ギターの弾けないギタリストを救った「首ぐるぐる体操」のやり方
プレジデントオンライン / 2020年4月23日 11時15分
※本稿は、石井克昇『不調が消え去る脳バランス体操』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■パターを打とうとするとガチガチになる「イップス」
私の治療院、石井堂(代田橋本院)は、東京・杉並区にあります。最寄り駅を降りて甲州街道を渡り、7~8分ほど歩いた商店街の中ほど。見た目から言えば、ごくごく普通の町の治療院。ほかのところと比べて、大きく違っている点はないでしょう。
ここで私は、柔道整復師などの資格で患者さんの施術に当たっています。見た目こそ、よそとほとんど変わりませんが、当院にはほかの治療院にはない特色があると考えています。それが、イップスを治療対象としている点です。
イップスにはいろいろな定義がありますが、ここでは最もわかりやすく、以下のようにしておきましょう。
イップス=スポーツなどの特定の局面で、今まで普通にできていたはずの行動ができなくなる運動の障害
最もわかりやすいのが、ゴルフのパターです。パターを打とうとすると、とたんにガチガチに緊張してしまって、思うようにボールが打てなくなる。緊張するまいと思えば思うほど、体がこわばり、結局、失敗をくり返す。こうした症状です。
■イップスに悩む著名人が治療院を訪れる
イップスの治療を看板に掲げている治療院は、それほど多くありません。そのため、当院には、以下のようなイップスの症状に悩む著名人たちがたくさん訪れます。
・ギターが弾けなくなったギタリスト
・パターが打てなくなったゴルファー
・ボールが投げられなくなった野球選手
・声が出なくなった声優
・歌えなくなったボーカリスト
プロゴルファーがパターを打てなくなったり、プロ野球選手がボールを投げられなくなったりするなど、その動作自体を本職として行う人にも、イップスは起こりえます。
また、スポーツに限らず、歌手や声優といった職業なら「声を出す」「歌を歌う」といった行動に支障をきたすこともあります。
■書痙、眼瞼痙攣、階段恐怖などもイップスの一種
イップスはいったん発症すると治りにくく、「どうして、こんなことになってしまったのか」と当人も当惑するばかり。また、イップスの症状は、同業の仲間などには気軽に相談しにくいこともあって、いよいよ悩ましいことになります。
![石井克昇『不調が消え去る脳バランス体操』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/a/200/img_fa602ea4f688675e3708c67981946622203354.jpg)
先に挙げたようなプロの人たちに限らず、一般の人も、イップスに悩まされるケースは想像以上にたくさんあります。さらに、イップスの範囲をもう少し広げて、日常的に“イップス的な症状に悩む人”となると、さらにその数が増えることになります。
文字を書くときに手が震えてしまって書けない(書痙)、目を開けていられない(眼瞼痙攣(けいれん))、階段が恐くて下りられない(階段恐怖)などの症状です。
私がイップスや、イップスに近い症状を治療対象とし始めたのは、2018年のことになりますが、そのうち、インターネットや口コミで当院の評判を聞きつけた患者さんが多数訪れるようになりました。
インターネットで「イップス」と検索すれば、当院の名前をすぐに見つけることができるでしょう。先に挙げたようなプロフェッショナルの人たちも、当院を訪れて私の施術を受けています。
その結果、ギタリストはギターが以前のようにスムーズに弾けるようになり、ゴルファーはパターが打てるようになり、野球選手はボールが投げられるようになり、声優は声が出るようになり、ボーカリストは歌えるようになりました。
このように、イップスに特化した治療を行っているところが、当院の特色の1つと言えます。この難治性のイップスに対して、大きな成果をもたらしている治療法こそ、脳バランスの考え方であり、その実践編である「脳バランス体操」です。
■脳バランス体操は首・腰・目玉で行う
脳は、右脳と左脳に分かれています。この左右の脳機能のバランスが乱れると、全身に悪影響を及ぼすと私は考えています。そして、イップスの患者さんには、脳バランスが乱れている人が多いことがわかっています。
そこで、機能が低下している側の脳に刺激を与え、脳バランスを回復させるための基本エクササイズが「ぐるぐる体操」です。
ぐるぐる体操は、3つのパート(首、腰、目玉)からなります。ここでは、「首ぐるぐる体操」を紹介しましょう。やり方は以下の通りです。
![『不調が消え去る脳バランス体操』(KADOKAWA)より](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/7/670/img_578d1c7c5cac09faa9303fa901874453283644.jpg)
(1)前、右前、右、右後ろ、真後ろ、左後ろ、左、左前の8方向にそれぞれ首を傾け、首の痛み・張り・違和感が生じるところを探す
(2)問題のある箇所が見つかったら、その方向に首を傾けたまま5秒キープ
(3)首を元に戻し、おへその下にある丹田を左手で押圧しながら、息を吐き切る
(4)吐き切ったところで、左手の甲を右手のこぶしでポンと叩いて刺激する
*首を反対に回して、同様に(1)~(4)を行う
首のぐるぐる体操は、立って行っても、イスに座って行ってもOKです。首の回し方が速すぎたり、首の傾け方が弱かったりすると、首の調子の悪いところを正確に探し出せません。
■きちんと刺激できれば直後から楽になる
8つの方向できっちりと首を曲げ、もしも、突っぱるところなどが見つかったら、その状態を5秒キープし、悪い状態をよく引き出すように心がけてください。首を回したとき、1カ所ではなく、いくつか複数の箇所で、違和感を抱くことがあるかもしれません。
時間的に余裕のある人は、それぞれの箇所に、同じ刺激を行ってください。時間がない人は、その中で最も強く違和感を抱く場所や、痛みを感じる場所に刺激を行えばよいでしょう。
首ぐるぐる体操が終わったら、もう一度、突っぱりのあった方向に首を曲げてみてください。きちんと刺激ができていれば、体操の直後にすでに、効果が出ていることがわかるでしょう。具体的には、突っぱり感や違和感がある程度、楽になったり減ったりします。また、1回で違和感がすっかり消えてしまう人もいます。
■機能低下している部位を活性化させる
ぐるぐる体操のメインの目的は、脳に刺激を送り込み、機能低下した脳の部位を活性化させることです。つまり、ぐるぐる回したときに、痛みがあったり、可動域が狭くなったりしているということ自体が、脳の機能低下の端的な現れなのです。
そこを刺激することで、神経を介して刺激をフィードバックさせ、乱れた脳バランスを整えることが、この体操の大きな目的と言っていいでしょう。
また、丹田についても触れておきましょう。私の治療院では、施術で関節に振動刺激を与えて、滞った神経の流れをよくすることを目指します。すると、関節の受容器から振動刺激が入り、神経を介して、脳への有効な刺激となるのです。
これと同じことを、丹田への刺激によって行います。東洋医学では、いわゆる「気」という一種の生命エネルギーが滞りなく循環することで、生命現象を支えていると考えます。丹田は、この気の循環の最も重要なポイントとされる場所です。
つまり、丹田への刺激は、気のエネルギースイッチを押すことになります。その刺激が、低下した脳機能を活性化させる“稼働スイッチ”の役目を果たすと考えてもらえばよいでしょう。
■なぜ脳バランス体操で不調が消えるのか?
脳バランスが乱れると、小脳の働きも乱れてきます。小脳は、体をスムーズに動かしたり、筋肉をうまく協調させて運動させたりするときに重要な働きをしています。その小脳の働きに異常が起こる結果、イップスのぎこちない動きが生じてくると考えられるのです。
脳バランス体操は、機能低下した脳に刺激を送ることで活性化させ、脳の機能不全を回復させます。「首のぐるぐる体操」をしたときに痛みや違和感、突っぱりがあるところは、首の神経の流れが滞っています。それが、機能低下した脳への有効な刺激ともなるのです。1分あればできますので、1日1回、毎日継続してください。
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石井堂クリニカルオフィス・石井堂街の接骨院代表
柔道整復師。ICC国際コーチング連盟認定コーチ。アクティベータ・ネットワーク・ジャパン上級認定。米国やカナダで信頼を得ている施術法「アクティベータ・メソッド」を駆使した治療を行う。2012年、石井堂街の接骨院を開業。脳の記憶と条件付けが及ぼす心身の不調へのケアを専門とする。神経学、東洋医学、心理学、コーチング、脳の誤作動記憶の調整法(心身条件反射療法)を学び、不調な心身を健康へと導くセルフケア「脳バランス体操」を開発。治療院には一流アスリートやアーティスト、モデルなど多くの著名人も訪れる。
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(石井堂クリニカルオフィス・石井堂街の接骨院代表 石井 克昇)
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