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橋下徹「緊急事態宣言を出した日本政府・国民が取るべき道」

プレジデントオンライン / 2020年4月8日 11時15分

※写真はイメージです。 - 写真=iStock.com/ersinkisacik

4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が東京・大阪など7都府県に対して発出された。私たちはこれにどう対応すべきか。新型コロナの感染懸念で自主隔離中の橋下徹氏が呼びかける。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(4月7日配信)から抜粋記事をお届けします。

(略)

■強制力の乏しい日本の緊急事態宣言で何が変わるか

日本の緊急事態宣言というものは、名前はおどろおどろしいが、実は法律の中身はたいしたものではない。

というのも現在も、世の中は自粛ムードが漂っている。

これは政府の専門家会議や安倍晋三首相、さらには小池百合子東京都知事や吉村洋文大阪府知事らの自治体首長たちが、住民に自粛の呼びかけを行ったことが要因だが、彼ら彼女らの自粛呼びかけは、何の法律の根拠にも基づいていない。

法律の根拠に基づかないのに、既に現在の自粛ムードなのである。

そして緊急事態宣言が発せられたら、世の中はどう変わるのかであるが、政府自身はなんと! 今後は自粛の呼びかけは原則できなくなる。法律上、自粛の呼びかけは都道府県知事が行うことになっている。ただそれも現在の自粛の呼びかけ以上のことはできない。

そして法律上は「要請」「指示」という言葉が使われているが、これらには罰則規定がなく、結局は強制力のない「お願い」しかできないのであり、それは今の自粛要請と何ら変わらない。

(略)

ただし「緊急事態宣言」という言葉が、今の自粛要請よりも、強いメッセージ力を発することは確かだと思う。

小池知事や吉村知事が、東京や大阪という大都市を預かる者として、安倍さんに緊急事態宣言の発出を求めていた理由はこれだ。今よりも、もう少し強いメッセージを発したいということだ。Googleの調査によると、特に、大阪においては府民の外出が減った率が小さい。大阪ではもう少し強いメッセージが必要だと吉村さんは感じているのだろう。決して、知事としての強大な権力を持ちたいからではない。

(略)

あくまでもこの緊急事態宣言は、感染者の爆発的な感染拡大を阻止して、医療崩壊を防ぐためのものである。医療崩壊が起こると、新型コロナウイルス感染の重症者の命を救うことができなくなるだけではなく、院内感染などが生じれば他の疾病の患者の治療もできなくなるからだ。

(略)

■死亡者数を基準とし国民は「3密」を避ける。これが日本の国家方針だ

僕はこのメルマガ(Vol.192【専門家「フル活用」のノウハウ(2)】ついにWHO「パンデミック」宣言! なぜ日本社会は諸外国より落ち着いているか)で、新型コロナウイルス感染症については、「感染者数」ではなく「死亡者数」で、国家の感染症対応マネジメントをすべきだと主張した。

その考えは今でも変わっていない。

新型コロナウイルス感染症は、8割が無症状・軽症だというのが専門家の統一見解だ。だからこそ残りの2割の方々に、日本の高度な素晴らしい医療技術を集中させなければならないと考える。

ところがこれまでは、検査で陽性となれば無症状・軽症者の全員を感染症の専門病院に入院させていたので、医療現場がパンクしそうになっていた。感染症患者に対応する医療従事者の労力は想像を絶するほど大変だ。普通に患者と接触することができず、常に完全な防護服を身にまとわなければならず、さらに患者ごとに防護服を着替えるという話も聞いた。また新型コロナウイルスは患者体内での滞在期間が長く、入院期間が長くなるとも聞いた。医療従事者自身、感染するリスクを抱えながら大変なご苦労の毎日であり、本当に頭の下がる思いである。

ゆえに、やっとのことであるが、無症状者・軽症者は専門病院に入院させずに、症状の程度や家庭環境によって、自宅療養か宿泊施設での療養を行うことに政府の方針が固まった。

これで専門病院の病床は、重症者のために使うことができる。

(略)

各人が他人にうつすことを極力避ける行動をとることはもちろんだが、高齢者や基礎疾患を持っている人、さらに特にヘビースモーカーで肺の機能が弱まっている人は、自己防衛のために、いわゆる「3密空間」に出向くのは、今は絶対に控えるべきだ。

とにかくこの死亡者数を0にすることは不可能であっても著しく増えないようにする。そのためには重症者をしっかりと医療ケアできるような余力を各医療機関に残しておく。死亡リスクが高い人は、自己防衛のために感染リスクの高い場所には行かないようにしてもらう。

これが新型コロナウイルス感染症に対応するために日本の国がとるべき国家方針だ。

世界各国と比べてみても、この死亡者数の少なさは、日本の対応が今のところうまくいっていると考えてもいいのでないか。日本の政治行政は医療現場の皆さんの余力を残す政策をどんどん実行すべきである。

(略)

■仮に感染しても死ななければいい。絶望するな

新型コロナウイルス感染は、初期は風邪症状と変わらないらしい。その段階でPCRの検査要望が殺到すると医療機関の負担が著しく増大する。さらに初期ではウイルスが微量なこともあって検査によって発覚しないとも言われている。また病院に希望者が殺到すると院内感染するリスクも生じる。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

だから初期は、よほどしんどい場合でない限りは、自宅で様子を見ることが必要だと思う。そもそも陽性となっても、特段の薬や治療方法があるわけではない。基本的には安静にして自分の免疫力を信じるしかない。

今のガイドラインでは、4日経過しても症状が改善しない場合には、新型コロナウイルス感染を疑うべきとなっている。

ただし、これからは、無症状・軽症者は自宅やホテルで療養することになったので、それらの者で専門医療機関の病床を占めるようなこともなくなるだろうから、PCR検査は実施する現場の対応能力に合わせて広げていく必要もあろう。

さらに死亡者数に着目する国家マネジメントが重要であることは間違いないが、新型コロナウイルスは、通常の季節性インフルエンザであれば亡くなることはなかっただろう方々の命までを奪うことを、表面的な数字だけでなくしっかりと認識すべきである。

(略)

爆発的な感染拡大を防ぐことに成功すれば、今度は死亡者数が増えないように注意しながら社会経済活動を徐々に再開していかなければならない。そしてまた死亡者数が増えてくるようであれば、社会経済活動を抑制する。

新薬・ワクチンが開発されるか、集団免疫が獲得されるかまでの長期間、この繰り返しをしていかなければならない。

一度、緊急事態宣言をやって、強烈な自粛をやったからといって、それで新型コロナウイルスとの闘いが終わりになるわけではない。これから長い長い闘いとなる。

歴史を振り返れば、新薬・ワクチンの開発がなかった時代においては、集団免疫を獲得して感染が収束するまでに、夥しい命が奪われた。数千万人の命が、である。

しかし、今は、知恵と技術がある。

とにかく死亡者数が増えないように粘りながら、社会経済活動の抑制とその解除を繰り返していくしかない。

このように丁寧に説明しながらも、あえて僕は提言する。

「他人にうつすことがないように個々人で細心の注意をすることは当然だが、仮に感染しても死ぬことがなければいい。感染しても絶望することはない」と。

(ここまでリード文を除き約2800字、メールマガジン全文は約1万4700字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.194(4月7日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【新型コロナ緊急事態宣言】ギリギリの状況で日本政府・国民が取るべき道》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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