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「学校も塾も休みで困る」と嘆く親たちが見落としていること

プレジデントオンライン / 2020年4月20日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanL

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各地で一斉休校が続いている。そうした地域では進学塾も休みだ。子供の勉強はどうすればいいのか。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは「まずは生活リズムが保てているかに注意してほしい。そのうえで、今だからできる勉強をするといい」という――。

■あまりにも長く、終わりの見えない休校期間

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国が緊急事態宣言を発令した。3月頭からの休校が続いている地域もある。都市部では多くの店や施設が自粛休業しており、中学受験の勉強を専門に教える大手進学塾も休講を余儀なくされた。

困ったのは、そこに通わせる親たちだ。学校が休校になった上に、塾まで休講になってしまい、わが子の勉強はどうなるのか、受験に不利にならないかと、不安を募らせている。だが、休校になって一番気をつけなければいけないことを見落としていないだろうか。それは、生活リズムの乱れだ。

普段なら朝7時に起きて、8時には学校へ行く。親も仕事で家を出る。ところが今は、学校が休校だ。親の仕事もリモートワークになり、家族が全員集合している家は少なくない。どこかへ出掛ける目的があれば、それに合わせて早起きするけれど、そうでないと途端に狂ってしまうのが、生活リズムだ。

■今日一日のスケジュールは「書いて残す」

長い休校で絶対に崩してはいけないのが、早寝早起きの習慣。普段学校へ行く日と同じ時間に起きることを心掛けてほしい。そのためには、夜更かしはしない。子供の健康には、生活のリズムを整えることが欠かせない。リズムが崩れると無気力になり、学校や塾が始まっても、元のペースにはすぐに戻すことができなくなる。ひどい時には不登校になることもある。

また、毎日の運動も大事だ。人の少ない早朝に散歩をしたり、親子でジョギングをしたり、犬の散歩をしたりするなどして、外に出て体を動かしてほしい。

それができて、ようやく勉強だ。

子供は基本、放っておくと勉強をしない。自分から進んで勉強する子になってくれればと親は願うが、それにはある程度のフォローが必要だ。おすすめは、その日の朝に「今日一日の過ごし方」を確認すること。勉強の予定だけでなく、お手伝い、遊び、テレビやゲームなどの予定をおおまかに書き出してみる。あえて「書く」ことがポイントだ。なぜなから、子供は自分が決めたことでも平気で忘れてしまうからだ。また、気分もコロコロ変わる。約束事として、書き留めておくほうが効果は高い。

■学習時間よりも「学習内容」を決めたほうがいい

では、勉強の予定はどのように決めておくとよいか。長期休みの勉強は、時間をきっちり決めるよりも、学習内容を決めるほうが大事だ。具体的に、どの問題集の何ページをやるかを決めたほうがいい。その際、多くの親は量をやらせようとするが、今は少ない量をじっくり取り組ませるほうがいい。そんな時間は、塾が始まったら忙しすぎて確保できないからだ。

例えば6年生では「比の応用」を勉強する。普段の勉強ならテキストの問題を解くだけになりがちだ。そうやってスピーディーに進めていかなければ、宿題が終わらない。でも今は、塾からそれほど多くの宿題は課せられていないはずだ。そこで、公式に当てはめれば答えが出るような問題でも、文章を読みながら一つひとつフリーハンドで図を描いてみる。そうやって、じっくり問題に向き合い、納得して習得する時間を持つようにする。こうしたじっくり取り組む勉強は、塾がない今しかできない。数少ないチャンスだと思って、取り組んでみよう。

多くの塾では、GW明けまで休校する。学校も休みで、子供が少しでもダラダラしていたら、「ヒマなんだからもっと勉強しなさい!」「もっと難しい問題を解けるようにしなさい!」と親はレベルを上げようとする。しかし、今の時期に難しい問題を解く必要はない。やるべき学習は「あとちょっと頑張ればできそう」と子供自身が感じるレベルだ。

■子供の集中力は「1~2時間」が限界

例えばここ半年の間に受けた塾のテストを振り返り、正解率50%以上(上位生は30%以上)なのに間違えてしまった問題をコピーして、はさみでカットして、白い紙に貼り付けて、オリジナルプリントを作ってみる。みんなが解ける正解率が高い問題が解けないということは、合否に大きく関わるので、きちんと正解できるようにしておくことが必須だ。正答率が高い問題は、基礎問題であることが多い。

休校中の家庭学習は、基礎学力を固める勉強(読み書き計算)を多めにすることをすすめる。こうした勉強はダラダラやらずに、時間を計ってスピーディーに取り組む。一方、文章題のようなじっくり考える問題や、細かいことまで丁寧に覚える勉強はやや少なめにしておく。

子供の集中力はせいぜい1~2時間。算数の文章題などじっくり考える勉強を1時間、計算や漢字など力を抜きながらやれる勉強を2時間やるとしよう。それを連続してやらせることはおすすめしない。4年生あたりだと、「30分がんばって、15分休憩」の繰り返しが良い。6年生でやっと「60分がんばって、15分休憩」が可能になる。じっくり考えて解く問題は、子供が一日の中で最も集中する時間にやるようにする。このように、勉強にはメリハリが必要なのだ。

■理科と社会をじっくり身につけるチャンス

もう一つ、休みのうちにぜひやってほしいのが、理社の勉強だ。多くの塾では、中学受験では算数が重要と言っているため、普段、子供たちは算数の勉強に追われて、理社に時間を割くことができない。だが、今なら十分に時間が取れる。コロナで受験が不利になると思っている親は少なくないが、私はむしろ、この時間を上手に使うことができればチャンスなのではないかと思う。特に6年生にすすめたい。

理社の勉強といえば、一問一答の暗記教材を使うことが多い。しかし、こういう教材に慣れてしまうと、少し違う角度の問題が出たときに対応できなくなってしまう。理社の学習に必要なのは、知識の量だけではなく、知識同士のつながりの理解だ。これは、説明の文章を丁寧に読み込むことで初めて頭の中に作り上げることができる。そこで、もう一度テキストの説明に戻って、丁寧に読むことをすすめる。

すべてをやるのは膨大なので、例えば、理科なら植物分野、社会なら地理と、範囲を決めてじっくり読む。その際、イラストや写真もしっかり見ること。また、目立たないコラムにも目を通しておく。重要なところには線を引くなどして、絶対に忘れないようにする。なぜそこまでやるのかといえば、次にじっくり学習ができるのは夏休みのはずだが、今年の夏休みはその時間がとれそうにない。秋以降は過去問対策が始まり、理社にじっくり時間をかけられる時がないからだ。線を引いたところは、「絶対に覚える!」という強い気持ちを持って、取り組んでほしい。

■夕食後は家族で「15分」の読書タイム

休校中は時間があり余っている。だが、小学生の子供が勉強に集中できる時間はそう長くはない。だから、やるべきことをやったら、あとは子供に自由時間を与えてほしい。こういう時だからこそ、世の中のことを考えたり、自分の将来のことを想像してみたりするといい。その方が、私は大事なことだと思う。

また、塾のある日はとにかく時間に追われ、ゆっくり読書をすることもできない。でも、今ならゆっくり本も読める。

子供が本を読まないのなら、家族全員の読書タイムを作ってしまえばいい。夕食後、各自がダイニングテーブルに読みたい本を持ち寄り、最初は15分でもいいから、「今は家族みんなが本を読む時間」と決める。はじめは嫌がるかもしれないが、親が熱心に読んでいるのを見て、「本を読むって楽しいのかな?」と興味を持たせる。子供というのは、無意識に親のまねをするもの。子供を読書好きにさせたければ、まずは親が楽しそうに本を読むことが大切だ。読書好きの家族は、語彙が豊富になる。

かつての受験生も経験したことがない、塾の長期休講。不安に思う気持ちはわからなくないが、それをマイナスに捉えるかプラスに捉えるかで、子供の今後の学力が大きく変わっていく。ピンチをチャンスと捉え、どうかこの長い休みを意味のあるものにしてほしい。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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