竹中平蔵「かんぽ生命問題の根源は民主党政権にあります」

プレジデントオンライン / 2020年4月2日 15時15分

今後、日本郵政が復活するためには、株式売却と、海外戦略だ。(時事通信フォト=写真)

2019年、日本郵政傘下のかんぽ生命保険で不正販売問題が発覚した。同社は半年以上にわたって顧客に新旧契約の保険料を二重払いさせたり、特約の切り換えで済むにもかかわらず新契約を結んだりしたとされている。20年2月末時点で、累計2170件の契約で法令・社内規定違反が確認され、関与した郵便局の保険販売員などは1725人に上るという。07年に郵政民営化された日本郵政に一体何があったのか。民営化されたことで過度なノルマが生まれたのが原因との世論も飛び交う。だが、小泉純一郎政権下で郵政民営化担当大臣を務めた竹中平蔵氏が問題の根源を語る──。

■なぜ、むちゃくちゃな保険営業が起きたのか

かんぽ生命の不正販問題はなぜ起きたか。あれは郵政民営化のせいだと言う人がいますが、民間の保険会社ではあのようなことは起きていません。今は金利が下がっているからそもそも貯蓄型の保険は売れないのです。だから新しい保険商品をどんどん開発しないといけないのに、完全民営化していないかんぽ生命にはそれができず、既存の商品を無理やりにでも売るしかなかった。完全な民間企業じゃないので、企業活動に制約がかかったのです。

では誰が完全民営化を止めたか。民主党政権です。07年に民営化を開始した郵政は、10年かけて完成する予定でした。それが、09年に民主党政権に代わったことでその計画が崩れました。

まず、民主党政権は株の売却を差し止めました。小泉政権が成立させた郵政民営化法では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は全株式を売却すると定めていました。しかし、民主党は、完全売却をあいまいにしたのです。せっかく始まった民営化が、大幅に後退しました。民のガバナンスが発揮されていないのです。

そして、小売業である「郵便局株式会社」と、宅配業である「郵便事業株式会社」を一緒の会社にしてしまった。例えば、コンビニに行ったらそこで宅配の手配ができますが、同じ会社がやっているわけではありません。給与体系もマーケティング戦略も全く異なるこの2つの会社を一緒にすることで、経営がこじれました。これでは現場も自由な商品開発をできず、今回の問題が起きたのです。

今後、日本郵政が復活するためにまず考えられるのは、株式売却を進め、国内市場がどんどん縮小している郵便事業で早く国際的な展開をすること。国際宅配便はフェデラルエクスプレスやDHLの躍進を見ればわかるように、市場がどんどん広がっているわけです。ドイチェポスト(Deutsche Post)が日本より10年以上も前に民営化した最大の理由は、海外展開のためで、ドイツ国内だけでは先が見えないという判断のもと、民営化の後DHLを買収しました。

20年1月6日、元総務大臣の増田寛也氏が日本郵政の社長に就任しました。彼にはぜひ、海外戦略を含めた大胆な改革をしてもらいたいと思っています。そうしないとこれからは縮小の一途だと思います。

■民営化の路線は間違っていない

郵政民営化の後退の責任は与党にもあります。自民党から民主党に政権が移ろうとする直前期から、かんぽの宿の売却問題で日本郵政初代社長の西川善文氏が激しく批判されましたよね。その空気を民主党が引き継いでしまったのです。自民党の終わりの政権と民主党政権はとても似ていて、マクロ政策を見てもやっていることがほとんど同じでした。

保険の不正販売問題で、かんぽ生命保険には世間から大きな非難の目が向けられました。でも、そうかといって「国営に戻せ」という世論は起こっていませんよね。だから民営化という路線自体は間違っていなかったのです。腐敗した日本郵政が再生するためには、とにかく早く株を売ることに尽きます。私は増田氏に、とにかく株を早く売って、日本郵政を民間のガバナンスが利く組織にするよう声を大にして言いたいです。

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竹中 平蔵(たけなか・へいぞう)
経済学者/東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授
1951年、和歌山県生まれ。一橋大学経済学部卒。博士(経済学)。

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(経済学者/東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授 竹中 平蔵 構成=万亀すぱえ 写真=時事通信フォト)

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