ポストコロナの「雇用危機&テレワーク普及」で最初に切られるのは誰か
プレジデントオンライン / 2020年4月21日 6時15分
■新型コロナでやっと変わる
僕が考えるポストコロナに予想される変化は、「時間給」的な働き方からの脱却です。
在宅で仕事をすると、通勤や“勤務時間”という概念がなくなります。「○時から○時まで働いたから、○時間分の給料をもらう」という形ではなく、「働いて上げた成果に対して対価をもらう」という形になります。成果さえ上がれば、オフィスで仕事をしてもいいし、在宅で仕事をしてもいい。いつどこで、どのように働くか、働き方に多様性が生まれて、働く人一人ひとりが自分で決められる範囲が広がります。
20世紀型の工業化社会では、工場に出勤して、決められた時間分生産ラインで働くという時間給的な働き方が広がりました。それに加えて日本では戦後、「一つの会社で一生涯働く」「愛社精神」「満員電車」「残業」などが当たり前になった。デジタル化が進んで産業構造が大きく変化したのに、21世紀に入ってから20年経っても、働き方のほうはなかなか変化しませんでした。それが奇しくも新型コロナによって変わりそうなのです。
■“THE会社員”には厳しい時代に
働く人が、自分で勤務時間や勤務体系を決められる時代になると、雇用する側、マネジメントする側の「どうやって働く人をマネージするか」も変わります。働く人それぞれに任せるのか、管理するのか。つまり、マネジメント側がどのように「働け」と言うかが問われる。「働き方」だけでなく「働け方」も重要になってきます。
僕も経営者であり編集長であるので、「働け方」は日々考えています。時間給でないならば、いつ、どれくらい、どこで働いたか、管理する必要はありません。「どれだけ生産したか」という成果物を評価するほうがわかりやすい。僕は本来、仕事とはそうあるべきだと考えています。
成果物に対する報酬ということになると、会社員であってもフリーランスに近付いていきますね。そして個人の実力が可視化されることになる。それは、いいことではあるのですが、一方で、今まで時間給で働いてきた、いわゆる“サラリーマン”や“サラリーウーマン”にとっては、厳しい時代になるかもしれません。スキルやパフォーマンスが問われるのでシビアです。
■“ウィンドウズ2000”がいなくなる
そういうことになってくると、2000万円の年収をもらって企業の経営を圧迫している窓際族のおじさん、「ウィンドウズ2000」と呼ばれる人たちの仕事はなくなるでしょう。人口の多いバブル世代や、下手をすれば僕たち団塊ジュニアの世代も対象になります。激しい競争にさらされるようになるので、覚悟をしておいたほうがいいでしょうね。
会社を立ち上げたりして個人の名前で仕事をしている人はいいですが、そうでない人は今後、何を頼って生きていけばいいかわからなくなります。それが、ポストコロナに起きる働き方の変化のポイントになるのではないかと思います。
■目指すは“ハイブリッド”生活
新型コロナの影響で、しばらく移動の制限は続くでしょう。海外との行き来はもちろんかなり厳しくなる。僕は2017年に、国内外に移住した33人を取材した『いきたい場所で生きる』という本を出しましたが、特に海外への移住は難しくなるでしょう。
ただ、今回リモートワークを経験して、「別に毎日オフィスに通勤しなくても仕事はできる」ということに気付いた人たちも多いはずです。何も、人が密集していて生活コストが高く、新型コロナのような感染症も広がりやすい大都市に住む必要はない。国内の感染状況が完全に終息したら、田舎に住むという選択肢に目を向ける人も増えるだろうし、国内での移住はこれから注目されると思います。
新型コロナで景気が悪化し、収入も厳しい状態になることを考えると、田舎のほうが家賃も生活費も安く、低燃費な生活ができます。豊かな自然の中で子育てをしながら、自給自足や地産地消の生活を送る一方で、オンラインで最先端の働き方をするという、ハイブリッドの暮らしを目指す人たちも増えるでしょうね。
■ポストコロナを生き抜く「内観」と「学び直し」を
もともと新型コロナの前から、働き方はゆるやかに変化していました。リモートワークが推進され、時間給ではなく成果に対して報酬をもらうフリーランスのような働き方に注目が集まっていた。新型コロナは、こうした動きを一気に後押しするような働きをすると思います。
これからはますます、自分はどんな生き方をしたいのか、どんな働き方をしたいのか、何ができるのかが問われる時代になります。ですから、家にいる時間が増えた今をいい機会ととらえて、自分の心の内をじっくりとらえなおす「内観」と、「学び直し」に使うとよいと思います。
情報に振り回されないで「自分のやりたかったことは何なのか」を自分に問い直す。人生100年時代ですから、残り50年をどう過ごしたいか、どんな働き方をしたいのか、じっくり考えるといいと思います。
そして、自分を育てる時間として有効に使うわけです。これを読んでいるみなさんはおそらく、大学を卒業してから20年ちかく、あるいはそれ以上経っていると思います。ここであらためて自分に必要なスキル、身に着けたい知識やアップデートしたい分野を洗い出し、学び直すのです。英語やファイナンス、プログラミングなど、最近はWebで学べることがたくさんあります。好きだった小説を読み込んだり、映画をたくさん見たり、興味のある資格を取ってみるのもよいでしょう。
今まで、仕事や家事で時間を奪われていた分、今、少し立ち止まって内観して学びなおす。そうすれば、新型コロナが収束し、働き方が変化した社会の中でも、自信をもって生きていくための拠り所ができるのではないかと思います。
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FINDERS 編集長
1973年、福岡市出身。出版社、ITベンチャー勤務を経て、文筆家・編集者・ディレクターとして出版からウェブ、企業のキャンペーン、プロダクト開発、イベント開催、テレビ、ラジオへの出演と多方面で活躍。2011年の約1年間、旅するように暮らす生活実験「ノマド・トーキョー」を敢行。ウェブメディア「ライフハッカー[日本版]」の編集長を経て現職。著書に『僕らの時代のライフデザイン』(ダイヤモンド社)、『デジタルデトックスのすすめ』(PHP研究所)、『いきたい場所で生きる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)等がある。
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(FINDERS 編集長 米田 智彦 構成=大井明子 写真=iStock.com)
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