精神科医Tomyが教える、コロナ禍でギスギスする人間関係への対処法3つ
プレジデントオンライン / 2020年4月20日 11時15分
■心って、広げたもの勝ちよ
目に見えないウイルスで、私たちの日常がおびやかされる。好きなことが好きなようにできないストレスは、やはり大きいわね。
その上、マスクやトイレットペーパーが手に入りづらくなったり、デマか本当かわからない情報が流れてきたり、みんながピリピリしやすい状況が続いているわ。
これまでなるべく不安にならない方法をお伝えしてきたけれど、でもね、アテクシは「不安になってもいいのよ」ということも同時に伝えたいの。不安が続くのって苦しいから、なるべく不安に陥らない方法を試すんだけど、でもそれでも不安が頭を持ち上げることもあるわよね。それはそれでいいの。不安になってもいい、と思うことって案外大事よ。
不安を感じる自分を、「ダメだ」「弱い」と否定するんじゃなくて、「許す」「認める」「許可する」。これは他人に対しても同じね。情緒不安定だったり、いつもより攻撃的になったりする人がいても、この状況では仕方ない。背景を想像して、その人を観察して、受け入れるの。
心は広げたもの勝ち。懐って、深くしておいたほうが自分が幸せになれる。こんなときに拒絶したり、攻撃したり、反論してもしょうがないって思うわ。
■非常事態に出る“本性”は大目に見る
緊急事態、非常事態って、その人の人間性が出やすいわ。物資を独占しようとしたり、攻撃的になったり、怒りっぽくなったり……「この人って、こんな人だったの?」と思う一面を見てしまうこともあるかもしれない。
でもね、非常時に出てきてしまった人間の性質って、それは誰かに責められる筋合いのものではないと思う。だってその姿は、本来なら見せる必要がなかった姿であって、この状況がそうさせているだけだから。多少荒っぽかったとしても、心配性でストックをたくさん持っていたいタイプだったとしても、普段だったら気にすることなく付き合えていたはず。
相手への想像力を働かせることが、今、本当に大切だと思うの。ひとくちに緊急事態といっても、その切迫感、捉え方は人それぞれに違うわ。
だって人間って通常、「自分には最悪の事態は起きない」と思って生きているものよ。
この心の働きを正常性バイアスと言うけれど、正常性バイアスが強い人は、災害時や緊急時にも「自分は平気」「まだ大丈夫」と思いやすいの。そうじゃない人からすれば「緊急事態なのに外出するなんて!」「こんな状況なのに危機感が足りない」ってイライラするかもしれない。でも、それは価値観の違い。
相手を責める気持ちを持たないほうが、自分もラクになるはずよ。
■事態が悪化しても冷静でいられる秘訣
アテクシは、自分を落ち着かせるために「いつか感染するかも」「仕事ができなくなるかも」という可能性も考えているわ。ギリギリになったらこうしよう、感染したらこうしよう、と想定しておくと、事態が悪化していっても冷静さを保てると思うの。
そして、自分が絶対に守りたいものを決めておくこと。
アテクシだったら、患者さんが安心して受診できるこの職場環境を守りたい。もし感染が拡大して一時的に診療ができなくなったとしても、感染が終息したらすみやかに再開できるように準備をするつもりよ。
「どんなに悪くなってもここは守る!」というものがあると、人は強くなれるわ。もちろん自分の命を守ることがいちばん重要よ。生きててなんぼですからね!
戦争にも例えられる今の状況は、ひとりの力では乗り切れないわ。家族と、友人と一致団結して、日本で力を合わせ、人類みんなで手を取り合って。そういう大きな目で見ることも大事だと思うわ。弱いところ、みにくい部分をさらけ出すこともあるかもしれないけれど、それはお互いさまよ。
家にいる時間が増えたり、自分や家族と向き合う時間ができたりと、コロナウイルスの影響は悪いことだけではないわ。不慣れなものに慣れる練習と思って、そしてこの経験がきっといつか自分の助けになると思って、みんなで乗り越えていきましょう。
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精神科医
1978年生まれ。コラムニスト。ゲイとしてのアイデンティティに悩み、乗り越えた経験を生かし、Twitterやブログ「ゲイの精神科医のドタバタ夫婦日記」でも生きやすくなるアドバイスを発信中。著書に『精神科医Tomyが教える1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』がある。
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(精神科医 Tomy 構成=浦上藍子 写真=iStock.com イラスト=カツヤマケイコ)
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