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緊急事態!コロナでヒヨコが爆買いされている

プレジデントオンライン / 2020年4月14日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/johnnyscriv

■アメリカではヒヨコがバカ売れ騒ぎに

新型コロナウイルス騒動で、全世界で買い占め騒動が起きています。多くの人が知る共通の買い占め品としては、「手指消毒液(アルコール)」「マスク」「食料品」などが挙げられます。しかし国によって、不思議なものも買い占められています。コロナ禍に端を発する世界的に不安な心理下で、人々は何を求めているのでしょうか?

まず、米国では「ヒヨコの爆買い」が起きています。

3月28日付の米ニューヨーク・タイムズ紙の記事では、米・アイオワ州にある、孵化施設のトム・ワトキンス副社長の話してとして「人々はトイレペーパーを爆買いしたように、チキンを買っていっている」と紹介しています。同施設では4週間ほどは品薄状態が続く見込みだといい、買い占め騒ぎとなっています。ニューヨーク・タイムズはこの現象を以下のように説明しています。

「人々は厳しい局面におかれると『鶏』が欲しくなるようだ。ヒヨコの売り上げは、株式市場の低迷しているときや、大統領選挙の年にも上昇する」

多くの日本人にとっては、「厳しい局面になると『鶏』が欲しくなる」というその心理を不思議に思うかもしれませんが、4年に一度の大統領選挙の年にもヒヨコの売り上げが上昇するということから、アメリカではそこまで珍しい話でもないようですね。

■ヒヨコを買った40代女性の言い分

では、なぜそういった“不安定”なときにアメリカ人はヒヨコを買うのでしょうか。今回のコロナ禍でのヒヨコ需要増の背景には、食料源確保と、社会的孤立を癒やすため、という2つの理由が主にあるようです。

ニューヨーク・タイムズの同じ記事では、ヒヨコを購入したテキサス州に住む40代女性ミュージシャンの話を紹介しています。彼女はもともとヒヨコを買うつもりなどなかったそうですが、コロナの影響で仕事がキャンセルされ、「急に時間ができた」といいます。

その一方で、アメリカでは急激に卵の需要が高まりました。米農務省によると、同記事が出た前の週、米国では卵の価格が50%上昇した所もあり、卵の供給が追いつかない店も出ているそうです。

「一人あたりの年間卵消費量(2017年)」によると、日本は19.64kgであるのに対し、米国は15.57kgと日本の80%程度の消費量に留まっています。日本人ほど卵が好きではない米国人が、パニック下で「卵」という栄養豊富な食料源の確保に急ぐのは食料品買い占めの延長線にあるとみられます。将来の先行き不安から、卵という食料源の確保のために米国人はヒヨコを買うのも理由の一つではないでしょうか。

■ヒヨコは希望に満ちている……

そんな中、前述の女性は「みんながヒヨコの爆買いを始める前に……」と、雌を4羽、雄を1羽、購入することにしました。「どうせやることがないので、何か楽しい暇つぶしを探していたところだった」と振り返ります。

女性は鶏を購入した理由の一つにフードセキュリティー(食料安全保障、食料の確保)も挙げます。仕事がいつ正常に戻るかわからないとし「安定した食糧源を確保することは、今はいい考えだと思っている」と話します。

ただ、鶏が卵を産み出すのは孵化後5~6カ月と、結構先の話です。そもそもニューヨーク・タイムズによれば、卵の供給量が減っている、というわけではないそうです。

ニューヨークタイムズはこう続けます。

「ヒヨコたちは食糧確保以外の観点でも、彼女に『安心』を提供しています。『ヒヨコが育つのを見ていると、希望が満ちてくるのです』と彼女は話します」

■救助の手を差し伸べたい気持ちは万国共通

米国人がヒヨコを買う理由は、食料源の確保に限った話ではないようです。もう一つの理由は「弱いものを愛で、守りたい」という庇護欲からきているのではないでしょうか。

災害時には誰しも「困っている人を見たら助けたい」と思うものです。自分の置かれた状況より困った人を見て「救助の手を差し伸べたい」と気持ちが奮うのは万国共通です。

特に現在のような世界的災害で、身分や立場を超えたアタックがあるような状況下においては、頼りになる存在は多くはありません。皮肉にもウイルスとの戦いにおいては、極めて平等に世界中すべての人が不安に満ちています。

そんな中、湧き上がる庇護欲にも掻き立てられているのでしょう。そして興味深いことに、庇護欲で相手を守りながらも、その実孤独を癒やされているのは自分自身であるようです。彼女は社会から切り離され、孤独に陥る人を適度に忙しくさせてくれる存在のように捉えているようです。

■日本では児童書が絶好調!

米国でヒヨコが爆買いされるなか、日本国内においては、「書籍」の売れ行きが好調です。

国内の大型書店を中心に児童書や学習参考書がよく売れており、紀伊國屋によると「休校特需」で学習書が1.5倍増しの売れ行きを見せています。また、書店だけでなくフリマアプリのメルカリでは「絵本」の売り上げが休校に入るタイミングで急騰しています。

実は、米国においても同様です。外出自粛で休校となり、大学などではオンライン授業への移行も起きています。「学校が休みでも、我が子には教育を」と考えるのは万国共通。米国のアマゾンでは書籍が日本同様に「学習ドリル」「絵本」がよく売れています。米国のアマゾンの書籍売り上げトップ10の内、半数以上を占める結果となりました。

また、「欲しい物リストの書籍(most wished for in books)はほぼ、絵本や児童書で埋められています。

休校や自宅待機を受けて、親が子供に書籍を買い与えている動きが出ているのです。

さて、いくら本をたくさん買い与えたところで、エネルギーを持て余す若者を自宅に閉じ込めておくことは、彼らにとっても非常にストレスフルであることは容易に想像ができることです。そんな外出できない彼らが向かった先は「バーチャル世界」のようです。

■スイッチはソフト好調も不思議な事態に

任天堂のゲームソフト「どうぶつの森」シリーズの最新作「あつまれ どうぶつの森」は3月20日に発売後、わずか3日間で188万本という脅威の売り上げを記録しています。これは「ニンテンドースイッチ向けソフト」では歴代1位の初週販売本数です。

本作はただのゲームではなく、現実世界と同じく「時の流れ」が存在します。プレーする時間帯によって遊べる内容が異なり、季節のイベントが用意されているのです。

現実世界はコロナ禍で思うように外出できない鬱憤を晴らす形で、ゲーム内で思い切り外出を楽しんでいるのでしょうか。

なお、ニンテンドースイッチ本体は製造を担うサプライチェーンへのダメージ、およびキャッシュレス事業者の過剰なキャッシュバックキャンペーンの影響を受けて品薄になっているようです。ソフトは売り上げ好調な中、本体が品薄というコロナ禍の影響がここにもありました。

一連のコロナ禍は、人間の不安心理からくる購買行動をまざまざと映し出すことになりました。世界には様々な国がありますが、共通する買い占め、その国特有の買い占めがあり、文化人類学的に見て興味深い結果といえるのではないでしょうか。

※英文記事の翻訳については筆者の意訳が含まれます。

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黒坂 岳央(くろさか・たけを)
フルーツビジネスジャーナリスト
果物専門店「水菓子 肥後庵」代表者

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(フルーツビジネスジャーナリスト 黒坂 岳央)

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