人気絶大インフルエンサー「りょうくんグルメ」が予言するタピオカの次に来るものとは
プレジデントオンライン / 2020年4月8日 11時15分
■ベーグルと韓国マカロンはなぜ広まらなかったか
【原田】去年(2019年)はタピオカが大ヒットして、新語・流行語大賞にも「タピる」という言葉がランクインしました。ただ、このブームが今後もずっと続くとは思えず、マーケティング業界では次に何が来るのかが関心の的になっています。りょうくんの意見を聞かせてください。
【りょうくん】流行るためのポイントっていくつかあると思うんですが、中でも一番重要なのは「巡ることができる」点じゃないでしょうか。店を巡って楽しめれば、それ自体が趣味になる。だから流行るんだと思うんです。次に大事なのが、メニューにバリエーションがあること。味や見た目が多様であればあるほど、巡りたい気持ちも盛り上がりますよね。タピオカもそうでしたし、ほかにもそういう商品はたくさんあります。
【原田】そうすると、流行る要素を持っているスイーツは結構多そうですね。でも、そうした条件をクリアしているのに「来る」と言われながらブームにならなかったものもあります。どうしてなんでしょうか。
【りょうくん】ヒットしそうになっても、店の数が「巡りたい」と思わせるほど多くないとダメなんです。例えばベーグルは、若者に人気のモチモチ食感で中に挟む具材もバリエーション豊富ですよね。でも、一時流行りかけたのに専門店はそれほど増えませんでした。トゥンカロン(韓国マカロン)も、これは来ると思って「りょうくんグルメ」でも紹介したんですが、店がなかなか増えなくて……。店側がヒットの兆しに気づかないのかも。もったいないなと思います。
■次に間違いなく流行るスイーツとは
【原田】一時はSNSで話題になっても、店などのタッチポイント(商品と消費者の接点)が少ないままだと、ブームに届かないうちに人気が収束してしまうわけですね。巡れる、メニューが多様、店が多いという3条件をクリアする「タピオカの次」は何だと思いますか?
【りょうくん】クリームソーダです。少し前から言い続けているんですけど、タピオカの次に流行るのは間違いなくこれだと思っています。見た目がきれいでインスタ映えしますし、メニューに載せている店が多くてバリエーションも豊富。価格も手頃ですよね。今、若者の行動って世界中で似てきているので、日本で流行れば海外の若者から注目される可能性も大いにあります。
![「りょうくんグルメ」クリームソーダの投稿。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/d/250/img_dd7fdbfcfa29f7dac39adc4bec14a79c807571.jpg)
【原田】この5年くらい、すでに神保町などにある昔ながらの喫茶店やそこで出されるクリームソーダが「レトロ」でインスタ映えすると若者たちに人気になってきていますよね。それがもっと広がっていく可能性がある、と。今はコロナの問題がありますが、それを目当てに来日する若者が増えれば、インバウンド拡大にもつながりそうです。
【りょうくん】昔は世界にクリームソーダを広める手段はなかったと思いますが、今はSNSがあるし、僕のようなインフルエンサーもいるからどんどん拡散していけます。日本の若者に「これいいよ」って知らせて、流行ったら日本のトレンドの飲み物として世界中に知らせることができる。実際、SNSでクリームソーダがタグ付けされている数を見ると、すでにそうなりつつあります。
■りょうくんが下北沢に目をつける理由
【原田】ブームを仕掛けて、それが実際にヒットするまでの過程を直接体感できているのがすごいですね。ほかに、これから仕掛けようと考えているものはありますか?
【りょうくん】下北沢のカレーですね。「りょうくんグルメ」ではカレーは反応が悪いんですが、僕が好きなのでバリエーションの一つとして時々載せているんですよ。それで、下北沢はカレー屋さんも多いし、街自体が観光地としてのポテンシャルが高いと思っていて。
【原田】実は僕も最近下北に注目していたんですよ。この前も部下と学生と見に行ってきたばかりなんです。昔はもっと「サブカル」色が強く、小劇場目的のおじさんなんかも多くて、比較的若者の街だったけど、必ずしも若者だけの街ではなかった。でも、最近はより若者化していますよね。渋谷が全体的に「大人の街」を志向し始めてきているので少し若者が流れてきているのかな。下北は外国人にもうけそうですよね。
【りょうくん】日本だけでなく、中国や韓国の若者にとっても面白い街だと思うんです。例えば、僕は韓国が好きで何回か旅行に行っているんですが、2~3回目になるともう繁華街の代表みたいなところは飽きちゃって、行かなくなるんですよ。じゃあ、渋谷にも新宿にも飽きた海外の若者だったら、次にどこへ行くか。そう考えた時、下北沢だと思ったんです。
■「りょうくんグルメ」に驚きの展開
【原田】すでにインバウンドも積極的に狙っているんですね。そうすると、インフルエンサーとしての影響力もより高めていく必要がありそうですが、最近はSNS上でりょうくんの戦略を真似する人も出てきていますよね。
【りょうくん】そうですが、絶対に僕には追いつけないだろうと思っています。女性を写すという特徴や大勢の人を巻き込む方法、インスタのストーリーの使い方など、時間をかけて積み重ねてきたものを組み合わせて運営しているので。知り合いに「あまり戦略を公表するな」って言われることもありますが、僕としては公表しても平気っていう感覚なんですよ。
【原田】SNSの技術もどんどん進化するので、真似たところでそれは過去のものである、ということなんですかね。あと、SNSを始めた当初と違って、有名になってくると普段行く店のグレードも上がってきませんか? そうすると、今のフォロワーの感覚とはズレていく可能性も出てきますよね。
【りょうくん】実は最近、高い店も少しずつ載せ始めているんです。以前は載せたい気持ちを抑えていたんですが、試しに載せてみたら意外と反応がよかったので。今は、普段の投稿はお手頃価格のままで、時々「ごほうびデー」みたいな形で少し高めのスイーツを載せたりしています。
【原田】「りょうくんグルメ」は、今は10~20代の女子がターゲットですが、将来的には大人市場も狙っていきますか? 大人向けのグルメだと、例えばアンジャッシュの渡部建さんなども競合相手になってきますよね。
■2代目「りょうくん」は女子の可能性も?!
【りょうくん】狙ってはいます。確かに、今の僕はまだ若者と感覚が合っていますが、そのうちズレてくる可能性もある。だから、あと2年ぐらいしたら「りょうくんグルメ」は2代目に任せようと思っているんです。そうしたら渡部さんの市場を取りに行きますよ。
【原田】えぇっ! それは驚きです。2代目の候補はもう決めているんですか?
【りょうくん】投稿の編集作業をする「りょうくんグルメ編集部」みたいなものがあるんですが、そこにいる女の子が第一候補です。店の見つけ方から食レポの方法まで、完全に僕と同じ目線を持てるように育てたので、信頼できるんですよ。ただ、顔を出したくないそうなので、その点だけがネックになっています。フォロワーの信頼度や熱量に最後の一押しを加えようと思ったら、やっぱりどこかで顔出しが必要になってくる。だから、まだ検討中なんです。
■狙うは中国市場のインフルエンサー
【原田】今後の戦略もすでに練りつつあるんですね。2代目に任せた後は、大人市場への進出のほかに、例えば自分の店をつくるようなことも考えているのでしょうか。
【りょうくん】それは考えていません。でも、メニュー監修の仕事などを通して、今はヒットさせようと思ったら味だけでなく店舗や商品のデザインも大事なんだとわかってきました。将来的にはデザインごとの反応データなどをつかんで、数値を使ってコンサルティングしていけたらいいなと思います。
【原田】広告効果みたいな部分を、グルメ系商品のデザインに生かしていきたいということですね。SNSではどうでしょうか。Twitterやインスタなどいろいろありますが、「りょうくんグルメ」に限らず特に力を入れていきたいのはどれですか?
【りょうくん】最近、中国のインスタと言われている「小紅書(RED)」を始めました。中国人の友達に、すごく流行っているからやるように勧められて。日本は少子化も進んでいるので、これ以上フォロワー数を増やすのは正直もう限界かなと思っています。そこを考えると、中国にはまだものすごい可能性がありますよね。次は中国でインフルエンサーとして認められて、中国で一番有名な日本人になりたいです。
【原田】以前、中国に語学留学したと言われていましたが、その経験をすでに武器として生かし始めているんですね。お話を聞いて、常に先を見据える姿勢に驚き、りょうくんの今後がさらに楽しみになりました。どうもありがとうございました。
タピオカの次はクリームソーダ、日本の次は中国──。SNSインフルエンサーの中には人気が一過性に終わる人も少なくありませんが、りょうくんは常に先のことを考え、新しい戦略を次々と打ち出しています。それだけに進化のスピードも速く、これでは後発の人はなかなか追いつけないだろうと実感しました。ビジネスや英語、中国語を学んできたことも、大きな武器になっていると思います。大人市場や中国市場への参入も、見事な成長戦略だと感じました。りょうくんの今後の活躍に注目していきたいと思います。
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マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。
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2018年3月よりSNSで投稿を開始。「まじでこの世の全ての○○好きに教えてあげたいんだが」という定型文が話題になり、1年半後には総フォロワー数が90万人を突破。流行をキャッチし拡散する力が飲食店からも信頼され、現在では新しい「映えるグルメ」の仕掛け人として注目されている。4月1日、著書『まじでこの世の全てのSNSでバズらせたい人に教えてあげたいんだが。』を発売。
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(マーケティングアナリスト 原田 曜平、グルメ系インフルエンサー りょうくん)
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