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筋肉体操の谷本先生が力説「運動不足の解消なら、坂道や階段を下りましょう」

プレジデントオンライン / 2020年4月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/teruo takahashi

外出自粛や在宅勤務で室内にいる時間が増えると、気になるのは運動不足だ。効果的に運動する方法はないのか。NHK「筋肉体操」出演の谷本道哉・近畿大学准教授は「外に出たら坂道や階段を使うと良い。特に、下りる動作は筋トレ効果が高い」という――。

※本稿は、谷本道哉『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

■スイスイ上るのには「コツ」がある

運動不足の昨今、坂道や階段を積極的に使うことはとてもおすすめです。

詳しくは後述しますが、階段の上り下りは筋肉に刺激を与えるトレーニングとしての効果が高いうえ、うまく使えば糖尿病予防効果まで期待できてしまうという優れた運動なのです。

ステイホームは外出禁止という意味ではありません。人の集まる密閉空間に行くべきではありませんが、運動のための外出は不要不急の外出には当たりません。人との距離を十分にとって、是非外に出てほしい。外を歩くなら、坂道や階段をできるだけ使ってください。

とはいえ、「坂道や階段を積極的に」といわれても、あまり体を動かしていなかったり、エレベーターに慣れすぎた人にとっては簡単ではないかもしれません。

そこで、坂道や階段をスイスイ上るのに役立つ、ちょっとした体の動かし方のコツを紹介しましょう。筋肉、腱のバネを利用した「反動動作」を使った階段の上り方です。

私たちの筋肉・腱には、弾性力、つまりバネ作用があります。これを上手に使うと、体を要領よくダイナミックに動かせるようになります。このバネ作用を生み出すのが「反動」を使った動きです。

■「よいしょ!」が出る人は身体を動かすのが上手

分かりやすい例として、まず椅子からの立ち上がり動作で説明しましょう。

椅子から立ち上がるときは、必ず一度お辞儀をするように上体を前にかがめてから立ち上がります。体を起こす前に、自然と私たちはそれと反対の前にかがむ動きをとるのです。これこそが「反動」です。

前にかがめる下向きの力を筋肉、腱のバネ作用で上向きに返すため、スッと体を起こして立ち上がることができます(図表1)。 

画像=『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方』
画像=『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方』

バネを使った反動動作のポイントは、お辞儀をしてから体を起こす動作へと「動きを切りかえす瞬間」にポンと力を出すことです。「よいしょ!」という声が出ることがありますが、切りかえしで強い力を発揮するときに、つい声が出るのです。

ですから、「よいしょ!」は、反動を使った動きでうまく力を発揮するためのかけ声といえます。年寄りくさいと思わないでください。むしろその声こそ、活動的に体を動かせている証拠。「よいしょ!」をどんどん使っていただきたいと思います。

試しに、この反動動作を少し大げさにして立ち上がってみてください。反動をバネにしてすっと立ち上がるという感覚がよくお分かりになるはずです。

■上体を前後させて、反動で上る

そして坂道や階段を上る動作。こちらでも同様に反動で、腱のバネを利用できます。もちろん「よいしょ!」のかけ声はとても有効です。

まず、前足を着地するとき少し前かがみに上体を倒しましょう。そこから「よいしょ!」と切りかえして、上体を起こしながら上ります。

椅子から立ち上がる動作で行うような、上体を前後に振る動きを交ぜた歩き方とでもいえば分かりやすいでしょうか(図表2)。

『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方』
画像=『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方』

反動動作は本来自然に行うものなので意識しませんが、階段の2段跳ばしや3段跳ばしにチャレンジしてみれば、上体を前後させて、反動を使っていることが実感できるはずです。

この反動の動きを普段から意識して、強めにできるようになれば、ずいぶんラクにスイスイと坂道や階段を上れるようになります。階段を上るのも楽しくなる(?)でしょう。

慣れてきたら、階段の1段跳ばしや、大股での坂道上りを普段使いにしてみてはいかがでしょうか。ただし、階段を踏み外せば思わぬ事故につながります。十分に気をつけて行ってください。特に雨で滑りやすいときの階段などでは絶対にやらないこと。

なお、人前で「よいしょ!」はちょっと気恥ずかしいかもしれませんね。そのときはやむを得ません、心の中でつぶやきながら階段を上るようにしてみてください。

■実は筋トレ効果が高い「下りる動作」

坂道や階段を上るのは大変ですが、下るのなら息も上がらないし、割合楽にできますよね。実際、エネルギー消費もあまり多くありませんので、有酸素運動としての効果は弱くなります。

しかし、下りる動作は、意外なことに、筋力トレーニングとしての効果がとても高いのです。

下りる動作では、着地の衝撃を筋肉で受け止めます。そのダメージで、筋肉に微細な損傷が起こりやすいという特徴があります。これが「筋肉痛」の原因となります。

実験で階段を上り続ける運動と下り続ける運動を比べてみると、翌日に強い筋肉痛を起こすのは階段を下り続けたほうなのです。この筋肉痛を引き起こす階段下りの刺激が、筋肉を発達させる有効な刺激の一つになるのです。

■糖尿病予防に効果的な筋肉を使うことができる

坂道や階段を「下りる」運動を続けると、耐糖能という、血糖値の上昇を抑える働きが高まるという報告があります。これは着地動作において、速筋といわれる筋肉がよく使われることと関係していると考えられます。

筋肉の細胞には速筋と遅筋の二つがあり、平均として、5対5くらいの割合で構成されています。そして着地の衝撃を受け止める運動では速筋が優先的に使われます。着地のような動きは「とっさに体を守るとき」に必要な動作でもあるからでしょう。つまり、素早く力を発揮できる速筋の出番となるのです。

谷本道哉『学術的に「正しい」若い体のつくり方』(中公新書ラクレ)
谷本道哉『学術的に「正しい」若い体のつくり方』(中公新書ラクレ)

そして速筋は糖質利用能力が高いため、速筋を鍛えることは糖尿病予防、改善に効果的となるのです。

駅などを歩いていると、階段はすいているのに、横にある下りのエスカレーターに行列ができている様子を見かけることがあります。

これはせっかくの運動の機会を逸しているわけでほんとうにもったいない。特に下りのエスカレーターの順番を並んで待つくらいなら、喜んで階段を使いましょう。

なお、坂道や階段を下りる動作は関節などへの衝撃が強く、膝や足首を痛めやすいという問題もあります。気になる場合はスピードをやや遅くして、一歩一歩確実に下りるようにしましょう。

筋肉への刺激という点でもゆっくりと丁寧に下りたほうが、しっかりと筋肉に負荷がかけられるので効果があがります。

※ウィルスの拡散による感染防止には、 2メートル以上の距離を取ることとされます。余裕をみてその倍くらいの距離を取ると良いでしょう。また周りへの配慮として、飛沫を飛ばさないためにマスクなどの鼻口を覆うものを着用することをお勧めします。

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谷本 道哉(たにもと・みちや)
近畿大学生物理工学部人間環境デザイン工学科准教授
1972年、静岡県生まれ。大阪大学工学部卒。パシフィックコンサルタンツにて道路トンネル設備設計業務に従事後、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。国立健康・栄養研究所特別研究員、順天堂大学博士研究員などを経て現職。専門は筋生理学、身体運動科学。番組中では「筋肉指導」として、筋トレメニューの作成と指導を担当。

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(近畿大学生物理工学部人間環境デザイン工学科准教授 谷本 道哉)

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