創価学会と幸福の科学の対照的な感染対策「法話で免疫が上がります」

プレジデントオンライン / 2020年4月3日 17時15分

人気のない、東京・信濃町の創価学会本部。平常時に本部の写真を撮ろうものなら、警備員に声をかけられることもあるが、コロナ禍では公道からなら写真撮りたい放題。 - 撮影=小川寛大

■創価幹部「韓国の『新天地』になるわけにはいかない」

東京都新宿区信濃町。言わずと知れた日本最大の新宗教団体・創価学会の本部所在地である。週末ともなれば多くの学会員たちでごった返す、いわば創価学会の聖地だが、3月下旬のある休日、その町は完全に静まり返っていた。広宣流布大誓堂を始めとする本部施設は固く入口を閉ざし、人っ子一人、歩いていない。

それもそのはず、創価学会は2月17日、新型コロナウイルス感染防止対策として、本部施設の閉鎖や教団行事の中止といった各種方針を決定。「座談会」と呼ばれる、地域の創価学会員たちが行う小集会の中止まで求め、事実上の活動停止に入って現在に至る。公称会員数827万世帯の巨大教団はいま、未知の病原菌を前に完全に動きを止めている状況なのだ。

創価学会だけではない。立正佼成会や真如苑、生長の家、世界救世教などなど、日本の主だった新宗教団体は2~3月にかけて、次々と教団施設の閉鎖や主催行事の中止などを発表。3月下旬現在で、“通常通り”の活動を行っている教団はほとんどないというのが実情だ。

「まさか『新天地』になるわけにはいかないでしょう」

ある創価学会の中堅幹部は、表情を固くしてそう言う。韓国の新宗教団体・新天地イエス教会が教団行事の中で新型コロナウイルスの感染を広げ、韓国国内での感染爆発の引き金を引いたとして猛批判を浴びたのは2月下旬のこと。「再誕のキリスト」と称してきた教祖・李萬煕氏は3月2日、居並ぶマスコミを前に土下座謝罪に追い込まれた。

■一般信者「え、信じていれば、病気から守ってくれるはずでは…」

「宗教団体の行事とはおおむねどこでも、多くの信者が教団施設などに集まり、お経を唱えたりして共に祈るというもの。見事にクラスター(感染者集団)の発生条件とされる3密(密閉・密集・密接)を満たしている。今の社会情勢下で宗教行事からクラスターが発生することなどがあれば、世間からすさまじい批判を浴びて教団の存続にも関わるでしょう。従来通りの活動を続ける勇気を持った団体は少ないと思いますよ」(同前)

なるほど、そうした各教団指導部の判断には確かに妥当性がありそうだ。しかし一方、一般の信者層からは現状に対し「何か釈然としない」という声が静かに上がっているのも事実なのだ。

たとえば創価学会が戦後の急拡大期、いわばスローガン的に盛んに唱えていたのは「貧・病・争からの解放」といった文句だった。立正佼成会開祖・庭野日敬と真如苑開祖・伊藤真乗はそれぞれ長沼妙佼、伊藤友司という霊能者的な盟友を持ち、その“神秘の力”で信者の病気治しなどを行って勢力を拡大させてきた。また生長の家創始者・谷口雅春は「人間神の子、本来病なし」というのが決め文句だった人物で、世界救世教の明主(教祖)・岡田茂吉は手のひらを他者にかざすことで病を治癒できるという「手かざし系新宗教」の祖である。つまり、日本の新宗教団体とは程度の差はあれ、その多くが「病気治し」を看板にして発展、拡大してきた歴史があるわけだ。

■立正佼成会関係者「行事の取りやめ、正直しんどい」

ある生長の家の古参会員はこう言う。

「教団からクラスターを生まないため、各種の行事を取りやめるという方針は医学的に正しいのだろうし、それ自体に反対する気もない。しかし現状ではどの団体からも、『行政や専門家が活動自粛を求めるので従います』という以上の姿勢が見えてこないのも事実。これでは一体、何のための宗教なんだ、われわれは何のために信仰してきたんだと感じてしまう」

また長引く自粛は、各教団の財政に深刻な影響を及ぼしかねないとの指摘もある。なぜなら日本の新宗教団体の多くは、定期的に納める会費の額はそこまで高くないという事実があるからだ。たとえば立正佼成会の会費は月に100円。真如苑は月に200円。創価学会にはそもそも会費という概念がない。

「ほかの教団でも似たようなものだと思うんですが、大きな行事や本部、教会などへの参拝の際に、会費とは別の寄付を出してもらうというケースが多い。教団財政的にもそのあたりが重要な柱の一つで、あまりに活動自粛が長引くと、確実にまずいことになる」(立正佼成会関係者)

■幸福の科学の「法話を聞いて免疫が上げる」というウルトラC

しかし、そんなふうに多くの教団が新型コロナウイルスとの“自粛の戦い”を迫られている中、ひとり気を吐く勢いなのが幸福の科学だ。3月下旬現在、教団の公式ホームページを見ても特に「自粛のお知らせ」などは掲載されておらず、それどころか直近の式典やセミナーの案内などが日々更新されている。教団トップ・大川隆法総裁も信者に対する法話などを続けている様子で、教団関係のニュースサイト「ザ・リバティweb」には、「法話を聞いて免疫が上がる」などといった文字すら躍っている。

「うらやましいとも、うちも真似してほしいとも思わないが、やはり創業オーナー(大川総裁)が健在である教団には、いろいろな意味で勢いがあるんだなあと思わされる」(前出の生長の家古参会員)

■創価学会信者「もう世の中は宗教を必要としていない」

ザ・リバティwebによれば、2月下旬や3月中旬に行われた大川総裁の法話には、1000人を超える会員らが詰めかけたという。「第三者的に見れば、大丈夫なのかと思うのが自然だろう」(同前)が、果たして今後どうなっていくものなのか。

ただ日本の新宗教全体の、まさにその“今後”に関し、ある創価学会の3世会員は、「僕は祖父や親が学会員だったから入会しているだけの人間」と前置きしたうえで、冷ややかにこう言う。

「医学が未発達だった昔の時代には、確かに病気を治すために人々が宗教にすがり、宗教者も彼らを励ましてきた歴史があったと思う。でも現代、少なくとも先進国で、病気になった人がまず宗教に頼る意味はない。いま新型コロナウイルス対策として多くの宗教団体が唯々諾々と活動を停止している状況は、間違いなく宗教の存在価値そのものに大きな影響を与えると思う。率直に言えば、もう世の中は宗教を必要としていないことがはっきり認知されるんでしょう」

世界を覆う未曽有のウイルスは、果たして世の宗教地図をいかに変えるのか。

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小川 寛大 雑誌『宗教問題』編集長
1979年、熊本県生まれ。早稲田大学卒業。宗教業界紙『中外日報』記者を経て現在。著書に『神社本庁とは何か』。

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(雑誌『宗教問題』編集長 小川 寛大)

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