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「早稲田vs慶應」個性的な大学はどっち?

プレジデントオンライン / 2020年4月25日 11時15分

大学間の競争は新たなフェーズに突入している。 - 日刊スポーツ/アフロ=写真

■「ポスト偏差値」はスクールカラーだ

グローバル化や、人工知能の発達などの状況を受けて、世の中の価値観は変化しつつある。教育においても、ペーパーテストの点数に基づく「偏差値」という基準はすでに崩壊し始めている。

これからの時代に大切になるのは各学校の特色、いわゆる「スクールカラー」であろう。それぞれの学校がどのような基準で生徒を募集して、何を目指して教育をするのか。教育機関が個性の競争をする時代が始まっている。

東京の大学で言えば、「早稲田」と「慶應」はそのスクールカラーの対照が興味深い。私学の両雄として、競い合い、並び立つ両大学だが、そこには良い意味で個性の切磋琢磨があるように思う。

私自身、早稲田や慶應の教授陣には知り合いがたくさんいるし、授業を持ったり、学生さんと話したりした経験がある。そんな中で私がつかんだ両大学の特徴は次のようなものだ。

まず、早稲田は、しばしば言われるように「在野精神」が強い。東京大学に、良くも悪くも明治時代に国策で創設された「官製大学」の色が残っているのに対して、早稲田の学内には、政府や官僚というものから距離を置く精神性、気骨がある。ジャーナリズムを志望する学生も多い。

一方の慶應は、経済の現場で責任ある立場を担っているという感覚が強い。特に下から上がってきた学生たちは、ご家族が日本経済のエスタブリッシュメントに属している人たちが多く、学問的な卓越に加えて、自分たちが経済を回すのだという自負にあふれている。

在野の誇りを抱く早稲田と、ビジネスマインドにあふれた慶應。両大学はいろいろな意味で好対照だが、卒業生の活躍を含め、校風を競い合うことは良いことだと思う。

対照的なスクールカラーが結果として良い効果をもたらすのは、日本だけのことではない。

英国の2つの名門、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学は、前者が自然科学中心なのに対して後者はいわゆる文系の学問に強いという特徴がある。ケンブリッジは多くの科学者を輩出し、オックスフォードからは首相を含むたくさんの政治家が出ている。そして、両校は潜在的なライバル関係にある。

私自身はケンブリッジに留学していたが、あるとき、イギリス人から面白い話を聞いた。オックスフォードの学生たちは、ケンブリッジのことを揶揄して、「低湿地にある工科大学」と呼ぶことがあるというのである。

これには、なるほどと思った。オックスフォードが丘陵地にあるのに対して、ケンブリッジは川が流れる低地にある。「工科大学」であるのは立派なことだけれども、政治や文学に長けた人たちからはオタクの巣窟のようにも見えるのだろう。

ライバル関係は、競い合いによってどちらの学校の長所も伸ばす。米国はボストンにある2つの名門大学、ハーバードとMITの間にも対抗意識があるという。MITの学生が、ハーバードは紅茶を飲みながら机上の空論を交わしている暇な学生の集まりと見るのに対して、ハーバードはMITを、真夜中に分厚い眼鏡をかけたオタク学生が徘徊している大学として揶揄するという話を聞いたことがある。

校風を競い合うのは素晴らしい。なぜなら多様性の観点からは、どの校風も「正解」だからである。「偏差値」のような単一の基準で評価するモノカルチャーよりはよほど豊かな世界がそこには広がっている。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『幸せとは、気づくことである』(プレジデント社)など著書多数。

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(脳科学者 茂木 健一郎)

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