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なぜ仕事に集中できずスマホやネットに逃げてしまうか

プレジデントオンライン / 2020年4月26日 11時15分

ベンジャミン・ハーディ『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』(サンマーク出版)

■「意志の力」で、不適切な行動を変えようとするのは無駄

仕事がうまくゆかないとき「自分の意志が弱いから」と落ち込む人は少なくない。しかし、どう気合いを入れても集中力が続かないことはよくある。本書はそうした悩みを持つ人に一筋の光をもたらす、優れた自己啓発書である。

著者は米国の組織心理学者。成功するために「意志の力」を用いるのは大間違いだと説く。意志に頼っても、過去の自分からは脱却できないのだ。

反対に、自己の内部ではなく外部の環境を変えることで、無理なく状況を変化させる方法を指南する。副題に『科学が証明した自分を変える最強戦略』とあるように、「科学の伝道師」を標榜する評者が納得した点を紹介しよう。

そもそも科学の本質は「認識・予測・制御」にある。つまり、事実を精査し現象を「認識」し、未来を「予測」し、よい結果が出るように「制御」する。この3項目では「認識」が最も重要で、成功を妨げる日常習慣を冷徹に分析することを薦める。

たとえば、仕事に集中できないのは、余計なことに気が散るからだ。人は気の進まない仕事を与えられると逃避行動に移る。おなじみのネットとスマホの中毒だ。

■ウェブサイトやアプリで『5時間以上』を費やしている

「平均的な人は1日にスマートフォンを『85回以上』チェックし、ウェブサイトやアプリで『5時間以上』を費やしている」(158ページ)。「だらだら見続けてはならない」と頭ではわかっていても止められない。それは「どれほど馬鹿げた行動か」の認識が甘いからだと著者は喝破する。

我々は大量のサブリミナルな「誘惑」にさらされ、刺激の「奴隷」になっている。著者は外部の環境を物理的に変える方策を具体的に指示するが、まず「これはダメ」という的確な認識が必要なのだ。

現代人が陥る状況を見事にあぶり出す著者は、「予測・制御」に関してもさまざまな助言を与える。時間管理について「精神的に本当に集中できるのは、1日のうちに4~5時間。効果的に働くなら、1時間半~2時間の集中時間と、その後はどこか違う環境で20~30分間の回復時間を過ごす」とアドバイスする(167ページ)。

本書が優れているのは「認識」を最重要視する点だ。評者の地球科学でも同じで、最初の認識を誤れば後の仕事は水泡に帰する。よって、本書から読み取ってほしいのは、「自分の認識がいかに甘かったか」なのである。しかも、不適切な行動を「意志の力」で変えようとしても無駄で、外部の環境を変えることでしか有効な手立てはないのだ。

さらに「予測・制御」は読者に合った方法だけ採用すればよいと語る。助言のすべてに従う必要はなく、自分で「カスタマイズ」することが重要なのだ。意志に頼らず外部の環境を変える斬新な方法で、未来へ向けて無理なく自分を変えていただきたい。

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鎌田 浩毅(かまた・ひろき)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
1955年生まれ。東京大学理学部地学科卒業。97年より現職。理学博士。専門は火山学、地球科学。著書に『地学ノススメ』(ブルーバックス)、『理科系の読書術』(中公新書)、『理学博士の本棚』(角川新書)、『座右の古典』『新版 一生モノの勉強法』(ともにちくま文庫)など。

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(京都大学大学院人間・環境学研究科教授 鎌田 浩毅)

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