「設立コストは約1万円」会社員でも低リスクで起業するテクニック
プレジデントオンライン / 2020年3月28日 11時15分
※本稿は、持田卓臣『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「事業承継」という新しい起業のかたち
起業と言うと、一般的には新しい会社をつくることをイメージすると思います。私自身もそうでした。しかし、いろいろな方とお話ししている中で、すでに存在している会社を引き継ぐ、すなわち「事業承継」というのも1つの起業のかたちであるということを知りました。
日本には現在、約9万社の「休眠している企業」があると言われています。さらに、経営者の高齢化も問題となっています。経営者が高齢化して引退を考えているけれど、引き継ぐべき後継者がいないという企業が増えてきているのです。
こうした問題に対処するために、最近では国も積極的に支援をしており、「事業承継」をする際に使うことのできる補助金制度もできたそうです。こうした補助金制度の利用や、事業承継に関する実際のところについて、専門家に話をうかがうことができました。
■国は「事業承継」をすすめたがっている
以下、事業承継・M&Aサービスを手掛けるスクエアワン株式会社の代表であり、同時に司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所を経営する石川和司さんのお話です。
昨今、企業の廃業数が増加しており、ここに私は問題意識を持っています。そして、この問題に対して、事業承継を使って、廃業になりそうな企業を誰か別の人が承継することが1つの答えになるのではないかと考えています。
政策金融公庫と話をしていると、事業承継で資金調達をするお手伝いは積極的にやりたいと考えているそうです。新しく起業するのではなく事業を引き継いで、そこで必要な資金を融資するということを、国も公庫も含めて積極的にやっていきたいという流れがあります。
明らかに廃業件数は多くなっている一方、なかなか新規の起業が増えるような社会・経済の状況でもないとは思います。けれど、そんな状況だからこそ、廃業する人と、起業したい人をマッチングするような信頼できるプラットフォームをつくることができれば、社会的にも意味があるのではないかと考えています。
■サラリーマンが買える会社はなかなか見つからない
ただ、現状だと、なかなかこのマッチングは難しい。商工会議所ですとか、事業引継ぎ支援センターですとか、公的な機関はいろいろありますが、こういったところで扱われるのは買い手がたくさんいるような、事業価値の非常に高いものくらいです。それこそ、サラリーマンの人が副業で起業しようというときに、買えるような会社は出てきません。
ウェブサイト上で事業の売り手と買い手をマッチングするサービスはいろいろありますが、これから起業しようという人がいきなり手を出すにはリスクが大きいと感じています。本当にそこに書いてあるだけの事業収益力があるのか、簿外負債はないのか、重要な従業員がやめないのかなど気になることは多々あり、それだけのリスクを負うくらいなら、まっさらな新しい会社をつくるほうがいいんじゃないかと思うのです。
■休眠会社を探すには士業のネットワークを活用せよ
ただ、そういうリスクへの対処や、情報に対する信頼性において、私たちが持っている士業のネットワークを使うと解決できるのではないかと考えています。私たち士業のネットワークの中では、廃業を考えている会社や、休眠している会社がたくさんあります。士業、特に税理士さんのところにそういった会社の情報は多い。しかも、税理士さんならその会社の事情をよくわかっていて、数字もわかっているから、簿外債務などのリスクは小さい。
そうした会社の中から、起業したい人に「この会社はどうですか」と紹介することはできると思っています。
例えば、宅建業の免許を持っている不動産管理会社があって、もうやめようと思っている。一方には、不動産会社をこれから始めようと思っている人がいる。1から会社をつくって、宅建業の免許を取ろうと思うと時間と手間がかかります。それならば、やめようと思っている会社を承継すればいい。こういった事業許認可が必要な事業というのは、事業承継のメリットがわかりやすいと思います。開業準備に必要な時間と手間をかなり短縮して、スタートダッシュができるようになるわけです。
■会社を買えば「早く」「安く」始められる
休眠会社を買うというニーズも今後、増えると思っています。普通に株式会社をつくろうとしたら、登録免許税が15万円で、公証人の認証が必要になってくるので、それを普通の人がやると、定款をつくって4万円で、公証人に5万円払うので、計9万円。だから、最低でも実費で24万円がかかります。加えて、司法書士などいろいろな専門家に書類をつくってもらうと、手数料が10万円弱ぐらいかかりますから、なんだかんだ34万~35万円ぐらいです。
一方で、休眠会社を買って、最低でも役員変更だけで済めば、登録免許税などの実費は1万円で収まります。つまり、設立したときの実費のコストは圧倒的に安く済むわけです。そして、何より既存会社ですので、すでに銀行口座を持っています。そのため、銀行口座開設までの開業準備時間を短縮してスタートできるのもメリットの1つでしょう。
■リスクの小さい起業ができる社会へ
さらに言うと、私は今後、「会社を買って始める」だけでなく、「会社を買って、始めてから支払う」という手もあるのではないかと考えています。どういうことかと言うと、前のオーナーさんや社長さんに手伝ってもらって、まずは休眠している会社を動かして、始めてみる。そして、そこで得た利益から支払うというかたちです。
日本の起業率はずっと低いままですが、さらに今の状況では、ますますリスクを取るような人が減っていくと思います。だからこそ、リスクの小さいかたちで起業ができるような、そういう環境をつくっていければと考えています。
以上が石川さんのお話です。起業に付きまとう金銭面のリスクについて、こうした専門家の力を借りることで、かなり軽減できることがわかったと思います。
私自身、補助金や助成金と言うと、とにかく面倒というイメージがあり、あまり活用したことがなかったのですが、今回のインタビューを通して、本音で「もっと早く知っておきたかった」と思える情報がたくさんありました。
これから起業をするサラリーマンの方は特に、早いうちからこういった情報を有効活用すれば、より安心して事業に取り組めるのではないかと思います。
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ベンチャーネット代表
1978年、神奈川県川崎市生まれ。早稲田大学商学部、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。大学卒業後、ヒューレットパッカード社にてITコンサルタントとして従事。2005年、業務効率の向上や新規事業立ち上げなどのITコンサルを行うベンチャーネットを創業。近年は、企業全体の業務効率化を図るためのRPAコンサルティング事業も行っている。
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(ベンチャーネット代表 持田 卓臣)
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