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コロナ禍で子供の勉強意欲の芽を潰す「共働き世帯」の条件

プレジデントオンライン / 2020年4月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

新型コロナウイルス感染拡大を受け、子供の学びの場が「学校・塾」から「自宅」へと変わった。学習環境が変化しても自ら机に向かう子はなぜ向かうのか。塾講師の矢野耕平氏は「共働き世帯ではこれまで勉強に関して学校や塾にお任せでした。テレワークの今、勉強の面倒を見て子供にダメ出しする保護者が増えていますが、逆効果であることが多い」という——。

■コロナ禍で「学びの場」が移り変わった

新型コロナウイルス感染拡大が懸念される中、全国の教育機関は一斉に休校し、一部地域を除いてその再開のめどはたっていない状態だ。学校サイドは課題を生徒の自宅に送り自習を指示したり、ICTを使った学習環境を用意したりしている。

これは私塾も同様だ。わたしは都内で中学受験専門塾を経営しているが、わたしの塾だけでなく、周囲の塾も教室内での集団授業を中止している。そのかわり、授業動画の配信や、「Zoom」などを活用した動画中継に切り替えている。

いまや子どもたちの学びのメインとなる舞台は「外(学校や塾)」から「内(自宅)」へと移ったのだ。

■果たして子どもは「学べる」精神状態にあるのか

学校も塾もない……。このままでは子どもの中学受験の勉強がうまく進まない。どのような計画を立てれば学力を伸ばせるのか。そんな悩みを抱える保護者は多いだろう。

保護者が在宅勤務に移行することで、子どもの学習状況をじかにチェックする機会が増える。その際、「何でこんな簡単な問題を間違えるのか」とか「もっと集中して勉強しなさい」とかつい口出しをしてしまい、子どもとのバトルに発展するケースもある。

保護者の気持ちは理解できる。だが、感情的になって反応するのは逆効果である。もし、子どもの態度を見てイライラしたら、一度立ち止まって子どもと自分自身の精神状態を冷静に俯瞰してみることをおすすめしたい。

日々、感染者と死亡者が増えている状況の中、言い知れぬ不安を覚えたり、いら立ちを抱いたりする保護者は多いだろう。これからの仕事はどう変わるのか。会社の業績はどうなるのか……。そのような心境になるのも致し方ない。

だが、それは子どもたちも同じなのだ。

学校がなければ外へ気軽に行くこともできない。友だちと会話する機会すらあまりなく、じっと家に閉じこもっている。気分を紛らわそうとしてテレビをつけたら「コロナ」の話題ばかり。陰鬱(いんうつ)な気持ちになり、ストレスを増大させる一方である。

そんな時、子どもに家庭学習に取り組ませようと尻をたたいても、意味がない。まず、子どもが「学べる」精神状態にあるのかどうかを保護者は観察するべきだろう。子どもたちは大人が思う以上に、保護者をはじめとした周囲の大人たちの顔色をうかがっているし、世間に蔓延する雰囲気に敏感なのだ。

■テレビを消して、子どもに笑顔で接しよう

何かを「学ぶ」ことには精神的な余裕や体力が必要だ。子どもの様子をチェックして、心身ともに疲弊していると感じたら、家庭学習を強いるのは待ったほうがよい。

では、子どもにどう対処すればいいのか。例えば、

・テレビを消して陰鬱な話題を子ができるだけ耳にしないようにする。
・勉強とは関係のないバカ話で盛り上がる。
・親子でYouTubeを鑑賞する。
・近所の公園へ親子で出かける。
・一緒に料理をする。

そうやって親子で時間を共有し、できるだけポジティブな気持ちを維持できるように努めることこそ、いま求められる親のサポート方法ではないだろうか。いわば適度な「ガス抜き」が子どもたちの心に少しずつ「鋭気」を与えるのだとわたしは考えている。

こういう試みにすぐ取りかかれる保護者は子が学力を伸ばすよう導ける可能性が高い。だが、大多数の保護者は伸ばすことができない。ヘタすると伸びる芽を摘んでしまう保護者さえいる。

■家庭学習のコツは欲張りすぎないこと

子どもの学力を伸ばすことのできない保護者はどんなタイプなのか。先ほども少し触れたが、学校や塾の先生の役割を担ってしまおうとするのはその典型である。

付きっきりで宿題を手伝おうとする母親にうんざりする子ども
写真=iStock.com/fotogeng
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fotogeng

「子どもは学校も塾の授業もなく、朝から晩まで自宅にいる。それなら、中学受験の勉強もたくさんできそうだな」。子どもに「勉強のボーナスタイム」が贈られたかのような勘違いをしてしまう。

あるいは、今まで学校や塾に勉強面を任せ「やさしい親」で通していた人が、四六時中親子が顔を突き合わせることが増えたため、教育パパ・ママに豹変(ひょうへん)してしまうケースが出てきている。わが子の様子が細かく目に入ってきてしまい、急に教育熱が高まってしまうのだ。わたしの耳にする範囲でいえば、「共働き世帯」にこの傾向が強いように感じる。

彼らがやってしまうのは、例えば……。

・朝から晩まで膨大な学習量を消化しなければいけないカリキュラムを立てる。
・子の学習の様子が気になって数分単位でその状況をチェックしようとする。
・子の間違いを見つけては、そのたびに叱責する。

こうなってしまうと、親子の対立・葛藤は必至であり、子どもの学力は伸びにくい。いや、伸びにくいどころか、学ぶことそれ自体に嫌悪感を抱くようになってしまう。

■早寝早起きのルーティンを貫徹させることが大事

先述した通り、学ぶには心の余裕が必要だ。膨大な学習量を子どもに強いることで、そのストレスをさらにため込んでしまう。繰り返しにはなるが、学ぶことそれ自体を放棄してしまうリスクがある。受験勉強に割ける時間が膨大にあると考え、親が欲張りすぎてしまうのは避けなければいけない。

大切なのは、コロナ感染が拡大する前と同じ学習量でよしとすることだ。家庭で受験勉強をおこなう1日の平均時間が2時間だったら、それを踏襲すればいい。この非常事態で大切な親の姿勢は「いかに特別なことをしないか」を意識して、それを貫くことである。

もし塾が動画授業や遠隔の双方向型授業を提供しているなら、その前後の時間に自学自習の時間を設けて、予習や復習の時間に充てれば十分である。

ただし、子どもの勉強時間を増やす必要はないが、一方で、必要不可欠なこともある。それはこのタイミングこそわが子に「早寝早起き」の習慣を身に付けさせることだ。

一日中自宅にいると親子ともに生活ペースが乱れてしまいがちだ。それは、心身の不調を招く。たとえば、22時に就寝し、6時に起床するというプランを立てたら、それを毎日必ず実行する。

寝起きの少女
写真=iStock.com/kwanchaichaiudom
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kwanchaichaiudom

この一見、地味なルーティンを守ることで大人も子どもも生活に規則正しいリズムが生まれ、ひいてはそれが子どもの、親の精神的余裕を獲得することにつながるのだ。「月曜日」にはこれをやる、「火曜日」にはあれをやる……と学習計画もルーティン化できると学習効率が一層高まることは間違いない。これを機に親子で膝を突き合わせて、1週間の「無理のない」学習計画を立ててみてはいかがだろう。

■子どもの前向きな学習姿勢を育もう

中学受験は、東京・神奈川の場合、例年2月1日から始まる。入試本番までの時間はまだ十分残されている。しかしながら、このコロナによる自粛期間中にどれだけ自宅学習できたかどうかが、コロナ終息後の学力伸長や、本番での合否に直結するはずだ。自宅で「前向き」に「積極的」に学べた子は、きっと志望する学校に合格できるだろう。つまり、わが子をそうした気持ちに導くことができる家庭に吉報はやってくるのである。

焦らず、慌てず、親は子の学びに寄り添ってほしいと願う。

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矢野 耕平(やの・こうへい)
中学受験専門塾スタジオキャンパス代表
1973年生まれ。大手進学塾で十数年勤めた後にスタジオキャンパスを設立。東京・自由が丘と三田に校舎を展開。学童保育施設ABI-STAの特別顧問も務める。主な著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校vs.新名門校』』(SB新書)など。

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(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平)

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