この状況で安倍首相と「グータッチ」をする小池都知事の危機意識
プレジデントオンライン / 2020年3月28日 17時15分
■緊張感が伝わらなかった外出自粛要請会見
「今の状態は、感染爆発重大局面。この認識を皆さんと共有し、難局を乗り越えていきたい」
3月25日夜。小池氏は緊急記者会見を開き、都民に対し週末は不要不急の外出を控えるよう呼び掛けた。都内の陽性患者は23日は16人、24日には17人、そしてこの日は41人に跳ね上がっていた。この事態を受けて、小池氏は、28、29日の週末、東京都民に向けて外出の自粛を要請したのだ。
極めて緊迫した内容を語る会見ではあったが、小池氏は時に笑みを見せるシーンもあった。都民に対し、過度に恐れないように気を使ったのかもしれない。しかしテレビを通じて会見を見ていた人の中には、小池氏自身に危機意識が足りないと感じた人もいたことだろう。
実際、この25日の会見では、記者団から感染爆発の判断基準を尋ねられて「有識者の助言をいただきながら、政治的な判断も必要になってくると思う」など、あいまいな答弁を繰り返した。感染症に対する知識、非常事態に対応するガバナンスが足りないと言われてもしかたない。
■小池氏の優先順位はまず都知事選。そして東京五輪だった
今回の新型コロナ対応では、都道府県知事や市長が前面に出て記者会見し、ガバナンス力を競うような様相になっている。仁坂吉伸和歌山県知事、鈴木直道北海道知事、吉村洋文大阪府知事らは事態を掌握して名を上げた首長と言っていい。彼らの中から、遠くない将来、国政に打って出て「未来の首相候補」に名乗りを上げる人物が出てくるだろう。
彼らと比べて小池氏の対応は、印象が薄い。3月上旬までは都民の感染者が少なかったのも事実だが、彼女の関心事が「新型コロナ」以外のところにあったこのは否めない。
小池氏の優先順位はまず都知事選。そして東京五輪だった。7月5日の都知事選で再選を果たすべく「天敵」だった自民党都連と接近。五輪に関しては、予定通り今夏の実施を目指したが、それが無理だと分かると中止や無観客開催を回避して「1年延期」での実現を図った。通常開催が「ベスト・シナリオ」ならば「1年延期」は「セカンド・ベスト」だった。このあたりの変わり身の早さはいかにも小池氏らしい。
■感染拡大の夜、安倍氏と「グータッチ」
7月の都知事選に関しては3月24日に、自民党の二階俊博幹事長と都連幹部が会合を持ち、自民党が小池氏を支援することが決まった。
そして同日夜、小池氏は安倍晋三首相とバッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長との電話会談に同席。安倍氏が提案した「1年延期」で決着をみた。
会談終了後、小池氏は安倍氏と「グータッチ」をして喜んだという。
1日にして都知事選の再選に大きく前進し、五輪の2021年開催も固まった。めでたいことが2つも起きたのだからグータッチしたくなるのも分からないではない。
しかし、先ほども書いたようにこの日は、17人の都民の感染が新たに判明。危機が高まっていた時だ。安倍氏と小池氏はこれまでもグータッチする場面がみられたとはいえ、そんな時に「グータッチ」はあまりにも軽い。
■コロナ対応を誤れば、都知事再選は困難に
小池氏は首都封鎖の危機さえも現実味を帯びてきた事態に対応できるだろうか。小池氏は衆院議員時代、首相補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛相などを経験しており危機管理には自信を持っているようだ。しかし、今回の新型コロナ対応を見る限り心もとない。国民は、鈴木、吉村、仁坂の3氏らと比較して見るだろう。
感染者数が沈静化していけばいいが、ロックダウン(都市封鎖)というような事態に近づけば、新型コロナ対応で失敗した知事の烙印を押される。小池株は大暴落する。そうなれば、自民党都連の支援を得られたとしても都知事選の当選はおぼつかない。
過去の都知事選では、自民党の支援を受けて楽勝ムードの漂っていた候補が、告示直前に立候補した新顔に逆転された例は何度もある。これを「後出しじゃんけんの法則」という。
今回も、新型コロナ対応しだいでは、「後出しじゃんけん」に小池氏が足をすくわれるかもしれない。
■「後出しじゃんけん」をうかがっている人物
最後に、「後出しじゃんけん」をうかがいながら小池氏に牙をむく人物がいることを指摘しておきたい。舛添要一前都知事だ。
舛添氏は「公私混同疑惑」などで批判され2016年6月に辞任。その後を襲ったのが小池氏だ。
今、舛添氏は小池氏に敵意むき出しで、出演番組やツイッターでは小池氏の新型コロナ対応のまずさを手厳しく批判している。
舛添氏は、野党側から都知事選出馬を目指しているという見方もある。4年前、国民から見放された舛添氏が今、復権するとはにわかに信じ難い。しかし国会議員時代は政界屈指の論客で知られた。彼が外野から小池氏を批判すれば、小池氏再選に向けた大逆風となることは確かだ。
(永田町コンフィデンシャル 写真=時事通信フォト)
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