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反日感情を煽り続ける文在寅政権が「歴史的勝利」を収めたワケ

プレジデントオンライン / 2020年4月21日 18時15分

2020年4月10日、手袋にマスク姿で、妻と共に期日前投票を行う文在寅大統領。 - 写真=時事通信フォト

■この圧勝で、さらに反日感情を煽る危険性がある

韓国の総選挙が4月15日に投開票され、文在寅(ムン・ジェイン)政権が歴史的な勝利を収めた。この圧勝で文大統領が調子に乗ってさらに反日感情を煽(あお)り、韓国社会を思うように動かそうとする危険性がある。

それゆえ、ここで文政権と文氏に強く忠告しておく。日韓関係の悪化で喜ぶのは、核・ミサイル開発を止めずに国際社会に反発する北朝鮮だけである。北朝鮮は総選挙中も弾道弾ミサイルを飛ばし続け、日本・アメリカ・韓国に圧力をかけながら日米韓の分裂を狙っている。

文氏がいくら融和を呼び掛けても、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は無視しているではないか。文氏はその現実を受け入れるべきだ。目を覚まして対北朝鮮政策を方向転換し、融和政策を捨て去るべきである。

■低迷する景気をどう回復させるつもりなのか

韓国の大統領の任期は5年で切れ、その後は大統領選に出馬できない。この決まりのため、歴代の大統領は任期後半にその求心力を低下させるのが常だった。文氏は大統領就任から来月5月で3年となる。任期は残り2年だ。文氏の場合もこの残り2年の任期の終盤は、求心力が衰えるだろうとみられていた。だが、今回の総選挙の大勝利によって予想外の安定した政権基盤を手にしたことになる。

韓国の国会は一院制で、定数は300議席だ。総選挙では文政権を支える左派系与党の「共に民主党」(改選前議席128)が単独での過半数を確保し、比例選の姉妹政党と合わせて180議席を獲得した。

この180議席は、在籍議員の5分の3を占める。これで野党の反対する議案も、与党単独で国会に提案して採決に持ち込んで成立させることが十分に可能となった。しかも国会の議長ポストや常任委員会委員長ポストも思いのままに獲得でき、まさに向かうところ敵なしの状態である。しかし政権運営は甘くはなく、低迷する景気をどう回復させて求心力を維持するかなど、課題は多い。

■新型コロナウイルス対策の成功が大勝利を導いた

文政権を大勝利に導いたのが、新型コロナウイルスに対する防疫の成功だといわれる。

韓国では南東部の大邱(テグ)で、新興のキリスト教系宗教の教会で催された行事で集団感染が発生し、その後、1日だけで多いときには900人以上もの感染者が出た。韓国には2015年のMERS(マーズ、中東呼吸器症候群)コロナウイルスの感染拡大に対する防疫で苦労した苦い経験がある。

文政権はこの経験を生かし、1日2万件というPCR検査の能力を整え、国民の感染の有無を徹底的に調べ上げた。そのために独自のドライブスルー方式の検査も開発した。同方式は大きく評価され、世界に広まった。病院以外の軽症者を収容する施設も次々と完備した。情報公開もスピーディーに進められ、国民の不安を解消した。

防疫が大きな焦点となった選挙戦は結局、文政権の危機管理能力が高く評価され、支持率は66.2%に跳ね上がった。

■韓国と文氏の「駄々っ子体質」はいまも変わっていない

現在、クルーズ船を除いた日本の累計感染者数は、4月18日に1万人を超えた。その後も感染者と感染死者が増えている。日本も韓国の防疫から学べるところはうまく取り入れ、感染の拡大を抑え込むべきである。

ただし、文政権に対する警戒は怠ってはならない。

総選挙に勝った文政権には余裕ができ、韓国民の反日感情を煽るような反日キャンペーンを繰り返す必要はなくなったとの楽観的な見方が日本国内にはある。だが、旧朝鮮半島出身労働者の元徴用工らによる訴訟問題で文政権は日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の判断を根拠に譲歩はしていない。6月に差し押さえられた日本企業の資産が現金化されれば、日韓関係はさらに悪化することは間違いない。

「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA、ジーソミア)」問題を思い出してほしい。韓国は昨年11月22日に急きょ、常任委員会を開いてジーソミアの失効を回避することを決定し、日本政府に連絡してきた。失効回避の決定は失効期限(23日午前0時)の6時間前というぎりぎりだった。

あのとき、沙鴎一歩は「失効直前に破棄を取り消す韓国の駄々っ子ぶり」(2019年11月26日付)という記事で、「韓国は土壇場になって折れた。韓国も文氏もわがままな駄々っ子そのものではないか」と批判したが、韓国と文氏の駄々っ子体質は総選挙後のいまも変わっていない。

■日本は韓国に対し、確固たる厳しい見方を失ってはならない

4月17日付の産経新聞の社説(主張)は「韓国総選挙 対日硬化に警戒が必要だ」との見出しを立て、まずこう指摘する。

「新型コロナウイルス危機のさなかで進められた選挙戦は、文政権の感染防止策が最大の争点になり、外交・安全保障を含む政策論争は広がりを欠いた」

産経社説が指摘するように新型コロナウイルスの防疫をめぐる評価に比べ、「外交・安全保障を含む政策論争」はほとんどなかったといえよう。この指摘を踏まえながら産経社説は主張する。

「文氏の下で日韓関係は悪化した。文政権への強い支持が示されたことで、対日姿勢はより強硬となることを覚悟し、備えなくてはならない」
「文氏は日本に『未来志向の協力関係に向け努力しよう』と呼びかけはするが、関係修復に向けた具体的な行動は起こさない」

なるほど、産経社説が主張するように韓国に対し、日本は確固たる厳しい見方を失ってはならない。

■日本がブレることは韓国に隙を見せることになる

産経社説は後半で「左派系与党が大きく膨らんだことは無視できない。対日政策で、強い与党に文氏が突き動かされることにも警戒が必要だ」と指摘し、徴用工問題と北朝鮮への対応について主張する。

「日本政府は『徴用工』問題などであくまで従来の姿勢を貫くべきだ。国益や国際法に反する妥協や歩み寄りは一切無用である」

産経社説に賛成である。日本がここでブレるようなことがあれば、韓国に隙を見せるだけある。外交の基本は国益だ。国益が損なわれるようではどうしようもない。徴用工問題は1965年の請求権協定で解決されている。文政権がどこまでも譲らないようであれば、日本政府は国際社会に強く訴えるべきである。

産経社説は書く。

「北朝鮮の非核化をめぐる米朝交渉が行き詰まる中、文氏は南北を『生命共同体』と述べ、融和路線に執着している」
「懸念されるのは、総選挙での与党の勝利をはずみに文氏が改めて強く融和に踏み出そうとすることだ。残る任期の2年のうちに強引に足跡を残そうとするだろう」
「文氏の融和路線は、対北圧力を重視する日本や米国との間で摩擦を生じさせた。選挙戦中、北朝鮮が再三、ミサイルを発射したことにも留意すべきだ。融和路線は改めるべきである」

沙鴎一歩も前述したが、産経社説が主張するように「融和路線は改めるべき」なのである。

■「国民の自尊心を満たす効果もあったのではないか」と読売社説

次に4月18日付の読売新聞の社説を取り上げよう。読売社説は中盤で次のように総選挙の結果を分析する。

「与党圧勝は、韓国政府の対応を有権者が評価したことの表れだ。文氏は『防疫の成果により、韓国の国際的地位が高まった』と強調していた。国民の自尊心を満たす効果もあったのではないか」

感染拡大の防止に成功し、国際的地位も高まり、その結果として韓国国民の自尊心が高まったことは間違いないだろう。

「感染が完全に終息していない状態で、選挙を円滑に行ったことも目を引く。投票所では、マスクの着用や検温、消毒などの感染予防策が徹底された。投票率は約66%と高水準だった」

日本の選挙でも見習うべきとことはあるだろう。感染症の対策においては「徹底」が重要だが、バランス感覚を失ってはならない。文政権に限らず、韓国の歴代政権はこのバランス感覚に欠けることが多い。

■韓国が抱える構造的な問題が与党の勝利で解決するわけではない

さらに読売社説は指摘する。

「文氏が留意すべきは、韓国が抱える構造的な問題が与党の勝利で解決するわけではないことだ」
「若年層の就職難や、中国頼みの経済の脆弱(ぜいじゃく)さは解消されていない。前法相を巡るスキャンダルや検察改革の是非を巡り、与党支持層と反対勢力の対立が続く」
「外交・安全保障政策も見直しが迫られている」

なるほど。韓国の抱えている問題は、構造的なのである。就職難、経済力の弱さ、政権の腐敗、国民と国民との分断、外交問題、安保政策……と新型コロナウイルス禍によってこうした問題は目立ち、そして深刻さを増している。文氏は総選挙で歴史的な勝利を収めたからと調子に乗るべきではない。足元の脆弱さを自覚すべきである。

日本にとっても対岸の火事などではない。新型コロナウイルスの感染拡大を収束させた後、疲弊した日本の社会をどう立ち直らせ、活性化させていくことが大きく問われる。それこそ政治家が粉骨砕身しなければ、日本の将来はない。安倍晋三首相にその覚悟ができているのか、疑問である。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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