あわや「新型コロナ離婚」、妊娠中の妻が踏みとどまった理由

プレジデントオンライン / 2020年4月10日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RyanKing999

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、家の中にいる時間が増えている。夫婦問題研究家の岡野あつこ氏は「夫婦関係について、もう限界かもしれないという相談を受けるようになった。社会的に動揺する事態が生じると、それまで安定していた関係が思わぬ方向に進むことがある」という――。

■あちこちから「もう限界かも」という声が…

世界中で猛威を振るい続けている新型コロナウイルス。多大な影響を及ぼしているのは、社会だけではなくなりはじめている。というのも、もっとも身近な夫婦間や家族間といったところでも、あちこちから「もう限界かも……」という声が上がってきているのだ。

毎日のように新型コロナウイルス関連の出口の見えない情報が更新されるたび、思い起こすのは、2011年の東日本大震災の後に夫婦間や家族間で生じた“関係性の変化”だ。あの時、多くの夫婦間や家族間、恋人間ではお互いの存在の大切さと向き合い、絆を深めたはず。その一方で、「誰とどんなふうに生きていくか?」を突き詰めて考えた結果、本当に大事にしたいものが見え、人生の方向転換という大きな決断をした人もいたという。

社会的に大きく動揺する事態が生じると、私たちそれぞれが持っている価値観は浮き彫りになりやすい。その結果、夫婦間や家族間といった、それまで安定していたはずの関係が、思いもよらない方向に変化していくことがあるのだ。

じつは、今回の新型コロナウイルスの件でも、価値観の違いが明るみに出てきた夫婦の相談例が、少しずつではあるものの確実に増加している。

時間がたって2020年の今という時期を振り返った時、「なぜあの時、あんな選択はしたのだろうか」などと後悔をしないためにも、この時期に寄せられた夫婦問題の実例を読み、夫婦関係を見直すきっかけにしてほしい。

■在宅勤務中の電話にイライラ、昼食作りで衝突…

【Case1】在宅勤務の夫に嫌気がさした妻

結婚8年目のA子さん(37歳)は現在、同じ年の夫との離婚を真剣に考えているところだという。きっかけは新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした会社の配慮により、夫が在宅勤務になったことだった。IT関連の仕事に就いているため、以前から自宅で仕事をすることが多かったA子さんは、「いつも夫の出勤後、私はリビングで仕事をしながら家事もこなしていたが、在宅勤務になってからは私の椅子を堂々と占拠している夫。自分のペースで動けないことに、相当ストレスを感じる。今はもう『自分はいかにも重要な仕事をしてますよ』というアピール混じりの口調で電話をしている姿にすらイライラする」とのこと。

朝食だけでなく、昼食や夕食もA子さんが支度をしている理由は、「夫にやらせたほうが面倒だとわかったから」。在宅勤務がスタートして1週間たった頃、「せめて昼食づくりだけは分担してほしい」とA子さんが申し出たところ、夫はしぶしぶ承知したという。ところが、料理をはじめてみると「フライパンはどこにしまってあるのか?」「野菜はどのくらいの大きさに切るべき?」「塩はどれを使えばいい?」といった些細なことでA子さんの仕事をたびたび中断した挙句、1時間もかけてようやくつくった味のない塩ヤキソバを前に不機嫌顔。しまいには「料理は女の仕事だろう」とモラハラ発言まで出る始末。「……もういいよ。料理は私がやるから」とA子さんがあきらめ、夫に伝えるまでにそう時間はかからなかった。

■「この生活が続くのは耐えられない」

結局、料理だけでなく掃除や洗濯などすべての家事の負担はこれまでと変わらないにもかかわらず、お互いのストレスばかりが増大する今の生活。それでも四六時中、夫と顔を合わせていなくてはならない状況にイライラもピークに達したA子さんは「この生活がずっと続くと思うと耐えられそうにない。幸い私たちには子どももいないし、離婚という選択肢もありかもしれない」とため息をつく。

長期化する在宅勤務に際しては、「家事代行サービスの導入」や「家の間取りの見直し」などの策を講じることでストレスを軽減できるケースもある。それにかかる費用や手間には代えられない円滑な夫婦生活が得られる可能性はあるだろう。

■不安になった夫が「不倫を暴露」

【Case2】不倫相手から妻の元へ舞い戻ってきた夫

「オレ、コロナに感染したかもしれない……」と覚悟を決めて妻に打ち明けた、と話すのはBさん(42歳)。Bさんには4歳年下の妻と小学生の長男がいる。週末、自宅で静養していたにもかかわらず微熱が下がらないBさんが、自分が新型コロナウイルスに感染したのではないかと不安になったのには理由があった。

じつは、Bさんは同じ職場で働く20代の既婚女性の部下と半年前からW不倫の関係を続けていた。Bさんは今回のコロナ騒動ではじめて、不倫相手の夫が、病院関係の仕事をしていたことを知ったという。不倫相手の夫が新型コロナに感染したという事実はなかったが、Bさんは長引く体調不良から「ひょっとすると不倫相手を経由して、自分も感染したのでは?」と思い込み、妻に洗いざらい打ち明ける決心をしたのだった。

■「自分に一番親身になってくれる人」を再確認

部下と不倫をしていたことを白状し、謝罪した瞬間のBさんの本音は「離婚されても仕方がないとあきらめていた部分もあった」。

ところが、妻はBさんの予想に反し、不倫について一切とがめるようなことは言わず、「今は子どもと私のためにも、元気になることだけを考えて。あなたは私たちにとって大事な人だから」と涙を流したとのこと。「妻の態度を見て、自分のしたことを激しく後悔しましたね。こんなにいい妻がいるのに、どうして浮気をしてしまったんだろう、って」とBさん。

その日に行った病院で、Bさんは「風邪でしょう」と診断。帰り道、付き添ってくれた妻からは「元気になったら、不倫相手とはきっちり別れるように」と厳しく言い渡されたという。

何かが起こった時、「誰がいちばん親身になってくれるか?」を考えるのも、離婚を踏みとどまる考え方のひとつ。たとえ新婚当初の熱量を保つことはできなくても、自分のことを親身になって支えてくれる人の存在は唯一無二なはず。不倫相手が、これまで続けてきた結婚生活を壊してまで一緒になる人かどうか、もう一度考えるべきだろう。

■まったく危機感がない夫に絶望

【Case3】危機感のない夫に愛想を尽かした妻

4年前にはじめての出産、現在は妊娠7カ月を迎えるC美さん(35歳)は、コロナ騒動をきっかけに、11歳年上の夫に対してハッキリと嫌悪感を抱きはじめたという。原因は、夫の危機感のなさにあると話す。「今これだけメディアでも伝えられているのに、新型コロナウイルスに対し、夫はまったく無頓着。一緒に買い物に行っても、マスクをしないうえに花粉症のせいで大きなクシャミを頻発。まわりの人からにらまれても平気で笑っている無神経さに肩身の狭い思いをしていた」と憤慨するC美さん。

もっとも気になるのは帰宅後、C美さんが注意をしないと夫は手も洗わないという点。「自分は鈍感だから気にならないかもしれないが、4歳の子供に対して配慮がないのが許せない。これから下の子が生まれてくるのに、家にウイルスを持ち込まないようにしようという考えもないのかと思うと本気で腹立たしい」

■4歳の子供が「パパ、ちゃんと手をゴシゴシして」

C美さんの頭に離婚という文字が浮かんだのは、3月上旬のこと。C美さんの夫は、異動するスタッフの送別会と称して飲み会を強行、深夜に帰宅後、そのままC美さんと子どもが寝ている布団に一緒に潜り込んで寝ていたのだった。

朝目が覚めたC美さんが見たのは、通勤時と同じ服で汚れた靴下を履いたまま、子どもの覆いかぶさるようにしてイビキをかきながら眠っている夫の姿だったという。「ウイルス対策云々の前に、とにかく汚くて臭い夫のことが生理的に嫌になり別れるしかないと思った。子供まで汚されるようでたまらなかった」。

その日以来、夫の顔を見るたびに嫌悪感を抱いていたC美さんだったが、先日、洗面台の前で子供が夫に真剣な顔で話しているところを偶然目撃した。「パパ、ちゃんと手をゴシゴシして。そしたら、ママと仲良しだよね?」と夫に懇願する子どもの横顔を見て反省。夫婦の問題で子供に気を遣わせて申し訳なかった、という気持ちになったという。

夫に対する愛情は薄れることがあっても、子供たちにとっては大切な父親である事実は変わらない。そう考えることで、子供を持つ夫婦が離婚の危機を回避できるケースは少なくない。

■価値観の違いを擦り合せ続ける努力が大切

新型コロナウイルスがきっかけで夫婦や家族の関係にダメージを及ぼさないためには、目に見えない敵と戦う同志のような連帯感を持つことが大事。一緒にいる時間が長くなることをネガティブにとらえず、「せっかくだから」「こういう機会にこそ」というスタンスで、普段はできない夫婦や家族ならではの小さなイベントを楽しむのもおすすめだ。

夫婦間では、「基本的な思いやり」が心に染みる時期ともいえる。在宅勤務となり、家で仕事をこなしているのなら、お互いに「おつかれさま」「大変なのに頑張っているね」などと応援の姿勢を見せる。妻が専業主婦なのであれば、夫は家事を手伝った後、「普段、家事や育児がどれだけ大変かわかったよ」「いつもありがとう」といった感謝の言葉をかける。そんなふうに、お互いをサポートし、相手の努力を言葉でねぎらう「基本的な思いやり」が新型コロナ離婚に歯止めをかけるのだ。

結婚生活が長くなると「言わなくてもわかるだろう」「察してくれるのが当然」と慢心しがちだが、コミュニケーションを面倒くさがった結果、離婚にいたって後悔しているケースは山のように存在する。決定的な溝を生んでしまう前に“打つべき手”は必ずあることを忘れないでほしい。

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岡野 あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。

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(夫婦問題研究家 岡野 あつこ)

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