小4からの「ガチ受験」より小6からの「ゆる受験」が向く子の条件

プレジデントオンライン / 2020年3月26日 9時15分

プレジデントFamily2020年春号

中学・高校受験はいつから準備をすればいいのか。この4月から新5年生になる娘をもつプレジデントFamily編集部の森下和海さんは「いま首都圏では『第3次中学受験ブーム』が起きていますが、焦らないほうがいいようです。塾や学校に取材した結果、『小6からのゆる受験』という選択肢も考えたいと思いました」という――。

※本稿は、『プレジデントFamily2020年春号』の特集記事の一部を再編集したものです。

■第3次中学受験ブーム到来でわが子を中学受験させるべきか

小学生の子供を持つ親は、この時期、わが子を中学受験させるべきか悩んでいるかもしれない。筆者にもこの4月から新5年生になる娘がいて、中学受験をさせるべきか揺れている。

通常、中学受験をする子は新4年生(3年生2月)には進学塾に入ることが多い。わが家の場合、「公文の宿題すら満足にやれていないのに、進学塾の宿題などやれないだろう」とその時は見送ってしまったが、ここに来て、やはり中学受験をさせたほうが子供の将来につながるのではないかと悩みだしてしまった。

なぜなら、首都圏において中学受験が過熱しているからだ。

森上教育研究所によれば2020年2月1日の首都圏の受験者数は4万1308人(2020年2月13日修正値)。少子化にもかかわらず、第2次中学受験ブームと呼ばれた2007年の4万3716人に迫る勢いだ(図表1参照)。まさに第3次中学受験ブーム到来である。

■都内の中高一貫校が相次いで「高校募集」を中止

その背景にあるもの。それは、大学入試改革の迷走により、わが子の大学受験の内容が不明になっていることに加え、大都市圏の私立大学に学生が集中する状況を改善するための「入学定員の厳格化」がある。

定員の厳格化は2016年に文科省が出した施策で、所定の枠を超えて学生を受け入れた大学は助成金がカットされる。定員8000人以上大規模私立大学では、2015年度以前は入学者が定員の1.2倍未満であれば助成金が交付されたが、16年度1.17倍、17年度1.14倍、18~19年度1.10倍と徐々に厳格化が進行してきた。

そのため、首都圏の人気大学に合格するのが非常に難しくなっている。「早いうちに手を打っておきたいと」と、大学付属の中高一貫校人気が高まっているのだ。

さらに、私立では豊島岡女子学園、本郷、公立では都立武蔵、都立富士などの中高一貫校が相次いで高校募集を中止すると発表した。高校受験の選択肢が狭まっている今、中学受験を選ぶのは賢明に思える――。

だが、わが子は本当に中学受験の勉強に耐えられるのか? いまから間に合うのだろうか? そうした不安や悩みを抱く親御さんのために、「プレジデントFamily」編集部では3月5日発売の2020年春号の特集「受験大混乱! わが子がトクする進路」内で、「将来輝く道が見つかるタイプ別進路マップ」というテーマで塾や学校の関係者を取材した。

■あとでラクをさせたいと大学付属校を受験させてはいけない

「大学進学でラクさせたい。高校受験の選択肢が少ないからといった理由で、中学受験をするんだったら、やめたほうがいいですよ」

取材を始めた筆者がいきなりダメ出しされたのは、中学受験専門塾「スタジオキャンパス」の代表・矢野耕平さんだ。「それらの理由は、いずれもネガティブですよね。そうではなく、中学受験に挑戦するなら前向きな理由ですべきです」という。

『プレジデントFamily』2020春号の特集は「受験大混乱! わが子がトクする進路」。子供のタイプ別に適した進学コースを解説

では中学受験をする、前向きな理由とは何だろうか。矢野さんはこう話す。

「受験を通じて、一生ものの『教養』と『学習習慣』が身に付くことです。中学受験では国・算・理・社をバランスよく学びます。その内容は小学校で習うレベルをはるかに超えて、高校レベルも扱います。深く広く勉強をした小学生は、見える景色が変わるのです」

入試では時事問題が出題されるので、ニュースにも詳しくなり、大人顔負けの視点や疑問点を持つようになる。さらに、中学受験で学んだ理科・社会の知識は、大学受験にも生きてくるため、大きなアドバンテージになるという。

「知的好奇心を刺激してくれる塾に出合うと、学びに目覚めます。その中で、自分で学習する習慣がついた子は、中学以降も伸びていきます」(矢野さん)

■中学受験の利点は、「教養」と「学習習慣」が身につくこと

そうして入学する中高一貫校では、同様に入試を突破した学力の高い生徒に対し、6年間をうまく使い指導するカリキュラムが組まれている。

「優れた大学進学実績を出す学校は、高校までの内容を5年間で終えて、残りの1年間を大学受験対策にあてています。また、大学付属校なら、受験勉強に時間を取られることなく、興味のある研究や部活、習い事に没頭することもできます」(矢野さん)

私立は英語4技能を身につけるための授業や留学制度が充実しているなど、グローバル化への対応も整っている学校も多い。親は、勉強や英語力は学校に任せて、課外活動など子供の個性や強みを伸ばす活動をバックアップすることで、高い英語力や高校までの課外活動の充実度が問われる海外大学進学も視野に入れられる。それだけ選択肢が増えるのだ。

■最大のリスクは子供を「勉強ギライ」にする親だった

一方、中学受験のデメリットとは何か。

まず、経済的負担の大きさだ。塾代が3年間で200万円~300万円。無事、合格すると私立の中高一貫校の場合は6年間の授業料600万円~700万円かかる。合計1000万円超も珍しくない。家計に負担がかかることを覚悟しなければならない。

子供を進学塾に入れる多くの親はこの塾費用に関しては特に問題はない。実は、中学受験の最大のデメリットは、経済的サポートをする「親の言動」が原因となって起きているのだ。

それは「受験勉強で勉強ギライにしてしまうこと」と矢野さんは言う。

中学受験人気の高まりから、競争は激化し、受験生は大変な勉強量をこなしている。進学塾通いは、先述の通り、通常新4年生(3年生の2月)から始まり(早い人は低学年から)、5、6年生で勉強時間はぐっと増える。長期休暇には、1日10時間以上勉強することもザラだ。問題は、それを見守る親の態度だ。

「子供の成績が伸びない時、宿題をイヤがってやらない時、お子さんにどんな言葉をかけるのか。できないところばかり見て親が怒っていたら、間違いなく勉強ギライになります」(矢野さん)

金を出す代わりに、口も出す。「勉強しろ、しろ」と小うるさい親は少なくなく、それが子供のやる気をそぐのだ。筆者もこの話を聞いて耳が痛かった。

筆者の娘はまれに公文の宿題をノリノリでやる日があるが、普段はお絵描きや弟との遊びに夢中になって、何度もやんわり勉強を促してもなかなかやらない。結局、筆者が「公文の宿題をやりなさい」という直球の言葉で10回くらい注意して、最終的には、雷を落としてしまう。娘は、怒られてしぶしぶ勉強する毎日だ。

■塾内テストが30点でも怒らずに、30点取れたことを評価

では、子供を勉強ギライにしてしまうリスクの高い親はどうしたらいいのか。矢野さんはこうアドバイスする。

デジタルタブレットを持つ母と娘
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

「大事なのは、勉強をやった日に褒めてあげることですよね。また、塾内テストで100点満点中30点だと聞いても怒るのではなく、30点とれたことを評価してあげる。そして、できなかった部分を一緒に見て、わかる楽しさを体験させる。親は、点数や偏差値、塾での順位にとらわれず、その子が昨日より今日、今日より明日、子供がほんの少しずつでも伸びているところを見つけて、評価し、学ぶ楽しさを肯定的に伝え続けられるか。ポジティブな姿勢を親が持てるかどうかが問われます」(矢野さん)

一度勉強ギライになると、その後の人生は厳しいものとなる。仮に私立中学に合格してもその後は伸び悩むし、公立中学へ進学して、高校・大学受験で挽回しようとしても、なかなか難しい。なぜなら、彼らはもう自主的には勉強しないからだ。多くの一流大学合格者が語っているように、合格の条件は「自学自習できること」だ。その根っこの部分を折るか、育てていけるか。それは、すべて親の言動にかかっているといって過言ではない。

■高校受験でトップ校を狙う方法もある。発達に合わせた決断が大事

勉強しろしろ、とうるさく言ってプレッシャーを与え「子供を潰す」ほどではないにしろ、問題ありの親も多い。

例えば、学習計画やスケジュール管理をすべてやる親だ。よかれと思って手を出すこうした親だと子供は指示がないと動けない子になってしまう傾向があるという。

「中高一貫校の先生の話では、中学1年生の夏休み後に伸びていく子と低迷する子に分かれるそうです。その差は、受験の時に自分で勉強してきたかどうか。最初は親が学習計画を立てたとしても、徐々に本人に任せていきましょう」(矢野さん)

教室で勉強する男の子
写真=iStock.com/Milatas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Milatas

とはいえ、実際は「自ら計画し、大量の勉強をこなす」ができる子はかなり限られる、と教育コンサルタントの松永暢史さんは言う。

「4年生時点で、賢くて精神年齢も高い子ならば、できるかもしれません。でも、成長がのんびりした子供は難しい。私は多くの親子の学習相談を受けてきましたが、成長に合わない促成栽培的な受験勉強をさせられて、ダメになった子をたくさん見てきました。親や塾ががんばって、実力にあわない進学校に合格させてしまった場合、入学後についていけなくなる可能性が高いです。忘れてはいけないのは、勉強はずっと続くということ。中学受験は見送り、高校受験でトップ校を狙う方法もあるので、発達に合わせた進路を選びましょう(『プレジデントFamily2020年春号』参照)」

■1年間の塾通いで合格できる学校に入れる「ゆる受験」という選択肢も

無理して受験させるのはよくない。だが、わが子が精神的に幼いタイプでも、地元の公立中学校が荒れているようなケースでは、やはり中学受験をさせたいという親も多いだろう。

そこで松永さんが提案するのは「ゆる受験」だ。

「小学6年生からの塾通いで、合格できる私立の中高一貫校を受験させるのです。これなら成長がのんびりな子も、受験勉強の弊害を最小限に抑えることができます」(松永さん)

塾に1年しか通わないということは、不完全な準備で中学受験に挑むということだ。4年生から塾通いしている子には、学力的にはかなわないだろう。4年生から塾通いをしている子たちは偏差値60の学校を受験するなら、偏差値40台、あるいは30台の学校を受けることになるかもしれない。それでも、発達に合わない受験勉強をさせて勉強ギライにしたり、中学校以降に学ぶ意欲をそいでしまったりするより、“後伸び”するエネルギーを温存できるからよいという。

「中学受験は、長い人生で見れば、あくまで通過点。余力を残しておけば、大学受験でいいところを狙うこともできます」(松永さん)

「ゆる受験」をするにしろ、王道の中学受験をするにしろ、学校選びには「子供の意思を反映してほしい」というのは、私立の雄・武蔵高等学校中学校の杉山剛士校長だ。

「入学後に伸びない子には、親が選んだ学校に行かされた子が多い。そういう子は学習意欲がわかず、やがて、うまくいかないのはすべて親のせいだと思うようになります。そうさせないためにも、最終的な学校選択は子供にさせましょう。誘導するのはOKです。行かせたい学校があったら、説明会や見学に何度か誘って連れていってみる。でも、本人に響かなかったら、やめる。何よりも子供の意思を大事にしてください」

(プレジデントFamily編集部 森下 和海)

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