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コロナでわかった真実「やっぱり日本には菅義偉が必要だ」

プレジデントオンライン / 2020年4月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

■安倍政権の危機管理能力について、疑問視する国民が急増

安倍政権の危機管理能力について、疑問視する国民が急速に増えている。「幾多の政権の危機に対し、それらを乗り越えてきた安倍政権が急速に支持を失いかけている理由」とは一体何だろうか。表面上、安倍晋三首相を補佐する主要な人事体制に変化は起きていない。政権を支えてきた麻生太郎副総理兼財務大臣、菅義偉官房長官、二階俊博幹事長らの布陣は、過去の政局および選挙において難なく敵対勢力を蹴散らす鉄壁の強さを発揮してきた。

このような盤石な政権運営は誰の手腕であったのだろうか。今回の新型コロナウイルス問題への対処を通じ、安倍政権の政権運営において菅官房長官の役割が極めて重要であったことを再確認するべきだろう。

新型コロナウイルス問題が深刻化している米国では、ドナルド・トランプ大統領が同問題の対策のための責任者としてマイク・ペンス副大統領を任命している。米国という巨大国家の官僚機構と民間企業らとの調整役を果たし、各種メディア対応などでも活躍し、その評価が高まることで「ポスト・トランプ」、つまり次期大統領候補者として脚光を浴びつつある。トランプ大統領にとってはイザというときに信頼して任せることができる政権の背骨となる存在がペンス副大統領だと言えるだろう。

■安倍政権内で誰が責任者なのかもよくわからなかった

ペンス副大統領の実直な姿勢は、菅官房長官のような実務家気質の雰囲気と通じるものがある。そして、トランプ大統領の新型コロナウイルス対策に関する初動についての世論調査の数字も上々となっている。安定した政権運営を望むなら、その番頭役が効果的に機能することは欠かすことができない。

一方、新型コロナウイルス問題への対応において、安倍政権の初動に関する評価は国民の間で必ずしも高い支持を得ていない。安倍政権内で誰が責任を持ってこの問題に対処しているのかという基本的な事柄ですら、3月6日に西村康稔経済再生担当大臣が新型コロナウイルス対策の担当大臣に任命されるまで国民の目には明らかではなかった。

実際、各種報道から垣間見られる安倍政権の行動は政府与党として整然としたものとは言えないものであった。日本で新型コロナウイルス問題が最初に大きな注目を浴びた出来事は、横浜港に寄港した豪華クルーズ船問題であった。問題発生当初、隣国中国では既に大混乱が発生していたが、日本では感染症対策本部は立ち上がっていたものの、加藤勝信厚生労働大臣が悪戦苦闘する中で、小泉進次郎環境大臣らは同本部の会議をサボって地元会合に参加している程度の極めてまとまりのない状況となっていた。そして、さまざまな悪条件が重なった結果として、欧米メディアの過剰報道等も相まって、同クルーズ船への対処は日本の危機管理体制に対して世界から疑問を呈されるシンボルとなってしまった。

■安倍政権は菅官房長官の力を借りるべきだった

その後、2月27日には、文部科学省との十分な調整が行われていないにもかかわらず、安倍首相は突然の記者会見で小中高校休校について地方自治体への要請を行った。この唐突な要請によって、子どもの世話と仕事の都合との間に挟まれた保護者が日常生活の段取りの急な見直しを迫られることになり、少なくない国民の間に安倍政権の強引な対応への不平が生まれることになった。

安倍政権の危機管理力が問われた新型コロナウイルス問題の初動対応において、菅官房長官の影は一貫して薄いものだった。特に2月27日の小中高校の休校要請という重要局面において、菅官房長官はその意思決定の場から外されていたとされている。内政における調整役として重要な機能を担ってきた菅官房長官をスポイルしたことで、調整不足の強引な政権運営が発生し、上記のような混乱が生まれたと見ることもできるだろう。

3月24日には安倍首相と国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が東京オリンピック・パラリンピック延期で合意した後、小池百合子都知事が東京都民に週末の外出自粛を呼びかけるとともに、緊急事態宣言発令を可能とする特措法に基づく政府対策本部が立ち上げられる状況となった。

■アベノマスクの愚策に世界が冷笑

この緊急事態宣言発令が間近に予期される切迫した動きの中で、その週末の3月29日に菅官房長官の姿は、東京ではなく沖縄県内で観光業界をはじめとした経済人らとの会合の場にあった。沖縄訪問の目的は6月の沖縄県議会議員選挙に向けたてこ入れとされているが、危機管理の要である官房長官の出張として不要不急のものであることは間違いない。この出来事は、菅官房長官が首相官邸の中で置かれている状況を窺い知ることができるものだった。

4月1日のエイプリルフールかと揶揄(やゆ)されたアベノマスク(1世帯・布マスク2枚)の1億枚配布などに代表される安倍政権の国民への支援策も極めてチグハグな印象を人々に与えている。このアベノマスクは4月2日付の朝日新聞の報道によると、安倍首相が官邸官僚の発案によるものを採用したとされている。この愚策に対し自粛が長引く中で経済対策を待ち望んでいた有権者からは怒りが寄せられ、ブルームバーグら海外メディアに冷笑される始末となった。

■第1次安倍内閣の末期を彷彿とさせる今

政権発足当初の力強いリーダーシップでアベノミクス政策を推進してきた首相官邸の姿は失われており、4月7日に経済対策案がまとまるまでの間に、自民党の政調部会に押し掛ける利益団体向けの和牛商品券らの報道が飛び交い、金額・対象が二転三転する現金給付などの観測気球記事が次々と国民の目に飛び込んできた。実際、巨額の経済対策ともなればさまざまなプレーヤーがかんでくることは必然的なことであるが、国民が世論調査で最も望んでいた消費税減税の声を無視し、利権に群がる人々の声がメディアを通じて垂れ流し状態になった姿は実に醜悪なものであった。

その結果として、最終的にまとめ上がった経済対策は事業規模こそ100兆円超えの大規模なものとされているものの、必ずしも国民からの評価が高いとは言えない。露骨に各省庁や利益団体と調整した政策パッケージは、その内容について中途半端な印象を国民に持たれてしまっている。これもやはり首相官邸による危機管理および各種調整力が弱まり、安倍政権が迷走している姿を露呈した事例と言えるだろう。むしろ、安定感を失った行政運営のありさまは第1次安倍内閣の政権末期の姿を彷彿とさせるものとなっている。

■菅長官という大黒柱を政局理由で蔑ろにした大罪

米国の新型コロナウイルス被害は日本の現状よりも遥かに深刻な状態だ。それにもかかわらずその危機管理の手腕に対して一定の評価を得ているトランプ政権と国民からその能力について疑問を抱かれかねない安倍政権との間で違いが生じる理由とは何か。危機管理に際して政権の番頭役をしっかりと機能させているか否か、ということは極めて重要なポイントだ。

強力な指導力が発揮される組織運営には、トランプ大統領とペンス副大統領の関係のように、トップと番頭役が役割分担を徹底して協力関係を構築することが欠かせない。しかし、現在、永田町では安倍首相はポスト安倍を狙っていたとされる菅官房長官との間に距離ができていると噂(うわさ)されている。

新型コロナウイルス問題という安倍政権にとっての最大の国難に対し、同政権を支えてきた菅官房長官という大黒柱を政局上の理由で蔑ろにし、首相官邸が機能不全に陥りかねない状況を作り出されているとしたら、それは安倍政権にとって致命的な判断ミスだと言えるだろう。そして、それは国家の危機に際して安倍政権のリーダーシップに期待する国民の声を裏切る行為でもある。

今のままでは歴代最長政権を築いた安倍政権の実態は「菅政権であった」と後世で揶揄されることも十分にあり得る。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。米国共和党保守派やトランプ政権と深い関係を有する。

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(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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