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「すべてメールが前提」の人がリモートワークで成果を出すための7つのポイント

プレジデントオンライン / 2020年3月24日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BigCircle

新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務やリモートワークを強いられている人が増えている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「フリーランスのライター・編集者として19年ほどリモートワークを実践してきた。成果を出すためのポイントは7つに整理できる」という──。

■「働き方」に変化が見え始めているのはよい兆し

依然として新型コロナウイルスに関する騒動が続いている。そんななか、個人的に「よい兆しだな」と捉えている動きがある。それは、従来どおりのやり方に縛られてばかりで、なかなか変わらなかった「働き方」に変化が見え始めていることだ。

多くの企業でリモートワークが推奨されるようになったし、出社するにしても時差通勤で満員電車を避けたり、業務状況に応じて「今日は職場に出よう」「今日は在宅で仕事を進めよう」などと選択できたり、働き方を柔軟に選択できるケースが増えているとも聞く。

テレビのニュースやワイドショーでは「お宅訪問」企画が盛んに放送され、親が家で仕事をしている脇で子どもたちがはしゃいでしまい、「仕事にならないです~」なんて困っている様子なども報じられているように、リモートワークがいきなり導入されたことによる混乱はもちろんあるだろう。たしかに、今はまだ戸惑いを感じている人、うまいやり方を模索中の人も少なくないと思うが、今回のコロナ禍への対応を通じて「通勤しなくても仕事はできる」「皆がその気になって足並みを揃えれば、リモートワークでも意外に問題なく業務は進められる」といった手応えを感じた人も、また多いのではなかろうか。

■リモートワーク導入で生産性が向上する

建設現場などで特定の技能を提供する職人やオペレーター、工場や倉庫、物流現場で実際に手を動かさないと仕事にならない人、そして小売店や飲食店といった接客業に従事している人はさておき、ホワイトカラーの業務の大半はリモートワークでも何とか対応できるはずである。

いや、むしろリモートワークのほうが「成果」が目に見える形になり、生産性は向上するのではないか、とすら思う。

従来のようにオフィスで働いていると「仕事しているふり」ができるため、たとえば部下を評価するような場面では「とりあえず真面目に仕事をしているように見える」や「かわいげがある」のような、感覚的な基準で働きぶりを判断してしまうこともあるだろう。ところがリモートワークとなれば、オフィスでの印象といった感情的要素がそぎ落とされ、成果物でのみ判断される割合が増えるだろうと考える。要するに、サボりづらくなるということだ。

その他、満員電車での通勤から解放されることで確実にストレスは軽減するし、伝染病に感染するリスクも減少するに違いない。オフィスにいれば、苦手な先輩、相性の悪い同僚とイヤでも顔を合わせることになるが、リモートワークであればそうした場面は激減するので、対人関係の悩みも軽くなると思われる。

■リモートワークの成功は「信頼関係」にあり

少々強引にリモートワークの効能を語っているように映るかもしれないが、決して適当なことを述べているわけではない。私はフリーランスのライター・編集者として、かれこれ19年ほどリモートワークを実践してきており、その勘どころについて十分に理解している。そんな私が、リモートワークで仕事をこなし続けられたポイントを紹介していこう。

現在、仕事に関する電話は2日に1回程度しかかかってこないし、自分からかけることはほとんどない。スマホは持っておらず、仕事はPCのみで行っている。また、LINEやフェイスブック・メッセンジャーといったチャットツール、SlackやSkypeなどのビデオ会議用ツールを使ったことは一度もない。業務に関する連絡は、緊急対応がどうしても必要な場面でやむを得ず電話を用いる以外、すべてメールだ。

そして、逆説的な話になってくるのだが、リモートワークをうまく進めるにあたり、もっとも重要なことは何かといえば、これに尽きる。

自分の人間性が仕事相手に認められており、互いに良好な信頼関係を構築できていること。

「リモートワークだからこそ、チャットツールやビデオ会議ツールなどを用いて密な連絡を取ることが必要」という発想ではなく、「密な連絡を取らなくても相手のことを察したり、相手の期待に応えようという気持ちに自然となれたりする、信頼関係を築くことこそがリモートワーク成功のカギ」と、私は考えている。

■外注先として、商流の末端に位置する場合

私のようなフリーランスが制作系の案件に関わる際、打ち合わせをしたり、相談をしたりするのはクライアント企業の本社にいる正社員なのだが、日々の業務を回していくにあたっては、クライアント企業の子会社や外注先である制作会社のスタッフと頻繁にやり取りするケースが非常に多い。

たとえば、広告代理店が手がける某社のPR企画でウェブコンテンツを制作することになり、案件の企画立案や全体の方向性に関わるのは広告代理店の正社員だが、実際のコンテンツ制作は子会社が担当し、日々の更新業務で窓口に立つのは子会社の契約社員……みたいな構造である。ときにはその配下に、記事の校正を担当するフリーランスであるとか、子会社が発注している地方の孫請け制作会社などが存在することもある。

そうした場合、私の立場はどのようなものになるか整理してみよう。

クライアント企業の正社員 > その子会社の正社員 > 同子会社の契約社員 > 地方の制作会社の社員 > 私

まあ実際は、クライアント企業の正社員と私はそれまでに何度も仕事を一緒にしていたり、飲みに行くような間柄だったりするケースも少なくないので、プロジェクト内で存在感や影響力をそこそこ発揮できる場面も多いが、商流としては建前上、末端に位置する。

■一度も会ったことがない相手との仕事

コンテンツ制作の多重下請け構造は今に始まった話ではないし、その是非を問いたいわけでもないのだが、どうしても関わる人が多くなるのは事実だ。クライアント企業の正社員、子会社の正社員とは会議で定期的に顔を合わせるが、子会社の契約社員はプロジェクト立ち上げ時に一度会っただけ、孫請け制作会社のスタッフや他のフリーランスに至っては会ったこともない、という事態は往々にして起こる。

そうなると互いに何者かわからないため、メールのやり取りにしてもまったく心が通わないものになる。たとえば、私が原稿を送り、相手が最終確認をしてネットに公開する、という業務フローだとしよう。相手が私のミスを見つけたり、私に寄せられた相手からのオーダーがあまりにも的外れだったりすると、互いに「何こいつ、バカじゃねーの、チッ」と思い合っている状況に陥る可能性が高くなる。相手からメールが届くだけで「どうせまた、ろくな連絡じゃないんだろ……」と思うようになり、仕事に楽しさが見いだせず、凡庸なアウトプットしか生み出せなくなる。

■相手を思いやる気持ちが仕事の質を変える

一方、過去に直接会ったことがあり、互いに顔も知っていたとしよう。それだけで、相手に対して抱く感情は変わってくる。さらにもう一歩進んで、互いの趣味嗜好や生活状況を知っていたなら、相手のことを慮る気持ちすら湧いてくるものだ。たとえば、シングルマザーで元夫が子どもの養育費を送ってくれず生活が大変であるとか、闘病生活から復帰したばかりでまだ仕事の感覚が戻っていないとか、釣りが趣味で次の週末は友人とアウトドアで過ごす約束をしているとか、一見気難しそうに見えるが実は愛猫家で気の優しい人物であるとか、親の介護をしながら仕事をしており定時に必ず退社しなければならないとか、相手の素顔をほんの少しでも知っていたら、人間関係にも深みが生まれてくる。

相手を思いやる気持ちは、確実に仕事の質を変える。当然、メールのコミュニケーションも変わり、「修正に関するオーダーを送りました。ご対応ください」「オーダー通りに対応しました。ご確認ください」的な定型文だけの無味乾燥なやり取りにはならない。よりよいアウトプットにつなげるにはどうすべきかを考えるようになり、相手の業務が進めやすいように配慮する姿勢が自然と持てるようになる。その結果、前向きなメールのやり取りができるようになれば、リモートワークのやりやすさは格段に向上する。

■リモートワークは人間関係などの問題をあぶり出す

ここまで述べてきたように、リモートワークが円滑に進められるかどうかは、ツールをうまく活用すること以上に、どのようにして相手と信頼関係を構築していくかにかかっている。

同じオフィスで働いていた者どうしであれば「一定の信頼関係を築いている」と安直に考えがちだ。しかし、いざ互いに離れて業務にあたってみると、想像以上に噛み合わない場面に遭遇することがある。他の人とはメールやビデオチャットでうまく業務が進められるのに、この人とは同じ方法でやり取りしても噛み合わないな……と感じることもあるだろう。

要するに、リモートワークは「実は信頼関係が築けていなかった」「業務に関連するコミュニケーションに潜在的な問題があった」ことがあぶり出されやすい働き方なのである。

■リモートワークを円滑にするメール術

それでは最後に、リモートワークを円滑に進めるためのポイントを列挙していこう。全部で7項目だ。以下の事柄を実践できれば、信頼関係を深められ、成果物の質を高めることができるに違いない。

【1】メールの返信、修正対応はすぐにする

一時期「メールの返信をしないのがカッコイイ」的な文化が主にクリエーター界隈の先端的な方々の一部で流行っていたが、これは大多数の労働者にとって非常に煩わしく、迷惑な姿勢である。仕事なのだからレスはできるだけ早くするべきだし、アウトプットの修正を依頼されたら可能なかぎり即時対応するべきである。相手はあなたの反応を待っていることを忘れてはならない。

【2】関係のない人はメールの宛先から外す

つい心配になって関係者全員を宛先に入れてしまいがちだが、結局、以降のメールでやり取りするのは2~3人程度……なんてケースは多い。ならば余計な人に無駄なメールを送る必要はない。本当に必要な人だけでやり取りをすることにより、妙な忖度も働かなくなり、業務の遂行に集中できる。

【3】そっけない文章は書かないようにする

この項目は否定する人もいるだろう。「ビジネスメールなのだから、要件だけを端的に伝えればよい」「『相手がどう思うか』に配慮するなんて時間の無駄。いちいち気にしていたら文面が仕上がらない」といった反論が来そうだ。

だが「修正した原稿はいつ送っていただけるのですか? こちらは以降の対応ができず、困っています」などとつっけんどんなメールが来ると、受け手は萎えてしまう。シビアな状況や怒りを伝えるには、そうした文面でも効果はあるだろう。しかし、双方の怒りやいら立ちがぶつかり合うようになると、その業務へのモチベーションは劇的に低下し、結局、案件全体の品質が下がってしまう。

私の仕事相手にも、実際に会うと非常に感じがいいのに、メールの文章があまりにもそっけなく、いつも「怒っているのだろうか」とこちらを不安にさせる人がいた。実際のところ、その人は怒っているわけではなく、自分では普通の文面だと思っていたようなのだが、受け取る側はメールが届くたびに戦々恐々だった。

たとえば上記のような内容のメールであれば、「修正版の原稿、いつ頃お送りいただけそうでしょうか? 拝読するのを楽しみにしておりますので、なにとぞお願いします! スケジュール的には……ちょっとヤバいです(笑)」といった調子で綴ると、まったく印象は変わる。

「面倒くせぇ。そんな配慮いらねーよ」と言いたくなる向きもあるだろうが、相手の顔が直に見られないリモートワークでは、ちょっとした配慮を怠ると、途端に齟齬が生じることがある。

■「いつも忙しい人」と相手に思わせる

【4】周囲の目がないのだから、業務はやりたいようにやって構わない

別に全裸で仕事をしてもいい。酒を飲みながらやってもいい。眠いときには遠慮なく仮眠を取っていい。締め切りまでに成果さえ出せばいいのだ。

【5】具体的な見通しを示したうえで、忙しそうな空気を出し続ける

とんでもない量の業務を抱えていることを軽くアピールしつつ、「今すぐの対応は無理ですが、今日の17時までには送ります!」などと見込み時間を伝え、「あなたの仕事以外にもいろいろあるんです。私には(キリッ)」的な雰囲気を常に出し続ける。そうすると、相手は「この人はいつも忙しいのだな」と認識してくれて、余計な探り合いを回避できるようになる。

なお、ここで重要なことをひとつ付け加えるなら、相手を待たせているような状況下では、SNSへの投稿を控えるほうがいい。現在、私はツイッターを自分で投稿することはなく、管理をわが社の社員に任せているが、かつては締め切り当日、そして締め切りをトバしてしまった場合には一切ツイッターに投稿しないようにしていた。たとえ1回ツイートするのに20秒しかかからなかったとしても、仕事相手は「この野郎、ツイッターに投稿する暇があるんだったらさっさと原稿を送ってこいボケ」と思ってしまうものである。

■この機会に、リモートワークに慣れておこう

【6】週1程度で誰かのオフィスに間借りするなど、自分以外の人間がいる環境で仕事をしてみる

これはリモートワークというか、フリーランスの働き方になるのだが、一人で仕事をしているとたまに淋しくなったり、ついついダラけてしまったりするもの。だから1週間に1回ほど、自分以外の人間が周囲にいる環境で仕事をしてみるとよい。

スタバで仕事をしろ、といった話ではなく、手が空いているときには雑談できる人がいるようなオフィスの1席に間借りするのだ。オフィスの持ち主や、そこで働く仕事相手との信頼関係があるのなら、あなたの来訪をきっと歓迎してくれるだろう。ただし、缶ビールやお菓子などの手土産は必須である。

【7】ときには、午前3時などとんでもない時間にメールを送ってみる

上述した「5」にも関連するが、「こんな遅い時間まで、ウチの仕事を頑張ってやってくれているんだ」と相手に思ってもらえると、親身な応対をしてくれるなど一定の効果はある。さらに言ってしまうと「この人は、ここまでやらないと終わらないほどの仕事量をさばいているんだ」と思ってもらうことにより、締め切りから遅れてもギリギリまでせっつかれないなど、プレッシャーが軽減された状態で業務に集中できる……といった効能も期待できる。

以上、昭和の香りが漂う浪花節的なマインド、体育会じみたマインドを感じたかもしれないが、仕事なんてものは得てして、感情ひとつで取り組み方やアウトプットの質が変わってしまうものなのである。

リモートワークと聞くと、スタイリッシュで最先端の働き方に見えてしまうかもしれないが、実際は「内職」のようなものであり、泥臭く「私を信用してください!」と上司や発注主にアピールし続けるような姿勢が求められる業務スタイルなのだ。オフィスワークとは異なる気づかいが求められる分、面倒に感じるかもしれない。だが、感染予防、満員電車回避、ストレス軽減など、メリットも多い働き方なので、この機会に慣れておいて損はない。

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【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・リモートワークをうまく回すためのコツは、業務フローの精査やチャットツール導入といった仕組みづくり、環境づくりと共に、仕事相手との信頼関係を深めておくことだ。
・リモートワークはオフィスワークとは異なる気配りが求められる場面も多いので、面倒に感じるかもしれない。しかしメリットも多いので、この機会に慣れておくとよい。

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中川 淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
ネットニュース編集者/PRプランナー
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。

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(ネットニュース編集者/PRプランナー 中川 淳一郎)

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