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あなたvs不眠「大規模研究で判明した"よく眠れる色"」

プレジデントオンライン / 2020年4月10日 9時15分

Getty Images=写真

■安眠には室温18度以上、WHOが“強く勧告”

暗いニュースが続く最近、「不眠」に悩む人もいるだろうか。もともと春は、異動や引っ越しなどで環境が変わったり、気温差が激しいため、睡眠の質が低下しやすいといわれる。

スッキリ爽やかな朝を迎えられるように、最新研究に基づくベストな睡眠環境を紹介しよう。まずは「睡眠時間」についてだが、日本睡眠学会理事で秋田大学大学院医学系研究科の三島和夫教授が「短すぎても長すぎても心身に良くない」と指摘する。

「睡眠不足では免疫系に問題が起き、感染症にかかりやすくなるリスクが高まります。一方で、今日は暇だからと6時間ずつ二度寝して12時間眠った場合、起きてからボーっとしませんか。それが心地よさにつながらなければ、惰眠をむさぼるのは、いいことは何もない。長時間睡眠とうつ傾向との関連もいわれています。十分な休養を大幅に超えて眠ると、かえって副作用が出るのです」(三島氏)

必要睡眠量は年齢とともに短くなる。世界中の研究で、8時間以上眠れるのは中学生くらいまで。40~50代では6時間台、70代は平均6時間を切る。

「毎日忙しく働いているときは寝不足で、仕事が休みの日にドカンと10時間くらい眠る日もあるでしょう。しかしそれを“健康的な眠り”だと勘違いし、いつも8時間寝なきゃ、昨夜は2回も目が覚めてしまったからダメという発想にはまりこむと、ベッド恐怖症になり、不眠症へつながっていく。不眠症は不眠症状を気に病んで起きる一面もあるのです。出張先で枕が変わって眠れないというのが一般的ですが、自宅の寝室ではない出張先のほうが眠れるのが不眠症です」(同)

不眠症に陥らないためには、快適な睡眠環境を整えることに気を配りたい。とりわけ「室温と湿度」が重要になる。暑いと眠れないのは誰しも理解できるが、実は寒くても睡眠に悪影響があるのだ。WHO(世界保健機関)は2018年、「住宅と健康」に関する新しいガイドラインを発表し、「室温18度以上」を“強く勧告”している。

■12度を下回ると体への負の影響が出やすい

寒い季節に寝室をそれほど暖かく保つのは難しいが、特に12度を下回ると体への負の影響が出やすいことが国内外の多くの研究で報告されている。ちなみに「布団をたくさんかけて暖かくすればいい」という考えはやめたほうがいい。布団の重さで寝返りが打ちづらくなる、つまり睡眠中に「動けないこと」が体の一部に過剰な負担をかけ、これも睡眠の質を低下させる要因になる。

寝室が肌寒いときには暖房器具を使用することをお勧めするが、そこで問題になるのが空気の乾燥だ。慶應義塾大学の伊香賀俊治教授らの研究で、寝室の乾燥を感じる群は、感じない群と比べて中途覚醒をする確率が2.9倍、いびきをかく確率が1.6倍高くなっている。エアコン暖房なら加湿器を併用したい。ただし湿度過剰はカビ発生の要因になるため、加湿は最大でも湿度計で60%までに抑えよう。

また、良い睡眠と「食」にも深いつながりがある。ポイントは“幸せホルモン”といわれるセロトニンの材料となる、トリプトファンを日々の食事から摂取すること。管理栄養士の望月理恵子氏が「トリプトファンはアミノ酸の一種で、豆腐や納豆、味噌などの大豆製品、豚肉に多く含まれている」と解説する。朝にこれらの食べ物を取り、日光をしっかり浴びることで日中にセロトニンが増え、夜になるとセロトニンが眠りのホルモンである「メラトニン」に変わり、自然な睡眠状態に入りやすくなるのだ。

さらにビタミンB6、カルシウム、マグネシウムも積極的に摂取を。「セロトニンを含む神経伝達物質を放出する際に必要な栄養素」(望月氏)という。

「質の良い睡眠には、寝るときに胃が休まることも大切。満腹だと寝つきが悪くなるので、遅くとも布団に入る2時間前には食べ終えたいですね」(同)

■年中OKの万能カラー“緑色”で健やかに起床

そして驚くべきことに、部屋の「色」も睡眠に影響を与える。英国で2000世帯の「寝室の装飾色と睡眠時間」を調べたユニークな大規模研究がある。その報告によると、最も睡眠時間が長い部屋の色は青、次に黄(クリームイエロー)、そして緑と続く。一方で睡眠に適さないと思われる色は紫、茶、灰色であった。最も睡眠時間の長い結果となった「青色の部屋」と、最も睡眠時間が短い「紫の部屋」でおよそ2時間も差があったのだ(図)。

「良い睡眠」にはこれを食べたい!/「よく眠りたい人」が選びたい色、避けたい色

色彩専門家の南涼子氏(日本ユニバーサルカラー協会代表理事)がこう話す。

「色は大脳で認識され、感情の中枢である『扁桃体』や、ホルモンの分泌を促す『視床下部』、記憶を司る『海馬』を刺激します。ですから、色は情緒を安定させたり、心身に大きく作用する。季節ごとにカーテンや布団カバーなど寝室を彩る色の見直しを。夏なら青などの寒色系で爽やかさと涼しさを、冬なら黄やオレンジなどの暖色系を利かせると体感温度にも良い影響が出ます」

一年を通して、また世代を問わず良いのは緑色という。中性色のため暑さも寒さも感じにくい。緑は自然に目のピントが合うため、見るのに余分な力を必要とせず、筋肉を弛緩させて緊張を解きほぐし、“気分の安定”につながるという報告もある。

「前出の研究でも、緑の色調で装飾された寝室で眠る人の5分の1が“前向きな気分”で目覚めています。寝室を一色に揃えるのは難しくても、布団や枕カバー、カーペットなどはできるだけ同系色のものを選びたいですね。赤と青のように、対比する色は人を落ち着かない気分にさせます」(同)

赤色は交感神経を刺激して緊張や怒り、活力に影響するという報告があり、青色は鎮静作用があって人を眠たくさせる。そのため目覚めのコーヒーを飲むときのマグカップなど、起き抜けに手に取る物の色を赤にすると良い。どんな色も“使いよう”だ。

一方で「眠りを妨げる」色の紫は、インスピレーションを刺激し、悪夢を見やすいという考察が報告されている。茶色、灰色はどちらも感情が湧きにくく、孤立した気分になりやすいよう。

「紫、茶色、灰色は“落ち着きのない睡眠”をもたらすといえます」と南氏。

寝具によく使われる「白」も、体を緊張させて覚醒させるため、睡眠に不向きという。白系を使いたいなら明るさを抑えた柔らかいアイボリーや、温かみのあるオフホワイトを。

色は視覚だけでなく皮膚でも感じられる。そのためパジャマや下着など就寝時に身につける物も「快眠につながる色」から選ぶといいだろう。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)など。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子 写真=Getty Images)

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