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コロナ自粛でも堅調鳥貴族、逆風に強いサイゼリヤ

プレジデントオンライン / 2020年4月13日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RichLegg

■コロナ影響は一律飲食業に直撃しているわけではない

世界的なパンデミックにまで発展している新型コロナウイルスの影響で、飲食業の売り上げ減少が連日報道されています。2020年3月21日に日本商工会議所が公表した「新型コロナウイルス感染拡大に伴う中小・小規模事業者への影響および政府への要望」によると、20年3月の動向では、景況感を示す業況判断指数DIが全産業でマイナス49.0ポイント(前年同月マイナス16.9ポイント)、飲食業が含まれるサービス業ではマイナス55.8ポイント(前年同月マイナス11.7ポイント)という結果となっています。この水準は東日本大震災時のマイナス51.4ポイント以来のものとなっており、過去最大の悪化幅となっています。

しかし、筆者の知人が経営するミシュランのフレンチレストランや会員制バーなどは3月末時点では影響がなく毎月増収増益を継続中であるという。片や、居酒屋チェーン店の経営者からは、売り上げが激減、融資についての相談が増えています。

このことから、今回の危機において、すべての飲食店が一律で業績が悪化しているというわけではなく、高級レストラン、カジュアルレストラン、居酒屋、ファストフードなどの業態によって売上影響に違いが出ていると考えられます。また、同じ飲食業でもコスト構造の違いから、売り上げ減少がどれだけ利益や資金繰りに影響しているかも異なっています。

■在宅勤務で持ち帰りサービスは好調

ファストフードの業種は、お昼時や夜などに都内の店に立ち寄ってみると、普段どおりにぎわっています。これらは、日常食を低価格で提供しており、もともと団体客ではなく、一人または少人数で入るタイプのレストラン。従って、観光地を除き影響は少ないようです。

政府は、2月25日に新型コロナウイルス対策の基本方針を発表。企業に対して、テレワークや時差出勤の推進を呼びかけ、多くの企業で在宅勤務が導入されました。ファストフード業界は、持ち帰りサービスを当初より導入しており、在宅勤務者の需要をうまく取り込むための施策を実施、この向かい風に対抗しています。

例えば、「牛めし」を中心とした定食店を展開する松屋フーズホールディングスでは、2月の売り上げは前年比117%と上振れで直近まで好調。3月24日より期間限定で“みんなの食卓応援団お持ち帰りワンコインフェア”を開催。テークアウトの場合に限り、人気の定食をワンコインでの提供を開始しています。

マクドナルドでは、新型コロナウイルス対策として一部の店舗において営業時間変更や休業を発表しているものの、2月は前年同月比で売り上げが115%、3月11日より「非接触デリバリーサービス」を開始しています。これはWebまたはアプリで注文し、該当サービスを希望すると、配達員が玄関先に商品を置き、玄関先から2メートル離れた距離から顧客の商品受け取りを確認するという徹底したものです。加えて、当初よりウーバーイーツも活用しています。元々19年10月の消費増税以降、イートインの税率が10%に上がったのに対し、テークアウトは軽減税率8%に据え置かれていることも追い風です。

■影響が大きい居酒屋・海外展開企業

一方で、仕事帰りなど団体客でにぎわう居酒屋は大きく客足を減らしています。この業種では通常3~4月は歓送迎会による繁忙期であり、本来は稼ぎ時です。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務が推奨され送別会などのイベントの自粛が要請されています。その結果、居酒屋では売り上げが半減しているとも言われています。

実際、筆者知人が経営する居酒屋チェーンでは、2月に対して3月は売り上げの約80%も減少している店舗があります。大手居酒屋チェーン店のうち多角化をあまり行っていないチムニーや大庄では、コロナの影響や対応策について、3月26日現在特段の公表はしていないことから、具体的な対応策に苦慮していることがうかがえます。大庄における2月の業績速報値上の売り上げは前年比94%と微減し始め、3月の影響はより大きくなることが予想されます。

居酒屋は、座席数も多く広いテナント、かつ、人が集まる駅前への出店も多いことから、家賃などの固定費が高く、売り上げが減少すると赤字に陥り易い傾向があります。帝国データバンク「飲食店の倒産動向調査(19年)」によると、リーマンショック以降、飲食店の倒産件数のトップは酒場・ビヤホールの業種であり、他社との競争・景気影響を受けやすい業種です。

海外展開企業も危機にさらされています。低価格イタリアンファミリーレストランのサイゼリヤは、中国展開に力を入れていたため、大打撃を受けています。上海、広州、北京に約330店舗展を開していますが、その大半が休業となっています。営業利益の約45%を海外事業が稼ぎ出していたため、業績全体への影響が懸念されます。

■若者向け企業への影響は軽微か

飲食の中で最も厳しい影響を受けている居酒屋ですが、その中で、鳥貴族は、直近2月の新規開店した月を除いた既存店売り上げの前年同月比は106%と健闘しています。鳥貴族は、2~4人の座席配置で大人数客を想定していないことに加え、コアターゲットが20~30代の社会人・学生。新型コロナウイルスは、高齢者は重症化しやすいが、若年層では無症状または重症化しないという報道が、若年層の行動制限に強い影響を与えていないのです。

低価格帯で他のファミリーレストランと比して若年層をターゲットとしているサイゼリヤも、3月中、海外店舗は厳しい影響となっているものの国内店舗への状況は軽微に済んでいます。実際、都内学生街近辺のサイゼリヤでは、夜間の稼働率は8割近くになっているところが見受けられました。逆に、中高年をコアターゲットとしてた高価格帯のチェーンが苦戦を強いられています。

売り上げが減少した場合でも利益が残るか否かはコスト構造が影響します。支払額が一定の固定費が高ければ、売り上げが減少した場合には赤字となりやすく、逆に固定費が低ければ赤字にはなりづらい体質となります。

先に挙げたファストフードとして松屋フーズホールディングス、マクドナルド、居酒屋では「はなの舞」や「さかなや道場」で有名なチムニーと、「庄や」で有名な大庄(フランチャイズ比率が高い鳥貴族は除きます)、そしてファミリーレストランのサイゼリヤとすかいらーくホールディングスを例として分析してみます。なお、直近3年間の各四半期の売上高と営業利益を基に回帰分析を行い固定費と変動費の理論値を試算してみたところ、3業種のうち、一店舗当たり平均固定費が高い業種は居酒屋となっています。チムニーは一店舗当たりの固定費が約350万円/月、大庄が約240万円/月。一方で、サイゼリヤは約100万円/月、次いで松屋が約110万円/月と固定費が低い結果となっています。

■赤字になりづらいサイゼリヤ

固定費の内容は、各社によって異なりますが、主に家賃などの賃借料、設備や建物の内装に係る減価償却費、正社員の人件費が主な内容です。居酒屋は、アクセスの良い好立地に出店、広い空間が必要となるため、家賃が高額となる傾向があります。サイゼリヤは徹底した業務効率化により時間ロスを最小化する取り組みを行っていることと、賃借料が安い地下テナントの活用、店舗の約27%が海外であるため固定費が低く抑えられていると考えられます。

また松屋は店舗スペースをコンパクトに抑えていることが寄与しています。また限界利益率も重要な要素です。限界利益とは、売上高から変動費を差し引いたものですが、これが高いほど固定費の回収に当てることができます。

ただ、いくら限界利益率が高く、固定費を低く抑えていたとしても食材は海外から調達品も多く、新型コロナウイルスの影響が長期化した場合、グローバルでのサプライチェーンが機能しなくなることが懸念されます。その結果、提供可能商材が減り、開店可能店舗数の限定や客足への悪影響が有り得ます。日本では4月7日の非常事態宣言に基づく外出自粛や休業要請が5月6日まで続きますが、5月以降直ちに客足が戻るかは疑問です。これを契機に、産業構造が変わり、各社これまでの事業モデルの見直しを図ることもあり得るのではないでしょうか。

各社IR情報
*参照資料:松屋フーズHD/日本マクドナルド/チムニー/大庄/サイゼリヤ/すかいらーくHD

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鳥山 慶(とりやま・けい)
鳥山総合公認会計士事務所(KT Total A&C)代表
1985年生まれ。公認会計士、行政書士。慶應義塾大学卒業。Big4(大手会計士事務所)で、法定監査、IPO支援、ターンアラウンド、事業承継等を経験。その後、外資系戦略コンサルティング会社でM&A戦略、費用削減戦略、新規事業立案等に従事。

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(鳥山総合公認会計士事務所(KT Total A&C)代表 鳥山 慶)

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