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超大迷惑!「バイト代を稼ぎすぎた大学生」の親の末路

プレジデントオンライン / 2020年4月1日 15時15分

パブで働く男性の仕事像 - 写真=iStock.com/kazuma seki

子どもなどの扶養親族がいると納める税金が安くなる扶養控除。この制度を適用するには、扶養される人の年収に上限がある。税理士の佐久間裕幸氏は、「年収が103万円を超えると扶養から外れて納税額が増える。会社から支給される家族手当もなくなる場合がある」という――。

■年収103万円を超すと親の扶養控除から外れる

昔から大学生はアルバイトをしてお小遣いを稼ぐものだったが、親の側の仕送り額も十分に出せないといった事情で、小遣い稼ぎというより学費を稼ぐためにアルバイトが必須という学生も少なくない。しかし、アルバイトで収入が増え過ぎると親をも巻き込む問題が生じることがある。行き過ぎた学生バイトがもたらす金銭的迷惑について解説してみたい。

主婦のパートでしばしば耳にする「103万円の壁」。これを超えると配偶者控除から外れ、本人と配偶者の納める税金の額が増えてしまうため、稼ぐ金額に気を付けている人は多いだろう。

この「103万円の壁」は学生のアルバイトにも影響してくる。この金額は、給与所得控除65万円と基礎控除38万円の合計額である(2020年からは給与所得控除55万円と基礎控除48万円に変わるが合計は103万円)。

アルバイトの年収が103万円以内なら、控除により課税所得が0円になるので、学生本人に税金がかからない。実は、これが親の所得税・住民税を計算する上での扶養控除にも影響してくる点にも注意が必要だ。

■子どもを扶養家族にできるかのラインは…

扶養控除の要件の1つに次の条件がある。

年間の合計所得金額が38万円以下(20年分以降は48万円以下)であること(収入が給与のみの場合は給与収入が103万円以下)。

アルバイトの給与額面総額から給与所得控除を差し引いた額(給与所得)で38万円を超えていないことが要件となっている。ということは、103万円以上アルバイトで稼いでしまうと、親の所得税・住民税を計算する上で、扶養家族にすることができなくなってしまう計算になる。具体的には、どのくらいのインパクトになるのか試算してみよう。

扶養控除は、配偶者以外の親族を扶養している場合に適用されるので、通常は、父親か母親のうち所得の多い方で適用されることが多い。ここでは、性別は扶養控除額に関係しないので、「親」としておこう。

親が給与所得者で年収が500万円とする。扶養控除以外の所得控除(社会保険料控除や基礎控除)を100万円(住民税は基礎控除が違うので95万円)とすれば、大学生を扶養控除にすればさらに63万円の扶養控除が取れる。

■年収500万円の親なら約10万円も税金が増える

「扶養控除で控除される額は、確か38万円ではなかった?」という疑問の声があるかもしれない。12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の扶養親族は、特定扶養親族といって、特別に増額された扶養控除が認められている(住民税では45万円)。

<上記の前提条件での計算>

子どものバイトが103万円以下なら(単位は円)
子どものバイトが103万円超なら(単位は円)

子どものバイトが103万円以下で、親の年収が500万円だとすると、所得税91,500円と住民税206,000円で計297,500円の税金を支払う。しかし子どものバイトが103万円を超すと、所得税148,500円と住民税251,000円で税額は計399,500円になってします。つまり、扶養控除が取れないことによる差額は399,500-297,500=102,000円となる。

繰り返すが、子どものアルバイトの金額が103万円を超えた途端、突如102,000円税金も増えるのだ。ちなみに所得税は累進課税なので、所得金額が多くなればなるほど高い税率が適用される。上では親の年収が500万円の場合(所得税率20%)で試算したが、仮に親の年収4000万円を超えると住民税と合わせて最大55%の税率が適用されるため、325,500円もの税金を親が余分に負担することになる。

■130万円で社会保険の扶養家族からも外れる

親が会社員であれば、会社の健保組合に加入しているはずである。この健康保険(健保)は、被扶養者についても保険証を発行してくれる。この被扶養者になれるかどうかの基準が「被扶養者の年収が130万円未満であること」とである。そのため、アルバイトをした結果、子どもの年収が130万円を超えると被扶養者から外すという手続きが必要になる。

被扶養者から外された子どもは、国民健康保険に加入することになり、自分の収入額を基準に市区町村に国民健康保険料を支払うことになる。市区町村によって所得に掛かる料率は異なるものの7~9%くらいとなる。さらに均等割りという定額部分があるため、年収が130万円を超えている状態では、年間10万円近い国民健康保険料が学生本人に掛かってくることになる。

なお、親が自営業者などで国民健康保険に加入している場合もあろう。この場合、国民健康保険の料率は、世帯の所得が基準になっている。したがって、子どものアルバイト先から市区町村に提出された給与支払報告書が親の所得に加えられて、親の翌年の国民健康保険料も増えてしまうことになる。

■扶養控除、被扶養者から外れると手当も削られる

多くの企業では、従業員に扶養家族がいる場合に家族手当を支給するという給与制度を取っている例が多い。この家族手当を支給する基準は、一般的に年末調整時等に扶養家族として届け出をしているか、健保で被扶養者となっているか、すなわち103万円か130万円の基準で運用されている。

ということは、会社の給与制度によっても異なるが、子どもが103万円超あるいは130万円超のアルバイトをしてしまったことで、親の家族手当が削られることが生じる。仮に家族手当が月額2万円であれば、年間24万円が消えてしまう。会社員など給与所得者特有の問題ということになるが、飛んでいく金額はバカにできない額であるといえよう。

■健康保険に続いて、国民年金の負担も

日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務付けられている。しかし、大学生の場合、申請によって、在学中の保険料納付が猶予される「学生納付特例制度」というものが設けられており、これにより本人の所得が一定以下の学生については、国民年金保険料の納付の猶予が認められている。

ここでの本人の所得が一定以下、という所得基準が次のように定められている。

118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

親に扶養されている学生に扶養親族はいないので、結局、実質的な所得基準額は118万円ということになる。この118万円を超えると免除されていた国民年金を支払わなければならない。国民年金保険料の額は、年によって変わるが令和元年の場合は月額16,410円であった。年額にすれば、196,920円ということになる。

国民年金は、支払った期間が長ければ老後にもらう年金が増える仕組みだから一概に支払うことで損をするとも言えない。しかし、少なくとも20歳前後の若者にとって、50年も先の受給額より目先のお小遣いや学費が重要なのは言うまでもない。

■勤労学生控除という仕組みもあるが…

このように考えると学生バイトには103万円、118万円、130万円という壁があることがわかる。勤労学生控除という制度をご存じの方は、上記のうち103万円については、勤労学生控除で救われるのではないかとお考えかもしれない。

勤労学生控除とは、勤労学生に該当すれば、27万円の勤労学生控除を使うことができ、学生本人は年収130万円まで所得税がかからない仕組みである。

しかし、扶養控除の判定では勤労学生控除は加味されない。あくまで納税者本人の控除の制度である。所得税だけに関係する制度なので、学生納付特例制度においても適用されない。さらに給与における家族手当も、その判定基準が親の扶養家族になっているか否か、すなわち103万円の基準で決まる制度になっている場合には、家族手当も削られてしまう。

子どもは、「自分が所得税を納めないで済むように」という認識だけでアルバイトをしているかもしれない。だが、子どもを扶養している親としては、金額によっては親の税金が変わるためコントロールが必要であることを認識してもらわなければならない。

アルバイトで稼ぎ過ぎて、本稿のように子どもに国民健康保険(国保)や国民年金の保険料の支払いが発生した場合、社会保険料控除にすることで所得税・住民税を減らす効果はある。しかし、多額の支出が生じること自体は確実であり、親子で話し合うことが必要であろう。

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佐久間 裕幸(さくま・ひろゆき)
公認会計士、税理士
1961年、東京生まれ。1986年、慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了。1990年公認会計士、税理士登録。大手監査法人を経て、1964年に父が創設した佐久間税務会計事務所を2007年より引き継ぎ、所長に。

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(公認会計士、税理士 佐久間 裕幸)

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