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コロナ禍でKFCが見せた底力…「新王者誕生」で外食の明暗はっきり

プレジデントオンライン / 2020年4月10日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pjohnson1

“コロナ不況”が叫ばれる中で、早くも明暗が分かれているのが飲食業界だ。「今年7月に創業50周年を迎える日本KFCホールディングス(以下、ケンタッキー)は、低迷する飲食業界の中で快走を続けています。2020年3月期の通期の見通しは、売上高744億円から800億円に上方修正を発表しています。コロナ不況の影響下でも、さらなる成長が期待できます」。そう語るのは、人気アナリストの馬渕磨理子氏。いま、ケンタッキーがなぜ強いのか。その理由を解説する。

■V字回復の裏に、クリスマス商材からの脱却

今からわずか2年前まで、ケンタッキーの利益は最悪でした。18年の経常利益は6.2億円と過去最低水準まで落ち込んだものの、19年3月期には前年比4.6倍の29億円にまで回復を見せています。なぜここまでV字回復を果たせたのでしょうか。

最大の理由は、“日常食”へのシフト。いま、ケンタッキーは消費者から日常的に選ばれているのです。それは、高畑充希さんが出演するテレビCMを見ても明らか。このCMにおいて、彼女が最後に口にするセリフは、「今日、ケンタッキーにしない?」。

従来のキャッチコピーは「やっぱり、ケンタッキー」でした。わずかなセリフの違いですが、両者で消費者に訴求したいメッセージが大きく異なっていることが理解できるはずです。

ほかにも、持ち帰り需要を狙って家庭の夕飯の食卓にケンタッキーが並んでいる演出のCMもあります。

しかし、ここで疑問が生まれます。クリスマスのような“非日常食”のイメージが強いケンタッキーは、いかにして日常食へと変貌を遂げたのでしょうか。

■500円ランチが一年中選ばれる外食に

そもそも、ケンタッキーが日常食にシフトしたのは、慢性的に抱える“初夏の落ち込み”がありました。同社の月別売上高の推移を見ると、月ごとのバラツキがかなり大きいのです。

毎年、繁忙期の12月に比べ、初夏の時期である4~7月は需要が半分近く落ち込んでいたのです。

そこで、ケンタッキーは年間を通じて食べられる外食に選ばれるべく、2つの改革を実行したのです。

一つは500円ランチ。これは、18年7月から何度か期間限定で販売していましたが、あまりの好調をうけ、20年1月6日からレギュラーメニューとして定着しました。消費増税で家計が苦しくなる中、ワンコインで食べられる手軽さと美味しさを兼ね備えた500円ランチは、一年中選ばれる外食となったのです。

では、「500円ランチ」と聞いてどのようなメニューを思い浮かべるでしょうか。フライドチキン1本にドリンク? 違うのです。この500円ランチ、その中身はかなり大盤振る舞いなのです。たとえば、「Sランチメニュー」の中身は4点。「オリジナルチキン1ピース(単品250円)」、「特製ハニーメイプルをかけて食べるビスケット1個(単品230円)」、「ポテトS1個(単品230円)」「ドリンクS1個(単品200円)」。なんと、すべて単品で購入した場合、合計910円(税込み)するセットが、500円で食べられるのです。

■知られざる、ケンタッキーの歴史的大改革の裏側

そう、ケンタッキーのランチが提供しているのは、“お得感”ではなく、本当の“お得”なのです。

二つ目は、期間限定のキャンペーン商品です。

昨年6月、ケンタッキーは創業49年を記念した「創業記念パック」を発売し、こちらも売上に大きく貢献しました。その中身は1000円パックと1500円パックの2種類。1000円パックはオリジナルチキン5ピースが入り、1500円パックはこれに加えてポテトBOXがついているだけという極めてシンプルなメニュー構成です。このシンプルさがケンタッキーのファンを強烈に惹きつけ、12月以外の年間を通じて来店者数を伸ばした要因と言われています。

こうして、ケンタッキーは堅調な12月以外の需要も引き上げたのです。

さらに冒頭で言及したCM戦略にも大きな改革がありました。多くの飲食チェーンは新メニューや期間限定メニュー開始のタイミングで集中的にCMを打つ傾向にあります。ところが、ケンタッキーは日常食であることをアピールするために、恒常的にCMを流し続けました。これはケンタッキーの歴史上大きな改革だったと言えるでしょう。

■コロナ禍でもこのまま好調ぶりは続くのか

では、現在のケンタッキーの好調ぶりはこのまま続くのでしょうか。それは50周年キャンペーンの初動を見ると「イエス」と答えられるでしょう。

今年3月13日、同社は初めてのオフィシャルブック『KFC50th Anniversary やっぱりケンタッキー!』を発売しました。この書籍はアマゾンカテゴリーランキング1位(3月13日時点)を記録し、在庫切れになるほどの人気ぶりを発揮しました。

人気の理由は、特別付録である「期間中、何度も使えるTHANKSパスポート」。その中身は、オリジナルチキンのセットやチキンフィレサンド、ポテトやドリンクなどの割引が受けられるクーポンカードで、なんと21年3月末まで何度でも使い放題というもの。つまり、クーポンを書籍という形で発売し、事実上のプロモーションとして活用したのです。

この書籍発売により、“日常使い”の新規需要を喚起しただけでなく、ケンタッキーはファンを増やすことに成功しました。こうした精緻なマーケティング施策が功を奏したのがケンタッキーのこの2年間の歴史と言えるでしょう。

■コロナショックすらも味方につけた「令和の新王者」

最後に、今年懸念されているポイントについても予測を示します。現在、“コロナ不況”の打撃を受けてる外食産業ですが、ケンタッキーは、その影響をどの程度受けるでしょうか。

2月の全店売上高は、前年比115.5%。この時点ではコロナの影響を受けていないと言えます。当然、外出自粛要請が出た3月以降は、影響を受ける可能はあるものの、テイクアウトでの需要が高まる可能性はかなり高いと言えます。

実は、ケンタッキーは3月4日のタイミングで新メニュー「シェアBOX」を発表しました。これは2種類のチキンを選べるチキンBOXで、実質1000円以上お得に買えるメニューとなっています。リモートワーカーが増え、巣ごもり消費が増加する中で、同社はきっちりそのニーズも抑えているのです。

まさに令和外食産業の新・王者と言えるケンタッキー。コロナショックすらも味方につけるそのマーケティング施策には今後も注目です。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、株式会社フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。ロイター・ブルームバーグ・yahoo!ファイナンス、雑誌プレジデント、テレビCMなど多数出演。

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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)

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