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地方の中小企業が「コロナショック」を「コロナチャンス」に変える方法

プレジデントオンライン / 2020年4月15日 15時15分

出所:令和元年度版「観光白書」

日本の景気は「コロナショック」で急速に冷え込みつつある。どうやって活路を見いだせばいいのか。まちづくりの専門家である木下斉氏は「今後、家にいる時間が長くなることで、あらゆる商売のオンライン化が急速に進む。地方の中小企業はこの変化をチャンスとして捉えるべきだ」という——。

■国内旅行消費額26.1兆円のうち、インバウンドはたった4.5兆円

今や毎日のニュースはコロナショック一色です。これでは気がめいってしまう人も多いのではないでしょうか。ただし、地方にとっては今までになかったチャンスも生まれようとしています。こんなときに明るい話をすると、「のんきに何を言っている」となりがちなので、チャンスを感じている経営者もあまり口にできない空気になっています。しかし、私の周りでもチャンスと感じ、すでに動き出している人たちがいます。

そこで今回のコラムでは、“地方はコロナショックからコロナチャンスを作り出せるか”という前向きな視点で考察していきたいと思います。

ここ数年、地方には観光立国政策に多額の国費が投じられ、さらに観光ビザ発給の規制緩和もあり、うなぎのぼりのインバウンド需要に湧いていました。それがコロナショックによって停止し、地方観光業は干上がってしまったというのが現状です。

しかしながら、令和元年版の観光白書を見れば、国内旅行消費額は日本人観光客によるものが82.7%で、訪日外国人旅行客によるものは17.3%にすぎません。金額にすれば、26兆1000億円の市場のうち、インバウンドは4兆5000億円しかないのです。

さらに、現実問題としてコロナショックが沈静化した後を考えても、コロナショック前のように自由に海外旅行に出られる状態になるには時間を要するかと思います。2017年度に実施された観光庁「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究」によると、海外旅行における海外消費分の市場規模は2兆8000億円もあります。これらも海外で消費できなければ、国内消費に向かいます。

■地元客、国内客という巨大市場をいま一度考え直すとき

人の目は、どうしても新規で成長する市場に向きがちです。それに地方を訪れる訪日外国人は、日本人観光客には今や少ない団体旅行という形も多い。商売をするには、アジア系訪日外国人旅行客は非常にやりやすい相手だったといえます。

その一方で、市場の8割を占める日本人による内需をないがしろにしていたことに、あらためて日が当たるようになっています。つまり外ばかり見ていたけど、国内観光客はすごい多かった、ということです。

近隣の人たちが遊びに来る日帰り旅行に限定しても4兆7000億円の市場規模があり、インバウンド消費の4兆5000億円より大きいのです。今は外出制限などあるので、そもそも国内需要を増やすのも難しいでしょう。しかし、コロナショックの回復期を考えても国際的な人の往来が復活するのはまだ先のことです。まずは、近隣となる日帰り旅行が一部可能になり、その後に国内での宿泊観光、そして海外からの観光という流れになっていくことでしょう。

だからこそ地方は、今回のコロナショックで海の向こうから来る客だけでなく、地元客、国内客という巨大市場が近くにあるということをいま一度考え直すときだと思います。

■「オンライン化」で従来型の商圏に縛られない商売が可能に

さらに今、都市部ではインターネット環境をベースにしたリモートワーク態勢の構築が急速に進められています。これまで、さまざま理由をつけて無理と言われていたことが続々と可能になりつつあります。たとえば、都市部に住み、毎日オフィスに通勤し、そこで働くしかなかったという状況が変わりはじめています。

これは今後、住居とオフィスという不動産にも大きな影響を与え、地方にとっては新たな住まい方、働き方に対応したビジネスの可能性を感じます。少し前から全国にある複数の住居をみんなで共同利用するという「マルチハビテーション(多拠点生活)」のサービスや、サテライトオフィスが注目されていましたが、地方ではそれらがより拡大していくでしょう。

さらに、自宅にこもる時間が増えることによって、家の中からインターネットを通して注文するオンライン需要は拡大しています。幸いなことに、都市部の人がインターネットの仕組みを使えば使うほどに、地方にもチャンスが訪れます。

東京都「東京都生計分析調査」(令和2年1月)によると、2人以上の勤労者世帯の消費支出は1世帯あたり34万6351円と出ています。これらの多くが地域内で消費されていたものの、外出自粛によって都内の店舗などでの購買から一部でもオンラインで購買することに回ればそれは非常に有望な市場と言えるでしょう。

これまで地方の人が都市部の市場を狙うためには、基本的には都市部に出店する必要がありました。それが都市部の人の働き方が変わりオンライン化が進むことで、地方にいながら都市部の市場を攻める、つまりは従来型の商圏に縛られない商売がさらに可能になっていくでしょう。

■不動産コストの高い都市部ではなく地方に大きな倉庫を

すでに地方の企業や店の中には、前売り券などの販売をクラウドファンディングを活用して開始したり、オンラインショッピングで商品販売をしたりと、都市部に住む人々に向けて営業を行うところも現れています。当然、EC市場は年々急速に拡大していたので、私が関わるような地域商店街の店でも、地方で成長する店の多くは、都市部の人々に向けてネット販売をしているところばかりでした。

たとえばセレクト家具の販売を行う企業などは、不動産コストの高い都市部ではなく地方に大きな倉庫を借りて、ネット受注によって業績をあげていました。また、ある地方の魚屋は、シズル感たっぷりの写真を使ったサイトを作り、ネット販売に早くから注力し成長していました。このような事業主にとっては、今回のような勤労、消費に関する「オンライン化」の拡大は大きな追い風となっています。

ご存じのように日本はいまだに世界第3位の経済大国であり、そのうち約6割が国内消費によって構成されています。家計消費の変化は非常に大きなインパクトを生むのです。その家計消費の多くが集積する都市部の働き方、消費行動が変わるというのは、地方にとっては従来の制約条件が解除され、新たなチャンスとなっていきます。

■今を乗り切り、その先にあるチャンスにかけるしかない

本稿で述べてきたように、コロナショックの後には、地方にとって新たな可能性が多数出てきます。だからこそ、どうにか今を乗り切り、その先にあるチャンスをものにしよう。そう仲間と話しています。

『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』(ダイヤモンド社)
『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』(ダイヤモンド社)

今更、政府の対応をウダウダ言っても仕方ありません。われわれのこれまでの選挙行動の結果が今です。となれば、自分たちのお客さまや仲間を巻き込みながら、どうにか生き残り策を作り出すしかないのです。飲食店でも、店舗で仕入れていた酒の小売販売について期限付きで認められるなど、これまで禁止されていたことが解禁される動きも出てきました。それらをリアルタイムで、ビジネスチャンスにするしかありません。

これから地方は次なる段階に入ると考えるからこそ、私自身、今年の地方でのプロジェクト投資、会社設立は昨年からの予定通り、一切止めずに進めることを決めています。最後に頼りになるのは政府でも何者でもなく、お客さまであり、仲間であると改めて気付かされています。どうにか頑張りましょう!

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木下 斉(きのした・ひとし)
まちビジネス事業家
1982年生まれ。高校在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長に就任。05年早稲田大学政治経済学部卒業後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学。07年より全国各地でまち会社へ投資、経営を行う。09年全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。著書に『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』『福岡市が地方最強の都市になった理由』『地方創生大全』『稼ぐまちが地方を変える』など著書多数。有料noteコンテンツ「狂犬の本音」も絶賛更新中。

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(まちビジネス事業家 木下 斉)

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