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クルーズ船対応の医師に聞く、自分や家族がコロナ感染した際の「在宅療養」ガイド

プレジデントオンライン / 2020年4月23日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Hakase_)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の封じ込めができなかったいま、自分や家族が感染したことを前提にした行動が求められています。私たちに何ができるのでしょうか。今回のパンデミックではダイヤモンド・プリンセス号での対応に奔走された沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科の高山義浩先生に伺いました。

■感染するとどのような症状が出るか

──緊急事態宣言後、中等症~重症のCOVID-19の患者さんのベッドを確保するため、軽症者はホテルなどで療養することになりました。軽症例とはどのような症状を指すのでしょうか?

【高山先生(以下、敬称略)】COVID-19の軽症例は、微熱を含む発熱や咳、喉の痛み、強い倦怠感、重しが乗ったようなだるさなど、風邪のような症状が長引くイメージです。阪神タイガースの藤波晋太郎投手の件で広まった味覚障害や嗅覚障害は、普通の風邪や季節性のインフルエンザでも認める症状なので、これだけでCOVID-19を疑うことはありません。味覚・嗅覚障害は参考所見として先にあげた症状が4日以上続くようでれば、COVID-19を疑います。

これまでの報告によると、COVID-19発症者のうち2割は、発症から8日前後で息苦しさが出現してウイルス性肺炎に至り、酸素投与が必要になるなど状態が悪化していきます。

ただし、自覚症状のない肺炎の存在も指摘されていて、肺炎自体はより早期に生じている可能性があります。

さらに、進行すると急性呼吸性窮迫症候群や敗血症性ショックなどを合併して多臓器不全に至ることがあります。この場合、人工呼吸器やECMOなど高度医療へと移送しなければ、数時間で死亡します。一方、すべての感染者が発症するわけでなく、無症状のまま推移する例も存在します。

■在宅療養の場合は、感染者と家族の衣食住をわける

──家族がPCR検査の結果を待つ間や、診断後に自宅での安静・療養を要請されたときはどうしたらよいのでしょうか?

【高山】COVID-19の疑いがある人から家族への二次感染を防ぐことが大切です。まず、症状のある人を家庭内の個室に隔離してください。症状がある間はもちろん、発熱などの症状が消失してから最低でもプラス3日間、また短期間に症状が軽快したとしても発症0日目から7日間が経過するまではできる限り部屋から出ないように注意をしてください。

この間、世話をする人は一人に限定するなど、必要以上に家族と接する機会をつくらないよう気をつけましょう。また高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある方、妊娠中の女性に世話をお願いするのは避けてください。

■患者さん自身が消毒をすること

トイレなど、どうしても家の中を移動しなくてはいけないときは、患者さん自身にマスクを着用してもらいましょう。布マスクでも大丈夫です。患者さん自身は、できるだけ余計な場所を触らず、ドアノブを握る前に手指をアルコール消毒してください。手指消毒をした後に自分の顔や衣服を触ると、ウイルスが手に付着して周囲を汚染してしまいます。消毒した後は顔や身体に触らないよう注意をしましょう。

トイレを使用したあとは、ドアノブ、便座、流しハンドル、トイレットペーパーホルダーなど自分が触った可能性がある場所を消毒用のアルコールや台所用の洗剤を100~200倍に薄めた水をしみこませたペーパータオルで拭ってください。歩いた場所の床を拭く必要はありません。ご家族が消毒を行う場合は、その後で必ず手指消毒や手洗いをしてください。

■洗濯は分けなくても大丈夫

──食事や洗濯はどうしたらいいでしょうか。

【高山】食事は隔離した部屋のドアの前に置き、本人が取りに行くようにします。食べ終わった食器はドアの前に出してもらいましょう。辛いかもしれませんが、対面で受け渡しを行うことは避けてください。どうしても対面で対応しなくてはいけない場合は、介護者もマスクをつけましょう。

また、患者さんが使った食器や箸、スプーンにはウイルスが付着している可能性があるので共有を避けるほか、子どもが触ったり口に入れたりしないように注意をしてください。ただし、普通の食器用洗剤でしっかり洗えば、他の家族も使うことができます。

汚れているタオルや衣類、シーツなどを取り扱う際は、使い捨ての手袋とマスクをつけましょう。患者さんが使用したものと家族の汚れ物を分けて洗う必要はないので、普段通りに洗濯をして十分に乾かしてください。洗濯をした後は家族も使えます。

このほか、患者さんが使ったティッシュやマスクなどは、他の人が触れないように、すぐにビニール袋に入れて密閉しておきましょう。可燃ゴミとして捨てる際は袋の口をしっかりしばり、捨てた後は必ず手洗いをしてください。同居しているご家族が手指消毒と石けんを使った手洗いをすることが、二次感染を防ぐ鍵です。

また家族の中に重症化リスクが高い高齢者がいる場合は、一時的に親戚の家に避難させるなど、感染から守ることを検討してください。

■乳幼児がいる母親が感染した場合は……

──世話を必要とする乳幼児がいる母親が感染した場合はどうしたらいいのでしょうか。子どもが感染しても軽症ですみますか?

【高山】他に世話をすることができる人、多くの場合は父親に頑張ってもらいましょう。とくに乳児はCOVID-19に限らず感染症に脆弱です。小児の多くが軽症であると考えられていますが、肺炎を発症するなど重症化する事例も報告されているので注意深い見守りが求められます。ただし、死亡することは稀です。中国で確定診断された18歳以下の小児2,141例の報告では、死亡したのは14歳男児の1例のみでした。

本来、家族のなかに一人でも感染者がでた場合は、同居する全員に2週間の自主隔離が求められます。しかし、仕事や生活必需品を買いに行くなどやむなく外出することもあるでしょう。その時は第三者との距離を2メートル以上とる「Social Distance」を心がけてください。

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高山 義浩(たかやま・よしひろ)
沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科 副部長
福岡県生まれ。東京大学医学部保健学科卒業後、フリーライターとして世界の貧困と紛争をテーマに取材を重ねる。2002年山口大学医学部医学科卒業、医師免許取得。国立病院九州医療センター、九州大学病院での初期臨床研修を経て、2004年より佐久総合病院総合診療科にて地域医療に従事。この頃より人身売買被害者を含む無資格滞在外国人に対する医療支援を行なう。2008年より厚生労働省健康局結核感染症課においてパンデミックに対応する医療提供体制の構築に取り組む。2010年より沖縄県立中部病院において感染症診療と院内感染対策に従事。また同院に地域ケア科を立ち上げ、退院患者のフォローアップ訪問や在宅緩和ケアを開始。『アジアスケッチ 目撃される文明・宗教・民族』(白馬社、2001年)、『ホワイトボックス 病院医療の現場から』(産経新聞出版、2008年)、『地域医療と暮らしのゆくえ 超高齢社会をともに生きる』(医学書院、2016年)など著書多数。

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(沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科 副部長 高山 義浩 構成=井手ゆきえ 写真=iStock.com)

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