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なぜ、日本は新型コロナに強かったのか

プレジデントオンライン / 2020年4月1日 15時15分

■日本の新規感染者数は圧倒的に少ないという事実

日本政府の新型コロナウイルスへの対策は不十分だったのだろうか? たしかにダイヤモンド・プリンセス号の対応に関しては、「公衆衛生の危機対応として、教科書に載るような悪い例」と米有力紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が報じるなど、国内外から大きな批判を浴びた。しかし、ふたを開けてみればどうだろうか。韓国、イタリア、イランの感染者数・死亡者数が目立ち、ヨーロッパ各国も軒並み日本よりも深刻な状況だ。日本は現状、被害を最小限で食い止めたという見方を、元外務省主任分析官の佐藤優氏が示す。

「日本政府の対応ですが、私はスピーディーに行われていたと見ています。たとえば、WHOは2020年1月30日に、新型コロナウイルスを世界的な緊急事態と宣言しています。日本はWHOの決定を待ってから動くことが恒常的ですが、それよりも早く手を打っている事例もあります」

あまり表には出ていない話だというが、発生当初、医務官を含む日本大使館員が北京から武漢へすぐに駆けつけた。チャーター機を飛ばして邦人を帰国させるという動きがあったという。

※WHOは17日のイランの新規感染者数を0としている。

また、20年1月28日には「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」が公布された。しかし、法律では「公布の日から起算して10日を経過した日から施行する」と決められているため、施行は20年2月7日となるはずだった。

「1月30日の参議院予算委員会で、鈴木宗男参議院議員が、加藤勝信厚生労働大臣と安倍晋三総理に、『人の命に関わることなのだから、速やかに施行すべきではないか』と質問をしました」

すると翌日の朝8時すぎ、首相官邸から鈴木宗男氏のもとに、「前倒しして、明日(2月1日)から施行する」と連絡があったという。この政令が施行されたことで、検疫官が必要と判断すれば、感染が疑わしい人に診察や検査を受けさせる、従わない人には罰則が科されることになったのだ。

「この対応は評価すべきです。日本政府には内閣法制局という法の番人がいる。今回の政令には罰則があります。それを出すときは、国民に周知徹底期間を持たせないといけないと決まっている。その政令を知らない人にまで罰則を科すことになってしまうからです。これは民主主義国としては当然のことです」

内閣法制局は簡単に突破できる関門でもない。それを動かした政府の功績は大きいと佐藤氏は話す。

■危機的な事態をパンデミックにしないために

地理的にも中国に近く、20年2月下旬までは相対的に見て世界でも感染者数が多かった日本。しかし、20年3月に入り、急激にヨーロッパでの感染者数が増えだし、日本を抜き去った。それでもなお、日本政府の対応は批判される。

「ロシア科学アカデミー心理学研究所のアレクサンダル・ヴォロビヨフさんによると、感染症蔓延時の心理はマスコミに左右されるそうです。

流れとして外国人嫌悪のムードが当然出てきていますが、これは恐怖感をあおるようなマスコミの情報に対する一種の防衛反応です。

私は普段テレビを見ませんが、先日病院に行ったついでに待合室のテレビでワイドショーを見ていたら、やはり私でも怖くなってくる。それから映画やドラマの影響もある。感染症で人類滅亡みたいなカタストロフィーをテーマにした作品がたくさんあるでしょう。そういったものでみんな感染症の怖さが刷り込まれているのです。

本来、ショッキングな内容を避け、危機的な事態であってもパンデミックを引き起こさないためにどういった行動を取るべきか、それを伝える必要がある。しかし、マスコミはそれができていない」(佐藤氏)

日本政府は20年3月5日、事実上中国人と韓国人の入国を制限した。今後求められるのは現在の感染拡大地域であるヨーロッパからの渡航制限だろう。日本の対応は間違っていなかったと国民が納得できる結果にするためにも、スピーディーな対応を期待したい。

(プレジデント編集部)

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