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「コロナ離婚」「コロナ絶交」を避けるにはどうすればいいのか

プレジデントオンライン / 2020年4月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

ウイルスに対する危機意識の違いから、「コロナ離婚」「コロナ絶交」といったケースが報告されているという。人間関係の破綻を避けるには、どうすればいいのか。認知行動療法に詳しい石川千鶴氏は、「残念ながら他人の行動を変えることはできない。イライラをおさえるためには、自分の考え方を変えて、他人を受け入れるしかない」という——。

■危機意識の違いに不満をためこむ人が続出

4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は緊急事態宣言を出しました。「不要不急の外出を控える」「人との接触を8割減らす」との要請があり、緊張感のある日々が続いています。

そんな中、「コロナ離婚」「コロナ絶交」など、ウイルスに対する危機意識の違いなどによって人間関係が破綻する事例が、ネット上を中心に散見されるようになりました。

女性向けウェブ掲示板「ガールズちゃんねる」では「【コロナ】危機感ない人、周りにいますか?」というトピックが立てられ、「旦那が危機感ありません。毎日電車通勤ですが強く言わないとマスクさえしません。手洗いうがいも言わないとしません。そんな旦那に疲れました。幼子が2人いるし、歴史的な非常事態なのに危機感なさすぎて悲しいです」「主さんと全く同じです。仕事から帰ってきても手洗いうがいせずそのままご飯食べてる旦那。こっちは神経質に手洗いとかちゃんとやってるのに、バカらしくなります」などのコメントが寄せられています。

■他人を変えることはできない

コロナウイルスは目に見えず、現状有効な対策もないために恐怖感だけが募ります。このストレスは非常に大きいものです。自分は外出も控え、買いだめもせず、手洗い・マスク着用など細心の注意をしているのにどうしてあの人は……、と相手や周りのことが気になり出して、冷静な判断ができなくなる。どんどん深みにはまり、悪いことばかり思い浮かんでどうすればよいのかわからない。負のスパイラルに陥っている人もいるかもしれません。

そんなときはどうすればいいでしょう?

相手にわかってもらうため努力する?

残念ながら、他人を変えることはできません。自分の考え方を変えるしかないのです。

■ストレスのもとになる3つの思考タイプ

私は「認知行動療法」という心理療法を活用しているカウンセラーです。

認知行動療法は、ストレスになる状況を作り出す否定的な考え方やモノの見方(認知)に自らが気付き、それを修正し、バランスのよい考え方を身につけていく療法です。日本の厚生労働省でも効果的であると認められ、うつ病、パニック障害、薬物・アルコールなどの依存症、摂食障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)をはじめとする心の病気にも有効とされています。

そもそも、悩みやストレスのもとになっているのは自分の考え方です。その考え方の傾向(思考タイプ)は大きく分けて3つあります。

「自分否定」「他人否定」「世の中否定」の3つです。それは「考え方のクセ」とも言い換えられます。

・不要不急の外出は控えるように言われているのに外出すると公言している人
・電車の中でマスクもしないで大声でしゃべっている人
・家族以外との接触は極力減らしているのに、子どもを家にあげて遊ばせるママ友

例えば、以上のような人を見かけたときにどう感じるか。

・そういった言動を取る人が周りにいる、視界に入ることで「自分は運が悪い」と思う→「自分否定タイプ
・どうして危機感を持って行動できない人がいるのかとイライラする
→「他人否定タイプ
・こうなったのは政府が中途半端な政策をしているせいだ! と政府や社会に対して憤りを感じる
→「世の中否定タイプ

冒頭のネット掲示板等で書き込みをしている人たちは「他人否定タイプ」にあたります。

■「他人否定タイプ」は怒りの感情が多い

リスク管理の観点からはネガティブなことを考えるのも重要ですが、何かストレスになる状況が起こった時、それを「他人(相手)のせいだ」と考える「他人否定タイプ」はこの新型コロナウイルス感染拡大を受けて、日々憤りを感じイライラする毎日だと思います。危機意識の違いから来る相手の言動に日々イライラしてるとストレスがたまる一方です。

このタイプの人は、何か想定外のことが起きたとき、自分以外の「他人」に原因があると考えます。心の底では、「人は自分のことしか考えていない」「他人は自分勝手である」「自分のことを利用しようとする」と心によろいをまとっています。得意な感情は「怒り」「イライラ」「腹立ち」などです。よく口にする言葉は「まったく……!」「なってない」「しっかりしろ!」など怒りの言葉や、相手を責める言葉。SNSで炎上を起こしやすい人にもこのタイプが多いといえるでしょう。

他人否定タイプの人は「他人」を受け入れることが大切です。残念ながら「他人」は変えることができないからです。

■思考のタイプを認識し、考え方のクセを変える

できれば考え方を変えてストレスを軽減したいものです。

実は思考のタイプ、考え方のクセを変えることがこの悩みを解決することに大きくかかわっています。

私たちはよく他人を評して「あの人は怒りっぽいよね」「あの子はいつも笑っているね」などという言い方をします。では、感情はどれくらい種類があるのでしょうか。実は心理学では、人間には2185種類もの感情があるとされています。あなたはその感情のすべてを表して生きているでしょうか。振り返って考えてみても、そこまで喜怒哀楽を意識的に使い分けている人はいないのではないでしょうか。

みんなその中から、自分の得意な感情をいくつか選び取って表現しているのです。「怒りっぽい」人は2000種類以上ある感情の中から事あるごとに「怒り」という感情を自らチョイスしているというわけです。

人が多くの感情の中から特定のものを選ぶことについて、もうひとつの要因は、人の「記憶」に関係しています。

人は見たり聞いたりした新しい記憶は古い記憶に覆いかぶせていきます。そのため、古い記憶は活用しないと忘却曲線に乗って忘れ、なかなか思い出せないのです。

また、人は生きていく中で忘れたい記憶もあるため、忘れることは悪いことではありません。脳には記憶を消していくメカニズムも盛り込まれています。

人の脳は高度だからこそ、残しておきたい記憶は「復習」を行い、思い返すことでその内容を新しい情報として脳内にとどめておくことが必要なのです。これを繰り返すうちに、やがて頭の中に定着していきます。

感情の定着にもこれと同じことが言えます。

「どうしてあの人はマスクしないで歩くのだろう」「喫煙がリスクだというのにまだたばこを吸っている人がいる」というようなことを繰り返し口にして、「怒り」「イライラ」という感情を湧きあがらせているうちに、それが記憶として頭の中に定着して、事あるごとに浮かび上がってくるようになると「怒り」「イライラ」という感情が「得意な感情」になっていくのです。

■考えを変えると感情が変わる

「幸せ」や「喜び」というポジティブな感情は忘却曲線に乗って忘れ去っている一方で、「怒り」「イライラ」といったネガティブな感情は何度も何度も繰り返し思い出していると、ネガティブな感情が得意なものとして頭の中に浮かびやすくなっているのです。

この感情を変えるためには「考え方」を変えないといけません。

脳の働きを見てみると、まず「考え」が脳内に出来上がり、その後「感情」が生まれます。つまり、感情そのものを変えることはできませんが、考えを変えることで感情は変えることができる、というわけです。

コロナウイルス感染症になった人がいるとの情報を聞いたときに、他人否定タイプの方は、「うつされるかもしれない。迷惑な人だ」「自己管理ができていないだらしない人だ」と考えて、「怒り」「イライラ」の感情が湧き起こります。

このネガティブな感情を解消するには「自分は他人を否定的にとらえる傾向がある」ことを認識し、「コロナウイルスは人にうつる感染症だからこそ、誰でも感染するウイルスだ。私自身、さらに感染対策に意識を向けるようにしよう」とバランス良い考えをつくるようにしてください。そのうえで、「冷静」「平常」といった感情を持てるようにしてください。

自分の考えは自分で変えられます。しかし、他人の考えや行動は変えられません。自分と違う他人の考えや行動は、違いがあるからこそ、気になるのです。人の考えや行動で気になることがあれば、「気が付かなったことを気づかせてくれた」ことへ感謝の気持ちを持ってください。

■イライラする相手にこそ感謝を

自分の考え方を変えるもう一つの方法は、身近な人への感謝の気持ちを持つということです。

石川千鶴『人間関係の悩みをスッキリ解く 5つの公式』(光文社)
石川千鶴『人間関係の悩みをスッキリ解く 5つの公式』(光文社)

他人にイラっとしているのに、その相手に感謝の気持ちを持つというと、難しいと思われるかもしれません。しかし、今のように社会活動が制限され、思うようにならない中では視野が狭くなっているものです。

「人の振り見て我が振り直せ」「人こそ人の鏡」ということわざがあります。他人を見て、自分を変えようという考えですが、そもそも「人は違って当たりまえ」ということです。

人の考えや行動で気に入らないことがあり、「自分勝手な人」「わがままな人」と考えて「イライラ」の気持ちを持ったときに、「気が付かなったことに気付かせてくれた」という考えと「感謝」の気持ちを持ってください。「感謝」の感情は、オキシトシン(通称・愛情ホルモン)といわれる脳内ホルモンの分泌を促すことがわかっています。オキシトシンは不安や恐怖の感情を低減させます。また、免疫力を高める機能もありますので新型コロナウイルス感染症対策としても大いに役立ちます。

イラつく相手に感謝の気持ちを持つことは、実は自分を救う手がかりになるのです。

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石川 千鶴(いしかわ・ちづる)
ハートフルライフカウンセラー学院 学院長
日本推進カウンセラー協会理事。大手通信会社人事部で、人材育成や業務研修を通してカウンセリングやコーチングの手法を習得。仕事の重圧から心が疲弊し、自身でメンタルケアについて積極的に学習するなかで、認知行動療法に出合う。認知行動療法を取り入れたカウンセラー&メンタルトレーナー養成スクールと心理カウンセリング・メンタルトレーニングルームを開設。著書に『人間関係の悩みをスッキリ解く 5つの公式』(光文社)がある。

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(ハートフルライフカウンセラー学院 学院長 石川 千鶴)

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