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経営コンサルが初めて怖いと感じた「経済指標」の落ち込み具合

プレジデントオンライン / 2020年4月15日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk

新型コロナウイルス感染拡大で、各種の経済指標が大変なことになっている。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「リーマンショックや東日本大震災と比較しても桁違いに悪い。長年、経済指標をウオッチしてきたが、数字を見るのを『怖い』と感じたのは初めてだ」という——。

■日本経済は「奈落の底」落ちるのか

新型コロナウイルスの影響で日本経済が急速に悪化しています。この1カ月でその傾向がさらに顕著になっています。下手をすれば、奈落の底に落ちてしまうような状況です。

政府は、収入減世帯への現金給付や、休業補償、中小企業への助成金や融資制度の拡充など、さまざまな経済対策を立てていますが、今のようなスピードでは不十分です。

また、感染収束後を見据えての「商品券」などの景気対策を検討しているようですが、これらも感染拡大が収束しなければ効果を発揮しないでしょう。

つまり、いずれにしろウイルスが収束しない限りは、大変な状況が続くということです。国際通貨基金(IMF)のクリスタナ・ゲオルギエバ専務理事は「2020年の世界経済は大恐慌以来のマイナス成長になる」とまで言っています。

編集部註:4月14日、国際通貨基金(IMF)は世界全体の経済成長率の見通しを発表した。
2020年に関しては、新型コロナウイルスの感染がなかった1月に示した「プラス3.3%」という予想から6.3ポイント引き下げて「マイナス3%」に落ち込むとしている。これは、2008年に起きたリーマンショックの影響で「マイナス0.1%」となった2009年をも大きく下回る水準だ。
国別にみると、アメリカ「マイナス5.9%」(1946年以来、74年ぶりの水準)、中国「プラス1.2%」(1976年以来、44年ぶりの低成長)、日本「マイナス5.2%」(2009年以来、11年ぶりの低水準)。

■「景気ウォッチャー調査」が空前絶後の落ち込み

日本経済もかなり危ない状況です。図表1は、内閣府によって調査されている「景気ウォッチャー調査」です。「街角景気」と呼ばれることもあります。タクシーの運転手、ホテルのフロントマン、小売店の店頭販売員、中小企業経営者など、経済の最前線にいて景気を肌で感じている人たちへの調査です。「50」が良くなっているか悪くなっているかの基準です。

街角景気

2020年3月の調査(4月8日発表)を見ると、なんと「14.2」まで下がっています。リーマンショック直後の2008年12月の「19.0」や東日本大震災直後の2011年4月の「23.9」を大きく下回る数字となっています。比較可能な2002年1月以来最低の数字です。

直近の数字を時系列的に見ると、2018年1月は「50」をわずかですが超えていました。先ほども説明したように、「50」が、景況感が良化か悪化かの境目ですから、少しは良かったと言えます。

しかし、そこから「50」を切ることが続き、2019年に入ってさらに数字はずっと右肩下がりに悪化、2019年10月の消費税増税でさらに落ち込み、悪いながらも少し持ち直す兆しが見えたところで、今回のウイルスショックで急激に悪化したと言えます。

■4月の「景気ウォッチャー調査」はさらに厳しい結果になる

さらに、2020年3月の「景気ウォッチャー調査」の数字を図表2で詳しく見ていきましょう。

2020年3月の「景気ウォッチャー調査」

全体の景況感を表す「合計」は先ほど話したように「14.2」と非常に低いのですが、「家計動向関連」分野の<飲食関連>はなんと「0.7」まで落ちています。ほとんどの人が悪化といっているのです。2020年1月が「39.8」だったことを考えるとまさに急降下です。

そこまで厳しくはなくても、<小売関連>も前月よりも10ポイント強低い「16.0」まで悪化、<サービス関連>は19ポイント弱落ちて「7.4」という惨憺たる状況となっています。

一方、同調査の「企業動向関連」分野はどうでしょうか。こちらも<製造業><非製造業>もが軒並み大きく景況感を落としているのがお分かりになると思います。さらには「雇用関連」分野も急落しています。

少し怖くなるのは、「3月分」の調査を始めたのが3月25日だという点です。ちょうどコロナウイルスの感染者が東京都内で40人を超え、ちまたに「オーバーシュート」(感染爆発)といった言葉が出回り始めた時期です。その後、緊急事態宣言が4月7日に出され、さらに不要不急の外出自粛の要請が強まり、それに同意する国民が増えていきました。

それはウイルス封じ込めに必要な対策である半面、経済面では大きなダメージを負うことになります。5月の連休明けまでこの状態が続くとなると、4月の「景気ウォッチャー調査」では、さらに厳しい内容となることが確実になると予想されます。

■「日銀短観」3月調査も目を覆いたくなるほど大きく落ち込む

3カ月に一度、企業の景況感を調査する「日銀短観」についても触れておきましょう。4月1日に発表された3月調査を見ると、こちらも大きく落ち込む結果となっています。景気が「良い」と答えた企業のパーセンテージから「悪い」と答えたパーセンテージを引くもので、「0」が良いか悪いかの境目になります。

日銀短観

大手メディアなどでしばしば話題となる「大企業・製造業」の数字は、2017年12月調査では、「プラス25」でした。「どちらでもない」という回答もあるため、この「プラス25」はかなり良い数字です。当時の景況感は良かったのです。これは、先に説明した景気ウォッチャー調査の2018年初頭の頃と、感覚的には一致していたわけです。

それが、昨年末の12月調査では「0」まで落ちていました。消費税増税もあり、ウイルス騒動が起こる前から、大企業・製造業の景況感は落ちていたわけです。この「0」という数字は6年7カ月ぶりのものでしたが、それが2020年3月調査では、「マイナス8」まで落ちたわけです。

そして、驚くべきは、これまで比較的堅調だった大企業・非製造業は2019年12月調査では比較的好調な「プラス20」だったのが、3月調査では辛うじてプラスではあるものの、「8」まで一気に12ポイント落ちました。これも景気ウォッチャー調査と符合します。

そして、中小企業を見ると、製造業はもともとマイナスだったのが3月調査ではさらに落ち込み「マイナス15」に、非製造業もとうとう「マイナス1」に沈みました。

大企業、中小企業ともに景況感は大きく落ちているというのが現状です。

■米国の落ち込みはさらに深刻

米国ではニューヨークを中心に感染爆発が起こっています。感染者数は53万人に迫り、死者数も2万人を超えました(4月11日現在)。もうこうなると経済どころではありません。

トランプ大統領はリーマンショックを超える経済対策を打ち出していますが、経済がどこで下げ止まるかは不明です。

世界中を驚かせたのは、4月3日(通常、月の第一金曜日)に発表された「雇用に関する統計」です。「失業率」や「非農業部門雇用増減数」がわかるため、世界中のエコノミストたちが注目しています。とくに、「非農業部門雇用増減数」は米国経済のリアルタイムでの状況に敏感に反応するので非常に重要です。

雇用に関する統計

図表4をご覧いただきたいのですが、この3月の数字はなんと「マイナス70万人」です。米国の経済が順調なら、だいたいこの数字は毎月「プラス15万~20万人」です。図表には2014年から2019年までの年間での増加数も載せましたが、年に200万人から300万人の増加で、今年に入っても、1月、2月は各月20万人以上の増加でした。つい2、3カ月までは米国経済は、比較的堅調に拡大していたのです。

■経済指標を見るのを「怖い」と感じたのは初めてだ

それが、ここにきて突然70万人の減少です。雇用の減少は2010年9月以来のことです。市場は10数万人の減少を予想していましたが、それをはるかに超えました。衝撃を与えるほどの雇用数の減少です。失業率も2020年2月の3.5%から一気に3月は4.4%と急上昇しました。

失業保険の申請が4月4日までの1週間で660万件ありました。その前の週は、史上最多の686万件でした。これは3月の景気低迷を受けた数字ですが、失業保険の申請数は今後も増えるのは確実でしょう。5月初旬に出る4月の数字を見るのがとても恐ろしいです。

経営コンサルタントとして長年、日本や世界経済の指標を日々ウオッチしてきましたが、調査を見るのがこれほどまでに「怖い」と感じたのは初めてです。

残念ながら、新型コロナウイルスの感染が日米ともに収束に向かわない限り、経済の回復は厳しいと言えます。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO 小宮 一慶)

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