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リターンの少ないクラウドファンディングに出資する人の心理

プレジデントオンライン / 2020年4月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

地方自治体が「クラウドファンディング」での資金集めに成功する例が増えている。面白法人カヤックの柳澤大輔CEOは、「クラウドファンディングを成功させるために必要なのは、まず話題性、そして共感。地方自治体や地域のプロジェクトはとても相性がいい」という――。

※本稿は、柳澤大輔『リビング・シフト 面白法人カヤックが考える未来』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■クラウドファンディングで重視されるのは「ワクワクするか」

少し前の話ですが、大分県別府市の「湯~園地」プロジェクトがクラウドファンディングで3300万円以上を集めて話題になりました。これは別府市が「遊べる温泉都市構想」の第一弾として「湯~園地」計画の動画を発表し、「YouTubeで100万回再生された際には実現します」と公約したところ、あっという間に100万回再生を突破。その実現のための資金を募ったものです。目標金額1000万円に対して三倍以上の金額を集めたわけですから、大成功です。

これまでのように銀行から借り入れたり、ファンドから投資してもらうのではなく、クラウドファンディングで資金調達を行う事例が増えています。

クラウドファンディングで寄付するとき、多くのユーザーが見るのは、そのプロジェクトが面白いか、ワクワクするか、共感できるかということです。銀行やファンドが担保や将来キャッシュフローを見て判断するのとは、ちょっと違います。

■クラウドファンディングではリターンより共感が先立つ

これは実は、地方自治体や地域のプロジェクトがお金を集めるために、とても相性のいい方法なのではないかと思います。なぜでしょうか。

それは、クラウドファンディングを成功させるために必要なのは、まず話題性、そして共感だと思うからです。より正確に言うなら、ひとりでも多くの人に共感してもらうための手段として、話題性があるということかもしれません。

何度か訪れたことがあって、仲よしの人の顔が何人も思い浮かぶ。そんな地域が、もしも台風や災害に遭ってしまって、災害復興の資金をクラウドファンディングしていたら、きっと寄付したいと思うのではないでしょうか。それは金銭的なリターンのためというよりは、まず地域の人たちへの共感があり、何かしたいという思いが先に立つのだと思います。

■資金調達は「大きな金融機関」から「無数の個人」へ

インターネットというのは、小さなものを広く集めるのが得意です。すごくマニアックなプロジェクトがあったとして、地元の金融機関から3000万円出資してもらうのは難しいかもしれませんが、全国津々浦々を探せば、同好の士や共感してくれる人がいて、3万円ずつ1000人から集めることはできるかもしれません。大分県別府市の「湯~園地」プロジェクトには、3638人のパトロンが集まったそうです。

つまり、リビング・シフト(東京から地方への移住)によって、新たなビジネスモデルが生まれる一方で、ビジネスの血液となる資金調達のあり方までもが、少しずつ変わってきていると言えるのではないでしょうか。その背景にあるのは、大きな金融機関による貸付や投資から、無数の個人との関係性へのシフトです。これまでも脈々と続いてきた、そうした関係性が、リビング・シフトによって、つなぎ合わされ、強化されていく。そんな仮説を持っています。

■ふるさと納税も「共感」に支えられた制度だ

ふるさと納税なども、本来は、こうした関係性に基づいた地方創生のための資金調達プランだったはずです。カニや牛肉など豪華な返礼品合戦になってしまって、本来の趣旨からやや離れてしまっていますが、本来は、応援したい地域を個人が選んで納税し、その税金の使われる先を見届けたり、長期的な関係を築くためのものです。

その地域に定住していなくても、納税できる。納税するためには、本来、その地域のことを理解しようとするはずです。どんな魅力があるのか、どんな課題があるのか。どんな首長がいて、どんな政策がとられているのか。もともとその地域の出身だったり、かつて住んでいたから、応援の意味を込めて納税するという人もいるでしょうし、調べるうちに気になって、いつか訪れてみようという人もいるかもしれません。

つまり、個人が自分の好きな地域、応援したい地域を選んで出資(納税)する。そのベースには共感と関係性があります。

ちなみに、行きすぎた返礼品合戦に関する指摘を受けて、改善に向けた制度変更や自治体への要請が進んでいますから、今後は、本来の趣旨に沿ったプランが増えていくのではないでしょうか。返礼品目的だけではない、より関係人口を深め創出したり、直接的な地域へのより直接的な貢献ができるようなプランも、この枠組みの中で生まれてくるのではないかと思います。

■リモートワークで地域との関係性が生まれる

話を元に戻します。そうした潮流の中で、リモートワークや多拠点居住というのは、地域との関係性を育むための重要なツールになってくると思うのです。

柳澤大輔『リビング・シフト 面白法人カヤックが考える未来』(KADOKAWA)
柳澤大輔『リビング・シフト 面白法人カヤックが考える未来』(KADOKAWA)

多くの自治体がリモートワークやワーケーションやお試し移住の誘致を促進しています。ちょっと海のそばで仕事したいから、たとえば福岡県糸島市のコワーキングスペースで一週間リモートワークする。滞在する間に、地元の人と仲よくなる。すると帰ってきてからも、ニュースで糸島のことが出てくると、ちょっと気になってしまう。いろいろな情報がアンテナにかかるようになってきて、さらに興味が出る。そんな関係性を育むきっかけになったりします。

もちろん、ただその場所を旅行するだけでも関係性は生まれます。ただリモートワークやワーケーション、多拠点居住というのは、日常に近づく分だけ、その地域の本来の姿を理解するのに向いているのかもしれません。

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柳澤 大輔(やなさわ・だいすけ)
面白法人カヤック代表CEO
1974年、香港生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。鎌倉に本社を構え、鎌倉からオリジナリティのあるコンテンツをWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に発信する。著書に『面白法人カヤック会社案内』『鎌倉資本主義』(ともにプレジデント社)、『アイデアは考えるな』(日経BP社)などがある。ユニークな人事制度(サイコロ給、スマイル給)や、ワークスタイル(旅する支社)を発信し、「面白法人」というキャッチコピーの名のもと新しい会社のスタイルに挑戦中。2015年株式会社TOWの社外取締役、2016年クックパッド株式会社の社外取締役、2019年INCLUSIVE株式会社の社外取締役に就任。

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(面白法人カヤック代表CEO 柳澤 大輔)

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