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橋下徹「今のまま『自粛を続けろ』と言うだけの政治家は無責任だ」

プレジデントオンライン / 2020年4月22日 11時15分

※写真はイメージです。 - 写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk

新型コロナ対策特措法に基づく緊急事態宣言が出されてから2週間。各地の学校で休校措置が続くほか、厳しい外出制限、営業制限が加わり国民生活は逼塞している。医療崩壊やウイルス感染を恐れて、このまま「家にいる」のが正しいのか。子供たちの未来のために、橋下徹氏が一歩踏み込んで政治に提言する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(4月21日配信)から抜粋記事をお届けします。

(略)

■日本政府の対応が迷走している理由はこれだ

今般、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために、日本政府は緊急事態宣言を全国に対して発した。各都道府県知事も完全に緊急事態モードだ。

(略)

【1】命を守るために、社会経済活動を抑制する。
【1‐A】それによって営業停止した事業者には、国家の財政破綻までを覚悟して支援を行う。
【1‐B】営業停止した事業者だけを破綻させ犠牲にする。

【2】国家が財政破綻することや営業停止した一部の事業者を犠牲にすることを回避するために、社会経済活動の再開をある程度容認し、その場合には、感染によって死亡者がある程度増加することを容認する。

今、日本の政治行政がやろうとしているのは、上記の【1‐B】だ。命を守る、と正義を振りかざして、一部の事業者を犠牲にする。そして国会議員や制度を作る役人たちの生活は完全に守られる。

これはおかしい。僕は【1‐A】か【2】の選択をするのが政治の役割だと思っている。国家財政破綻の覚悟を持つか、感染による死亡者数のある程度の増加を覚悟するかである。僕は日銀が数十兆円の札を刷ったところで財政破綻をするとは考えていないが、この点については色々な意見があるので、最悪の財政破綻を前提とするが、いずれの覚悟も足りないのが、今の日本の政治の状況だ。だから新型コロナウイルス感染症に対する日本政府の対応が迷走しているのだ。

このような自分の考えをまとめて、ある人に以下のようなメールを送った。長くなるが、僕の現在の考えを知ってもらうには一番適切だと思うので、ここに少し整理した形で掲載する。

■賢人○○さんへのメール:医療崩壊しなければ経済活動を再開していいか?

(略)

○○さんは、おそらく、新型コロナウイルスの現状をみて、ここまで強烈な社会経済活動の抑制はしなくてもいいのではないか、他の方法があるのではないか(=営業停止を食らって犠牲になる人をここまで増やさなくてもいいのではないか)という視点を持たれているのではないでしょうか?

「現在の社会経済活動の自粛・抑制を今後もやり続けることは不可能で、医療崩壊を防ぐことができればそれでいいのではないか」というこの問いかけは、政治的な選択肢としては重要なものであり、僕の持論も基本的にはそうです。爆発的な感染拡大を阻止し医療崩壊を防いで、重症者をしっかりと助けることのできるシステムを作っておけばいい。感染しても、命が助かればいい。

(略)

感染症の専門家や医療従事者は、とにかく「絶対に命を守れ!」と考えます。具体的な患者さんのことを想像されるので、それは当然です。著名人もみんなそう言います。そのフレーズに反対する者はまずいませんし、絶対的に正しいように聞こえます。ですから社会的自粛を徹底することを唱えます。

しかしその裏に、一部の者の生活が犠牲になることや、仮にその人たちを完全に救おうとすれば国家が財政破綻するリスクがあることを示し、その覚悟までを述べることはありません。というよりも、その点に気づいていないのかもしれません。

(略)

そこで、「医療崩壊を防げば、その範囲で社会経済活動を続ければいいじゃないか!」派が出てきます。これは医療体制を強化することを前提に、そして高齢者や基礎疾患者や妊婦などの弱者を守ることを前提に(まあここが難しいところなのですが)、感染はある程度容認するという考えです。この考えは、「健康な若者たちは感染しても命までは落とすことは少ない」という現段階のウイルス特性を前提にしています。

ただ、このウイルス特性についてはまだまだ未解明なところがあり、「命を絶対に守るために社会的自粛を徹底しろ!」派の感染症専門家や医療従事者は、新型コロナウイルスをそんなに甘くは考えてはいけないという論です。

(略)

僕のもともとの考えは、薬やワクチンが開発されることと並んで人類が免疫を持つしかないという、いわゆる集団免疫論で、医療崩壊を防ぐことを第一目標にしながら、その範囲内で、じわっと感染者が増えて人類が免疫を付けていくしかないというものです。

(略)

欧米は明らかに医療崩壊を招いてしまいましたが、そうなると、本来医療崩壊の怖さとは別の話であるはずの「ウイルスは怖い!」という認識が世間に広がり、「ウイルスを完全に封じ込めるために社会経済活動を自粛せよ!」という論が叫ばれるようになります。当然、医療従事者や著名人たちは「命を守れ!」と主張します。そうなれば政治家も、官僚たちもそちらに乗らざるを得ません。

そこで日本の政治は、「社会経済活動の徹底抑制(自粛)」ということをドーンと打ち出すようになりました。

でも、本当は欧米と日本との違いを科学的に分析すべきです。欧米のあれだけの死者数を見れば、日本国民が恐怖を感じるのは当然です。しかし日本の死者数は著しく少ない。この違いは何が原因なのか。

(略)

■ハイリスク層に配慮しつつ経済を回し、集団免疫の獲得を目指せ

もちろん集団免疫論であっても、死者をどんどん出してもいいというものではなく、弱者は守らなければなりません。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

ですから、社会経済活動をある程度容認するにしても、きっちりと対策を講じてやる、ということになります。しかし、仮に感染者が出たとしても、なんでもかんでも人と人との接触を断つということはせずに、とにかく医療崩壊が生じないレベルに感染者数を抑えればいいという方向性です。

つまり無症状者・軽症者を入院させず、医療機関の力を蓄えて、重症者にきっちりと対応でればいい、ということがここでの目標になります。

さらに発展させて、「高齢者・基礎疾患者などのハイリスク者のみ隔離する=社会経済活動を控えてもらう」という方法も論じられます。その点、○○さんの言うようにどこかの安全地帯に移ってもらうというのは一つの手でしょうが、今の日本には数千万人の高齢者などのハイリスク者に対して安全を提供できる地域・土地がありません。ゆえにそのようなハイリスク者には、自己防衛のために自宅に閉じこもってもらうことを求めるというのが現実的な手法になると思います。

(略)

他方、元気な若者たちは普通に社会経済活動を行い、国民の生活を支えてもらう。それと並んで医療崩壊が生じない範囲で感染を徐々に広げ、みんなで免疫を付けてもらう。人口の6割が免疫を持てば集団免疫獲得と言われています。日本においては2、3年くらいかかると言われています。薬やワクチンが開発されれば、その時点でもう安心ですが、その間、ハイリスク者には自宅に閉じこもってもらうことを求めることになります。

(略)

命を守ることにも社会的コストを考えるのが政治です。命の守り方として、全面的な社会経済活動の抑制をするのか、必要な範囲での抑制にとどめるべきか。前者には財政破綻のリスクがあり、後者には命を犠牲にするリスクがある。

どちらに進むにしても大きなリスクがあり、いずれかを覚悟して決めるのが政治だと思います。

(略)

(ここまでリード文を除き約2800字、メールマガジン全文は約1万9000字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.196(4月21日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【新型コロナ緊急事態】財政破綻か死者容認か……日本の政治家は「究極の選択」を引き受ける覚悟を示せ》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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