせると2人で10万2040円になります(通常期・往復割引適用の場合)。フルムーンパスは2人で8万4330円(一般5日間用)なので、約2万円安くなります。さらに現地でJRの路線にも乗車できます。

フルムーンパスはのぞみ号・みずほ号には乗車できないものの、新幹線を乗り継げば、東京駅から博多駅まで6時間弱で行くことも可能です。しかもグリーン車です。

ちょっと足を延ばして博多まで行くとします。

例えば、東京駅を出発し京都で2泊、そこから博多へ向かって2泊し東京へ帰るという5日間の夫婦二人旅を想定しましょう。

通常の新幹線グリーン車を利用して最短ルートで移動する場合にかかる料金を計算してみますね。(全て大人・通常期で計算)

東京駅から京都駅までは、のぞみ号に2時間10~20分程度乗ることになります。料金は1万680円(グリーン車)です。次いで、京都から博多へ向かう場合には、またのぞみ号に乗って2時間40~50分程度かかります。料金は1万2420円です。博多から東京まで帰る際には、のぞみ号で5時間程度。料金は1万6570円になります。そして、これに東京ー博多の往復乗車券2万5340円が必要となります。

足し合わせると6万5010円。ただし、これは1人分の切符です。2人分の場合は、13万320円にもなります。

フルムーンパス2人分との料金の差は実に4万5690円にもなります。

フルムーンパスではのぞみ号に乗車できないのが気になるところですが、道程はどうなるのでしょうか。

まず、東京駅から京都駅まで、ひかり号に乗ることになります。所要時間は2時間40分程度です。京都駅から博多駅までもひかり号やさくら号などに乗車します。乗車時間は2時間40分程度です。

東京―博多間を乗り換えなしで移動できるのぞみ号に乗車できないため、博多駅から東京駅まで帰る際には乗り換えが必要となるのが難点ですが、こちらも意外にも所要時間に差はありません。博多から新大阪駅まで2時間30~40分さくら号に乗車し、さらに新大阪駅でひかり号に乗り換えて3時間程度です。乗り換え時間を考えると、博多駅から東京駅までは最短6時間程度だと考えられるでしょう。

最も長い東京―博多間の移動でも、所要時間の差は1時間程度で済んでしまいます。東氏は「岡山で新幹線を降りて、マリンライナーで瀬戸大橋を渡って四国に行ってお寺を巡るのも夫婦の旅としてはオツです」と話す。

■短い区間でも気軽にグリーン車利用

フルムーンパスは、価格を気にせず短い区間でも気軽にグリーン車を利用できるのが最大の魅力です。予定を立てず、気の向くまま下車駅を決めて降りてみるのもいいでしょう。

「オトク切符とインターネットで検索するとたくさん出てくるので、旅のスタイルにあった切符をチョイスするのが最高な旅行への近道です」(東氏)

夫婦2人でグリーン車に乗り、ゆったりぜいたくな旅をしてみるのはいかがでしょうか。

※2020/03/27 0:05追記:一部料金表示に誤りがあったため、修正しました。

(フリーランスライター 梁 観児)

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